前編では(Vol.282/2026年5月発行号)東武鉄道、トヨタホーム、イオンリテール、早稲田大学(小野田研究室)、久喜市の産官学5者連携による“BLP構想”の取り組みについて紹介した。
後編では実際にここに暮らす人のリアルな声を交えて、 “これからの暮らしや街づくり”へのヒントを探る。
Hさん一家が選んだBLP南栗橋での新しい日常
〝家を買う〟ということは、多くの人にとって、現実的な条件と調和させながら、自分たちにとっての「理想の暮らし」をかたちにしていくプロセスだ。
30代半ばになるHさんは、3年前、夫婦に子どもが生まれたことをきっかけに家探しを始めた。当初は利便性を重視し、越谷エリアの駅近マンションを検討していたという。しかし、たまたま不動産情報サイトで『BLP南栗橋スマートヴィラ』を目にしたことで、ふたりの気持ちは一変する。
「最初は本当に〝ちょっと行ってみようか〟くらいの軽い気持ちだったんですよ。でも現地の販売センターに置かれた街のジオラマを前に説明を聞いているうちに将来のイメージが湧いたんです。その瞬間、心が決まりました。妻はほぼ即決。一目惚れでした」
どちらかと言えばマンション派だったふたりが、なぜこの戸建ての街に惹かれたのか。「子育てをしやすい環境というのが一番でしたね。駅から近く通勤が便利なのも大きいです。子どもを育てるにあたって、学校が近い、公園が近いなど、コンパクトな街づくりをしている点にも惹かれました」
〝郊外の戸建て〟というと、環境が良い代わりに利便性が犠牲になるというイメージがあるが、BLP南栗橋はそれには当たらない。子どもを伸び伸びと育てられる環境と利便性が調和していることがふたりにとって大きな魅力に感じられたのだろう。
実際にこの街に越してからの、一家の暮らしはどうなのだろう。
「最初のイメージ通り、とても子どもを育てやすい環境です。歩いてすぐのところにあれだけ広い公園(南栗橋近隣公園)があるので、子どもも思いっきり遊ぶことができます。それに街に出入りするタウンゲートが2ヵ所しかないので、住人以外のクルマがほとんど走らない。そのことによる安心感も大きいですね」

インフラが変える住民の意識
前編で触れたようにBLP南栗橋は「ウォーカブルな街づくり」をコンセプトにしている。2ヵ所のゲートによってそもそも街に入ってくるクルマが少ない上に、街の中では「ラウンドデザイン」や「センターサークル(ラウンドアバウト)」などクルマのスピードを自然に抑制する工夫が施されている。また街区と街区の間に遊歩道を設けることで歩車が分離されており、子どものちょっとした外遊びも安心して見ていられる。
クルマがスピードを出せない(スピードを自然に抑制する)設計になっているわけだが、運転のしづらさはないのだろうか。
「最初は走りづらいのかなと思いましたが、安全性が担保されたデザインだと理解すると、全く気になりません。 ゲートを入った瞬間に、ここは子供たちが主役の場所なんだという意識が生まれ、ハンドルを握る手も自然と優しくなります」と話してくれた。
デザインが人の意識に働きかけることの好例と言える。

三輪車で遊ぶ子どもたちを見ながら、ラウンドデザインが施された街の中を歩いていると、PHEV(プラグインハイブリッド車)やBEV(電気自動車)など最新のEV(電動車)が多く並んでいることにも気づく。
BLP南栗橋の街区には、各住戸に最初からPHEV・BEV用の充電ポートが標準装備されていることが、住民の車種の選択にも影響を与えているのだろう。どの家もクルマ2台分の駐車場が確保されており、Hさん一家も2台持ちだ。奥様は最近になって、普段の足としてBEVを購入した。
「自宅に充電ポートが備え付けられているというのは、やはり大きいですね。それがなければ、BEVという選択肢はもっと遠いものだったかもしれません」
〝当たり前のようにそこにあるインフラ〟が、クルマの選択に変化をもたらす。Hさんの話を聞くとインフラを整えることの重要性を再認識させられる。
このことはクルマの選択の話には止まらない。Hさん一家の入居後、この地域一帯で停電が発生したことがあった。そのときHさんははっと気づいた。「クルマから家に給電できるじゃん! と。あの時の安心感は今でも忘れられません」 この街では PHEV・BEV用の充電ポートのみならず、全戸に非常時給電システム「クルマde給電」も備え付けられているのだ。
環境への配慮や防災への意識は大事だと分かっていても、個人の気合いや努力だけで乗り越えるには限界があるが、インフラが整っていればそれがごく〝当たり前〟の選択となるのだろう。


境界線を「溶かす」ことで生まれた、新しい公共心
Hさんが「特にお気に入り」と語るのは、夕暮れどきにウッドデッキでお酒を嗜む時間だ。そのとき見上げる空には視界を遮る「電線」がない。
これは、美観や防災のために電線をすべて地中に埋めるという、産官学のこだわりが生んだ景色だ。電線の地中化は街の価値を高めるだけでなく、実は管理側にとってもメリットがある。特に車道ではなく、あえて遊歩道の下に埋設したことで、浅い位置での工事が可能となり、優れたメンテナンス性と低コスト化を同時に実現している。
さらに街路灯に関しても興味深いエピソードがある。例えば街中に防犯用のカメラを設置したいとなったとき、通常はそれ専用の柱を建てる必要がある。しかしここでは街路灯の柱に防犯カメラが設置されている。本来、街路灯は行政(市)管理、防犯カメラは民間(管理組合)管理となり、管轄が異なるため、2本の柱が建つことになる。だから行政管理の街路灯に民間管理の防犯カメラが付帯して設置されているのは実はかなり画期的なことであり、これは久喜市の英断に他ならない。この街の美しい街並みは、関わった人たちのたくさんの〝知恵〟と〝挑戦〟の積み重ねによって生み出されているのだ。
さらに家と家の間の高い塀がないことにも触れておきたい。代わりに街区の間の遊歩道と、全戸に設けられた南向きのウッドデッキが〝緩やかな境界線〟を作り出している。
「〝塀〟がないというのは、近隣との自然なコミュニケーションに一役買っていますね。子どもを遊ばせていると、近所の子も来て『一緒に遊ぼう』となるので親同士も交流できますし、遊歩道ですれ違うときに会話することも多いですね。子育て世代が多いので、これから小学校に上がっていく中でこの関係性が今から構築できているのはすごく良いことだと思っています」(Hさん)
プライバシーを壁で守るのではなく、緩やかに開き、街全体を自分の庭のように感じる。こうした「公共」への新しい意識は、住民による自主的な景観形成にも表れている。各住戸にある植栽帯を、住人たちが思い思いに花や置物で彩り、「街全体を綺麗に、華やかにしよう」という共通の意志が芽生えているのだ。




未完成の「未来」を共に楽しむ遊び心
Hさんの話を聞いていてもう一つ印象的だったのは、現在進行形で行われている自動配送ロボットなどの実証実験に対する、住民たちのポジティブな姿勢だ。BLP南栗橋では早稲田大学小野田研究室と連携し、イオンリテール等の商業施設から戸建街区へ商品を自動配送するロボットの走行実証が定期的に行われている。
「住民の間では、『あの配送ロボット、いつから本格的に使えるようになるんだろうね』とよく話題にのぼります。家を購入する際に、この街で実証実験が行われることを聞き知っていますから、みんなワクワクしながら待っている感じですね」

新しい技術の導入には慎重な声や拒絶反応がつきものだが、BLP南栗橋の住人たちは、自分たちが「未来の社会実装」の最前線にいることを、まるでアトラクションを楽しむかのように歓迎している。変化や進化を楽しもうとする住民の心理が、この街の空気をより明るいものにしていると感じる。
こうした空気感は、久喜市がこの街を重要施策と位置づけ、埼玉県のスーパーシティプロジェクトのモデルケースとして市内外へ誇らしく発信しているという背景も大きい。産官学5者と、住民。それぞれのピースが「前向きさ」という接着剤で結びついているからこそ、この街は停滞することなく進化し続けている。
Hさん一家の暮らしを追いかけて気づかされるのは、家や街は単なる「住むための箱」ではないということだ。
街のデザインが「安全」や「景観」への意識を高め、整えられたインフラが「新しいライフスタイル」への移行を促す。変化した意識や暮らし方は、家や街をさらに魅力的なものへと変える原動力となる。
『BLP南栗橋スマートヴィラ』は街や家というハードウェアが人の「意識」を育て、新しい生き方を描き出す、日本の未来の雛形なのかもしれない。

BLP南栗橋 SMART VILLA
[物件概要]所在地:埼玉県久喜市南栗橋8-1-1他 最寄駅:南栗橋駅(東武日光線始発駅)から徒歩5~8分 用途地域:第二種中高層住居専用地域) 開発区域面積:38,202.34㎡ 建ぺい率・容積率:60%/200% 総区画数:172戸 地目:宅地 構造・工法:軽量鉄骨造2階建て(鉄骨ラーメン構造) 現在も販売中。詳しくは物件HPヘ。



ハシモトタカシ Takashi Hashimoto
