編集前記 VOL 39 生涯反抗期宣言

文・神尾 成

バイクは武器である。これ以上にバイクの本質を表している言葉はない。

 走っていて楽しいから、運転がおもしろいから、開放感があって自由になれるから。どれもバイクの魅力であることに間違いないが、人生の大半をバイクと過ごしていると、乗ることよりも精神的な支えとしてバイクという武器を手放せなくなってくる。

 今月号の特集の「僕が僕であるために、オートバイという武器を持つ」を読んで、まさしくと膝を打った。「まだインターネットもSNSもない時代、多くの若者にとって音楽やバイクやファッションは、自分を主張するための“武器”だった」と河西啓介さんが語っているのだが、当時の若者はバイクを世の中に抗うための道具だと思い込んでいた。

 これはバイクに限った話ではなく、尖ったクルマに乗ることやロックバンドも同じだった。そしてどれも反抗の象徴となり、世間から疎まれていたのである。なのでこれらを続ける方法を探すよりも、やめる理由を挙げる方が簡単だ。しかしこれまで長年に渡って「普通」と戦ってきたのなら、この先も変わらずに武器を持つことがアイデンティティを守るうえで重要なファクターになるだろう。さらに彼は、「やがて世の中で安定したポジションを得ると武器は必要なくなり、いつしか1人、2人とバイクを降りていく」とも記している。これをストレートにいえば、仲間の多くが体制側に流れたということであり、自分たちは少し厄介な人生を選んだということでもある。

 還暦を過ぎてもバイクや古いスポーツカーに乗り続けている奴は、自己が確立される高校生の頃に“発症”した「高二病」が完治せず、その頃から価値観がアップデートされていない。だが人生の後半に差し掛かってもなお、若い頃と同じように自分らしく生きたいと、もがいていることは確かだ。体力や経済力を含めて現実的に考えると、「その日」が迫ってきているのは分かっているが、精神的に持ち堪えさえすれば、これまで培ってきた感性で“勝ち続ける”ことが出来るはずだ。

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神尾 成/Sei Kamio

2007年11月からaheadに参画、企画全般を担当している。2010年から7年間編集長を務め、後進に席を譲ったが、2023年1月号より編集長に復帰。朝日新聞社のプレスライダー、ライコランドの開発室主任、神戸ユニコーンのカスタムバイクの企画などに携わってきた。1964年生まれ61歳。

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