これまでの暮らしとこれからのくらしを巡る旅-Vol.6人と人のつながりをつくるまち~Up DATE Cityふくしま

文・瀬イオナ 構成・若林葉子 写真・長谷川徹

TOYOTA HARRIER Z“Leather Package”

車両本体価格:5,410,900円(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,740×1,855×1,660
パワーユニット:2,487cc+モーター
駆動方式:E-four(電気式四輪駆動)
燃料消費率:21.7km/L(WLTCモード)

福島県の県庁所在地である福島市の北東約10kmに位置する伊達市。

かつて養蚕の町として栄え、現在は高品質のニット生産で知られている。母なる川と言われる阿武隈川が市を南北に縦断し、平野部は特産品の桃や柿の果樹園が広がる。都市機能と豊かな自然の調和する伊達市は近年、首都圏からの移住者も増えているという。私たちは伊達市の高子北地区に誕生した「まち」、『Up DATE Cityふくしま』を取材すべく、一路、北へとクルマを走らせた。

移住のその先へ

 「移住」という言葉を聞くと、何を思い浮かべるだろうか。都会を離れて自然豊かな土地で暮らす。定年後に第2の人生を始める。最近ではリモートワークも一般的になり、どこで暮らすかの選択肢は以前よりずっと自由になった。それでもやはり移住という決断には少なからず不安がともなう。地域になじめるのか、学校や病院、買い物環境は十分か? 仕事は? そして何より本当にその土地で暮らしたいと思えるか。

 移住促進の取り組みが全国の自治体で進む中、地方で暮らすことの理想は語られても、そこでの日常が具体的に想像できる街はそれほど多くはないのではないだろうか。今回訪れた福島県伊達市では、「もしここに住んだら、どんな暮らしが待っているのだろう」 ―私の関心はまずそこからスタートした。

 取材したのは、『Up DATE Cityふくしま』だ。行政(伊達市)と、関係企業や団体で構成されるUp DATE City協議会、それにパナソニックホームズを中心とする住宅メーカー、そして運営事業者の(株)プレイスメイキングふくしま伊達。これらの公民が一体となって押し進める大型分譲プロジェクトである。

 しかし、実際に現地を訪れてみて分かったのは、このプロジェクトは決して住宅や制度の話ではないということ。そこにあったのは、人と人が自然につながる仕組みを、「まち」そのものの中に組み込もうとする取り組みだったのだ。

『Up DATE Cityふくしま』は福島市から阿武隈急行線急行電車で約15分ほど。駅の真ん前から戸建て街区「ソラチエ」の街が広がっている。

心地よい地方都市

 まずは伊達市がどんなところかを知るため、クルマを走らせることにした。

 福島県北部に位置する伊達市は、人口約5万3,000人(2026年5月現在)。東京から福島駅までは東北新幹線で約1時間30分。そこから阿武隈急行に乗り換えれば、『Up DATE Cityふくしま』までは15分ほど。クルマでも、首都圏から約3時間程度の距離だ。伊達市は思っていたよりずっと近かった。

 市内をクルマで走ってみると、生活インフラが充実していることが分かる。幹線道路沿いにはスーパーやドラッグストア、飲食店などが並び、生活に必要なものはひと通り揃う。また現在、大型ショッピングモール施設の開発も進んでいる。

 一方、少し距離を走らせると、一面に果樹畑が広がる。伊達市は全国有数の桃の産地として知られ、市を代表する「あかつき」は贈答品としても人気の品種だ。また柿の栽培も盛んで、特に「あんぽ柿」は全国的に有名である。

 福島盆地特有の寒暖差と気候が果樹栽培に適しているというが、実際に走ると、その土地の豊かさが風景として伝わってきた。阿武隈川の清らかな流れや、つやつやとした葉を風に揺らす桃畑を見ていると、都市では見えにくくなった季節の変化が感じられる。ここは観光地のような過剰な演出がなく、生活利便施設と自然のバランスがとても心地よい。

古くから山岳信仰の聖地として知られる「霊山(りょうぜん)」は標高825mの岩山で伊達市のシンボルでもある。霊山神社は同地に支城のあった北畠一族が祀られている。

歴史が息づく土地

 伊達市という名前は、戦国武将・伊達政宗へと連なる伊達氏に由来する。1189年奥州合戦で常陸入道念西が功をあげ、伊達の地を賜ったことが伊達の始まりとされ、その後、奥州伊達氏の本拠地として発展していった。梁川やながわには城が築かれ、霊山りょうぜんには南北朝時代の歴史が残る。市内を巡っていると、中世から戦国時代にかけての空気が、今も土地の中に息づいているような気がする。

 今回の取材では、高子沼、梁川城跡、梁川浅間神社、梁川天満宮、梁川八幡宮、霊山神社を巡った。高子沼には、伊達政宗が豊臣秀吉によって伊達郡を召し上げられた際、金鉱石の精錬所を隠すため沼の底に沈めたという黄金伝説が残る。真偽はともかく、こうした逸話が自然に語り継がれているところに、この土地と伊達家との結びつきの強さを感じる。梁川城跡は、かつて伊達氏の本拠地だった場所である。現在は穏やかな風景が広がるが、ここが奥州の歴史の中心のひとつだったことを思うと不思議な感覚になる。

伊達市は都市機能と豊かな自然がバランスよく調和している。現在建設中の「イオンモール伊達」は2026年11月ごろオープン予定だ。

 特に印象的だったのは、梁川天満宮だ。偶然居合わせた宮司の關根さん親子が、伊達氏の歴史を丁寧に語ってくれたのである。ここは昔から伊達家とのつながりが深い場所だと話す姿が、観光ガイドとして整えられた説明ではなく、その土地に暮らしてきた人の言葉として語られると、知識ではなく、物語として自分の中にすーっと入ってくる。

 梁川八幡宮は、伊達家始祖の朝宗が鶴岡八幡宮を勧請した神社として知られる。独眼竜政宗が戦勝祈願を行った場所でもあり、境内には「政宗さとしの桜」と呼ばれる桜も残る。また、政宗の正室、愛姫の受け渡しが行われた地としても知られ、戦国史好きにはたまらない場所だろう。

 さらに足を延ばして訪れた霊山も印象深かった。標高825mの新日本百名山にも選ばれている霊山は、奇岩怪石が連なる独特な景観を持つ。初心者でも比較的登りやすく、約3時間ほどのハイキングを楽しめる。現地ではソロツーリング中のライダーの姿も見かけた。中でも有名なのが「天狗岩」。地元では、その形から「ゴリラ岩」と呼ばれているという。残念ながら、私たちは山に登る時間はなく、駐車場から見上げるだけだったが、頂上から覗く岩肌が、なんだか巨大なゴリラの顔に見えてくるから面白い。

『Up DATE Cityふくしま』のすぐそばに伊達氏の初代・朝宗が築いたとされる高子岡城跡がある。鎮護の神として祀った山頂の亀岡八幡宮は人々を見守るかのように真っ直ぐにこの「まち」を見下ろしている。

 霊山神社では、南北朝時代に南朝側で活躍した北畠顕家らが祀られている。伊達市には、伊達家だけではなく、日本史のさまざまな層が折り重なるように残っている。「道の駅 伊達の郷 りょうぜん」やジェラートの美味しい「まきばのジャージー」にも立ち寄ってみたが、観光地化されすぎていない、のんびりとした優しい空気が、きっとこの土地の何よりの魅力なのだ。

 またドライブとの相性も非常に良い。福島と言えば、吾妻磐梯スカイラインは外せないが、伊達市からは1時間強の距離。また、9月には全日本ラリー選手権「MSCCラリー in 福島伊達」が8年ぶりに開催されるなど、クルマ好きにとっても無縁の地ではない。歴史や自然だけではなく、走る楽しさという視点でも、伊達市は魅力ある場所だ。

同物件からほど近い高子沼。伊達政宗の金山伝説が残る風光明媚な池。気持ちの良い風が吹き抜け、散歩する人も多い。

伊達市梁川町エリアは、伊達家ゆかりの神社として「梁川八幡神社(梁川八幡宮)」「梁川天神社(天満宮)」「梁川浅間神社」の3社が有名。梁川天神社では偶然居合わせた宮司の關根 誠さん(左)と、ご子息である禰宜ねぎの亘さん(右)がこの辺りの歴史などを丁寧に教えてくださった。

現在、発掘調査が実施されている梁川城跡の一画に残る梁川浅間神社。伊達氏の祖、伊達朝宗創建と伝えられている。

梁川八幡神社は伊達朝宗が鶴岡八幡宮を勧請した神社だが、伊達政宗が初陣の翌年、たび重なる戦の戦勝祈願のために参詣したという。毎年、春に境内のケヤキの木に野生のフクロウが飛来し、子育てを行うことで全国的に知られている。

未来へ続く「まち」構想

 話を冒頭に戻そう。そんな伊達市の高子駅北地区で2023年にスタートしたのが『Up DATE Cityふくしま』である。伊達市もまた、全国の地方都市と同じように、人口減少や超高齢化という課題に直面している。若い世代の流出による経済の縮小、労働力不足、公共交通の維持困難…、抱える課題は決して小さくない。このプロジェクトは、そうした課題に対する新しい街づくりの挑戦として始まった。

 もともとは、土地区画整理事業によって整備された住宅地を活用する一般的な大型分譲計画だったという。ところが総分譲戸数214戸という規模もあり、事業化へのハードルは高かった。転機となったのは2020年に、プライム ライフ テクノロジーズ(株)が事業に合流し、公民と連携した未来志向の郊外型街づくりとして再始動したことだ。

 そこで掲げられたコンセプトが「Up DATE City」。単なる住宅開発ではなく、その時々に必要な暮らしやサービスを更新し続ける街という思想が、このプロジェクトには込められている。

 阿武隈急行・高子駅の北側に広がる約14.1ヘクタールの複合開発エリアに、交流施設「U-プレイス伊達」を中心として、214戸の戸建て街区「ソラチエ」が整備されている。2023年10月29日に街びらきの運びとなったが、2025年春には認定こども園も開園した。

 実際に現地で感じたのは、ここは閉じた分譲地ではないということだった。

 その背景にあるのが、伊達市が推進するCCAC構想(Continuing Care Active Community)の考え方である。年齢や職業、障がいの有無、性差に関係なく、誰もが役割と居場所を持てるコミュニティをつくる。高齢者だけではなく、子育て世代も、若者も、多世代が循環する街を目指す。農業、福祉、健康、多世代の交流を、この街の中で自然につなぎ、人・もの・産業を循環させることで、新しい地域コミュニティをつくろうとしている。実際、交流施設「U-プレイス伊達」には、人が自然と集まる空気があった。単なる公共施設でも、商業施設でもない。地域のリビングルーム的存在なのだと思う。

 地方創生という言葉は、ここ数年で何度も聞かれるようになったが、実際には移住者を増やすことだけが目的となってしまうケースも少なくないだろう。だが、『Up DATE Cityふくしま』は、移住者を呼ぶ街づくりというより、誰もが関われる街づくりに近いのかもしれない。地域住民も、新しく来た人も、自然に混ざり合えるような仕組みを街そのものに組み込もうと、関わる人たちが試行錯誤している様子が印象的だった。「ふらっと来られる、ほどよい田舎」と、伊達市が掲げるその言葉は、単なるキャッチコピーではなく、実際の街の空気として存在していた。

 伊達市は都会というほど過密ではないが、孤立もしない。自然は近いが、不便すぎない。さらにその重層的な歴史がこの土地の魅力をより深いものにしている。

 次号では『Up DATE Cityふくしま』で実際に行われている、多世代交流を生み出す具体的な取り組みについて、さらに詳しく紹介したい。

同物件の交流館「U-プレイス伊達」の目の前の駅に発着する阿武隈急行線の電車。戸建て街区に住む小さな子どもたちはこの電車を見るのを楽しみにしているという。なんだかほっこりする風景だ。

Up DATE City ふくしま

福島県伊達市で進められている大規模な「まち」づくりプロジェクト『Up DATE Cityふくしま』。自治体や地元企業・団体が協力することで地域が抱える課題を解決し、住む人の毎日を充実させる新しい「まち」づくりを目指している。住宅建設や販売に地元工務店が参画できる体制を整え、地元の産業振興や地域経済の活性化に取り組んでいる。「ソラチエ」はこの街の戸建街区の名称。
[物件概要]所在地:福島県伊達市保原町高子岡28他 最寄駅:阿武隈急行線『高子』駅徒歩2分~5分 用途地域:第1種低層住居専用地域 開発区域面積:52,940.48㎡ 建ぺい率・容積率:60%/100%(地区計画による) 総区画数:214戸 地目:宅地現在も販売中。詳しくは物件HPヘ。



瀬イオナ/Iona Hayase

自動車メディアの編集部を経て2024年にフリーランスとして独立。モータージャーナリストを目指して「書くこと」「走ること」を勉強中。レーシングドライバーでありモータージャーナリストでもある中谷明彦氏に師事している。


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