海岸線に出る手前のジムニー〜外国車の次を探せ

白:APIO JIMNY JB74 NARROW STYTLE/グレー:APIO JIMNY JB74 TS4 STYTLE

若い頃は国産車に乗るよりも、外国車に乗る方が個性的でオシャレだと思い、いつか乗りたいと憧れてきた。

そして実際に外国車を手に入れて、独自の空気感や趣味性の高さに魅了されてもきた。一度外国車を味わった人は外国車を乗り継ぐと言われるが、少し視点を変えてみると、日本のクルマに乗り換えることもワルくない時代になってきている。

SUZUKI ジムニー シエラ

車両本体価格:1,863,400円~(税込)
*諸元値はJC 4WD・4AT
エンジン:水冷4サイクル直列4気筒 DOHC16バルブ吸気VVT
総排気量:1,460cc 車両重量:1,090kg
最高出力:75kW(102ps)/6,000rpm
最大トルク:130Nm(13.3kgm)/4,000rpm
燃料消費率:14.3㎞/L(WLTCモード)
(写真の車両は上下ともAPIOコンプリートカー)
Photo : Kazumasa Yamaoka

海岸線に出る手前のジムニー
対談:APIO河野 仁 VS 神尾 成

2018年に新型が発売されて以来、納車まで1年以上掛かると言われ続けているスズキ ジムニー。コロナ禍の影響があったとはいえ、発売から5年以上経った今も全く人気は衰えていない。今回はジムニー専門店APIOの代表である河野 仁氏と編集長の神尾が、なぜ今ジムニーが求められているのかを深掘りしていく。

丸いヘッドライトと物語

神尾先日、海岸線に出る手前の細い路地から白いTシャツをきた40代くらいの女性がジムニー乗って出てきたんです。フルノーマルのJB64(現行型の軽)の白でした。ハンドル捌きに迷いがなく、しっかりと、そしてスムーズに加速した。久しぶりにカッコイイなと思って自然と目で追いました。

河野ジムニーの女性率は年々上がってきてますからね。特に現行型になってジムニーの認知度が高まってきたので、カッコイイ女性も増えてますよ。

神尾以前は街でカッコイイバイクやクルマに見惚れることも多かったんですが、最近はすっかりそういうことがなくなってしまった。久しぶりに懐かしいような良い気分になりました。

河野そういうふうに絵になるクルマやバイクが減ったからじゃないでしょうか。現代はクルマの“顔つき”が厳つくなってしまったんで、“物語”を想像し難いんですよ。

神尾昔のクルマの顔は、丸目(丸いヘッドライト)か角目(四角いヘッドライト)しかなかったですからね。

河野僕はクルマやバイクの物語を描くには丸目であることが大事だと思っているんです。

神尾なるほど。雰囲気やカタチが重視されるクラシックスタイルのクルマやバイクは、みんな丸目ですしね。

河野ジムニーが長年に渡って愛され続けているのは、丸目だということも大きい。最近では、ネオクラシック以外で丸目のクルマは貴重な存在です。もしジムニーが現代的な顔つきだったとしたら今ほど支持されてないと思いますよ。

神尾丸目だからジムニーは物語を紡ぎ出せるということですか。

河野そうなんです。クルマやバイクの絵を描く有名な画家の方がおっしゃってたんですが、ジムニーは丸目だから絵になりやすい。だから物語を感じさせることができるんだと。

神尾確かにそうですね。絵になるって大事なことかもしれません。それに人が生きていくには物語が必要だと言いますから。

河野クルマにしろバイクにしろ、絵になる乗り物を選ぶ人は物語を創ろうとしてるんですよ。そしてそのクルマやバイクで走り出せば、自分も物語の中の登場人物になれるということなんです。

神尾だから今でも丸目が多くの人から支持されているんですね。

河野眺めたり、写真を撮ったりすることもクルマを楽しむ時間になっているんです。

ジムニー

片岡ワールドとジムニー

神尾先月号の特集『心からはじめて、旅へ』は、片岡義男さんの小説のタイトルをモチーフにしたので表紙の写真選びに迷いました。バイクならカワサキのWでよかったのかもしれませんが、どうしてもクルマでいきたかった。片岡義男小説のクルマといえば“ステーションワゴン”ですが、具体的な車種が思い浮かばなかったので、このクルマならイメージに合うだろうとジムニーにしたんです。

河野ジムニーは実際に近年の片岡義男さんの小説に出ていますよ。2019年に出版された『窓の外を見てください』(講談社)という単行本の中でハッキリとジムニーの名前が記されていますし、弊社が依頼した広告原稿にも「小型の四輪駆動車」という表現でジムニーが登場しています。

神尾それは全く知らなかった。ジムニーは現代の片岡ワールドのクルマということなんですね。

「窓の外を見てください」片岡義男(講談社)

「窓の外を見てください」片岡義男(講談社)

80年代の若者から圧倒的な支持を受けた片岡義男の2019年に発刊された単行本。小説はどのように発生し、形になるのか。めぐり逢いから生まれる創造の過程を愉しく描く長編作。物語の初頭、登場人物のセリフの中でジムニーが出てくる。またAPIOが発行する「APIO JIMNY NEWS」では、片岡氏がAPIOジムニーについて書き下ろしたコラムを読むことができる。

河野僕は10代の頃から片岡義男さんの大ファンなんです。小説の世界に憧れて初代のSRX400で走り回っていました。

神尾僕も後期型ですがSRXが好きで今もリビングに飾っています。一昨年発行された『片岡義男を旅する一冊。』の編集長を務めた河西啓介さんもSRXに乗っていなければ今の自分はなかったと言ってましたね。

河野あの頃、片岡義男ワールドに憧れた人はSRXに乗っていたということなんですよ。

神尾小説の中でSRXは登場しなかったけれども、片岡義男さんの小説の世界とSRXのイメージが結び着いたということかもしれません。

ヤマハSRX400/600

ヤマハSRX400/600

1985年。SRXはレーサーレプリカ全盛時代に突如登場した。初代のカタログに、「クオリティという言葉は、このマシンにこそふさわしい」、「シングルへの先入観を捨て去るときがきた」とあるように、SRXは現代でも通じるセンスの良いデザインやアンチスペック主義とも言えるビッグシングルを前面に出したマニアックさから人気を博した。初代は前後18インチで水平基調(上)、最終型(下)はデザインが変更され前傾が強まる。

河野僕は80年代にヤマハの発行していた「55mph(マイル)」という冊子でSRXにやられたクチなんで、バイクにセンスの良さというかファッション性を求めていたんです。だから北海道にツーリング行った時もマグラのハンドルに換装してWMのシングルシートやバックステップをつけてた。不便さは後回しにして自分の中のロマンを追いかけていたんです。多少の痩せ我慢をしなければ、自分の考えるカッコ良さに近付けませんから。

神尾あの頃は、そういう気持ちがみんなあったんじゃないでしょうか。便利とか不便だとかを言い出すとバイクはいらなくなるし、クルマは単なる移動のための道具になってしまう。若いころみたいに痩せ我慢してまで張り切る必要はないけれど、クルマでもバイクでもカッコイイを求めてさえいれば自分らしさが守れるように思います。

ヤマハ55mph

ヤマハ55mph(マイル)

55mphとは時速55マイルのことで、一番気持ち良い速度と言われる約88km/hを表している。80年代にYSP店で手に入れることができた冊子「55mph」は、海外の話題も多く、バイクに関する新しい世界を提案する内容だった。現在の「Project 55mph」はWebを通して、バイクを楽しみ人生を豊かにすることをテーマに、人、物、その背景、イベントやカフェなど、バイクを取り巻く様々な文化を紹介している。
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/life/55mph/

ジムニーvs現行型ミニ

神尾ここからは具体的なジムニーの話を聞かせて下さい。以前と比べてクルマのカッコ良さがこの数年で急激に変化しているように感じています。年齢的なこともあるでしょうけど、スポーツカーや高級車だけがカッコイイクルマではなくなってきています。

河野いわゆるスーパーカー的なものやゴージャスなクルマに、少し引いてしまう時代になったんではないでしょうか。ラフというかカジュアルな中に、いかにカッコよさを取り込めるか、みたいなことが大事になってきている。

神尾それはヒエラルキーから外れた、クラスレスなクルマが求められているということでもありますよね。クラスレスなクルマというとプリウスのようなハイブリッドだとか、BEVみたいな革新的なクルマのことを思い浮かべるかもしれませんが、それだけだとクルマ好きとしては、つまらない。もう少し“遊び感”がほしい。例えるならクラシックミニのような存在です。現代は多くの人がクルマに高性能やスポーツ性を求めなくなってしまって、自分の個性を演出できることの方が重要になってきました。

河野ジムニーの購入を考えている人の比較検討している車種で一番多いのは、現行型のミニなんですよ。ジムニーは、本格的なオフロード車でありながら、ファッション的な感覚で購入される方も多い。アウトドアブランドが、カジュアルなファッションになったようにジムニーもカジュアルになってきてるんです。さらに昨今のアウトドアブームやキャンプブームの影響もあって、オフロード車という存在がマニアックなものではなくなり、普通の人が選択するクルマになってきたということでもあります。

神尾そういう意味で考えると、ジムニーはSUVではなく、クロスカントリーモデルであることも意識が高い人から注目されるポイントになりますね。

河野本物であることは大きな価値になります。ミルスペックだとか、NASA認定だとか、実際にその性能を発揮する場面がなかったとしても、そういうスペックを所有しているという満足感って大事なんですよ。ダイバーズウオッチのように機能美を体現したファッションとしてジムニーは、選んだ人の個性を演出してくれますから。

神尾クロスカントリーモデルは他にもありますが、どれも車体が大きいせいかカジュアルというより主張の強さを感じてしまう。ジムニーはクラシックミニと同じでコンパクトであることが、チカラが抜けていてイイということでもありますね。

河野大き過ぎないということは、存在感を出し過ぎてないということでもあります。だからジムニーは、街に溶け込むことができて自然体で乗れるんです。しかし埋没しない個性を持った唯一無二のクルマなんです。

ジムニーに飛び込む勇気

神尾では実際にジムニーを購入しようと考えた場合、まずは軽自動車にするのか、1,500㏄のシエラにするのかを決める必要があります。それに中古車も検討したい。どういうふうに考えればいいのでしょう。

河野基本的にその人の気に入った物を選べばいいんです。現行型でいうなら、軽のJB64もシエラのJB74も車幅以外は大して変わりませんから。

神尾これまで軽自動車を所有してこなかったので、軽を選んだ場合、高速道路の巡航や追い越しが大変なんじゃないかと少し不安になるんです。それに車高が高めなのも気になります。

河野シエラは1,500㏄なので、一般的な小型車と同じと考えて問題ありません。軽のJB64はターボ車ですし、前モデルよりもかなり進化しています。両車とも現行型になって特殊なクルマではなくなりました。個人的には、高速道路でエンジンを回せるので、シエラよりもJB64の方が気持ち良いと思えるくらいです。車高については、キットなどで極端に上げたりしなければ、横風やハンドリングについては気にしなくて大丈夫ですよ。

神尾それと素朴な疑問なんですが、ジムニーのオーナーになったら皆さんオフロードに行かれるのですか。

河野もちろんオフロード走行を楽しむためにジムニーを購入する方はたくさんいらっしゃいます。しかし全体的にみると実際にオフロードに行かれる人の割合は、少ないかもしれません。先ほども話しましたが、ジムニーを所有するというのは、本物のオフロード性能を手に入れるということなんです。それは、オフロードにいつか行くかもしれないという可能性を広げることでもあります。そして何よりもそういう気持ちになれることがジムニーの最大の魅力なんですよ。

神尾ジムニー専門店の社長から、そういうふうに言われるとオフロード車だからと構えなくて良いんだと、気が楽になります。“おかサーファー的”にファッションとして捉えても許されるということですね。

河野ファッションというと、軽いイメージを持たれるかもしれませんが、僕は自分の在り方というか“志”を表現することだと考えています。ジムニーが自分を表現するのに相応しいと思ったなら、ぜひジムニーの世界に飛び込んできてほしいですね。

河野 仁

河野 仁

1966年生まれ。1993年のロシアンラリー出場時にオノウエ自動車(現アピオ株式会社)の創業者、尾上茂氏と出会い入社。2005年からアピオ株式会社代表取締役社長に就任。クルマやバイクの他、カメラ、蕎麦、文具など多趣味な事でも有名である。

4代目(2018年~)JB64

4代目(2018年~)JB64

伝統のラダーフレームを継承し、さらに前後にクロスメンバーを配置した現行型の4代目は、直列3気筒ターボエンジンのR06A型を搭載。また3代目の4型で消滅していた機械式副変速機も復活している。発売されてから5年以上経過しているが、アウトドアブームやキャンプブーム、コロナ禍の影響もあって、今なお納期が1年以上という品薄な状態が続いている。

外車→外車の次を探せ

外車→外車の次を探せ

文・小沢コージ

 「最近、これだ!と思うクルマがなくてさ。なんか面白いクルマない?」 いまだに時々、そう尋ねられることがある。特にこれまで輸入車を選んできた人に多いようだ。

 正直、さもありなん…ではある。そもそも輸入車は昔ほど面白くない。例えば90年代、フランスのシトロエンは明らかに個性的でコンパクトのAXはもちろん名車2CVなどはとんでもなかった。明らかにブリキのオモチャの拡大版で今の安全基準に合わせたら、最低評価が下ることだろう。出したり引いたりするマニュアルギアボックスも違和感の塊で馴れが必要。だが、ソレが楽しかったのだ。

 メルセデスベンツ190Eも素晴らしいクルマだった。私が時々乗ったベースグレードのアンファングなどは集中ドアロックさえ付いてない。しかし乗ると全長5mくらいのSクラスそのもののフィーリングがあってメルセデスに対する畏怖を感じた。とにかく圧倒的に面白かったのだ。まさに走る海外留学。

 しかし今や2CVはほぼ新車で売っておらず(フランスでは売ってる説あり)190Eの後継のCクラスは一部のファンには怒られてしまうだろうが、言うほど国産車と変わりがない。もちろん走りはしっかりしているし、デジタル性能は圧倒的なのだが、別格感は薄まった。

 さらに価格だ。いまや輸入車は100~200万円は高くなったようだ。例えばかつて400万円以下で買えた最新Cクラスのスタートプライスは、ほぼ600万円。それベースのGLCは820万円。え? 一体ナニ言ってるの? とすら思う。呼吸するように輸入新車を買うリアルお金持ちはそれくらいの値上げはさほど気にしてないようだが、年収1,000万円いかない普通の人からすると「アホか」と言いたくなる値付け。「だったらマンション購入の頭金にするよ」と言う人もいるだろう。それくらい今の輸入車価格は異常だ。かつて500万円から買えたジープラングラーでさえ実質700~800万円。

 とはいえ今の日本人と欧米人の収入格差と円安状態を考えると当たり前。いま新車のプレミアム輸入車を買う人はかなり限られるはず。

 だったら発想転換、国産車はどう? である。確かに国産車にはかつて輸入車が持っていたような圧倒的な面白さはないかもしれない。海外のホテルに着き、蛇口をひねろうとしたら逆に回さないと水が出ない!? 的な驚きはない。だが、そもそも輸入新車の違和感自体が減っている。だったら国産車を楽しむぐらいの発想の転換が欲しい。

 というか今の国産車、マジ面白いですよ。特にマツダなんてこの電動化の時代、ドイツや欧州ブランドが理想主義的にどんどんEV化していく中、新作直6エンジンのディーゼル仕様まで作るんですから。しかもイマドキFRプラットフォームを新設。世界的にも面白いとしかいいようがない。しかもスタートプライスがなんと300万円! 逆に真のお金持ちからすると貧乏臭いと思うかもしれないけど、マツダのこのブルジョワジーに対抗する庶民派プレミアムは1回食べて見る価値あり。

 ロードスターもそう。イマドキFRで最軽量だと1トンを切る2シーターオープンが300万円以下から買えるなんて、こんなのイタリア車だったら500~600万円ですよ。

 というか私からすると「国産車なんて面白くない」「乗るべきは欧州車」って思い込み自体がナンセンス。確かにかつての国産車、特にトヨタ車は退屈なクルマの象徴ではあった。だが、そのトヨタからして変わってきていて、一連のGRモデルのこだわりにせよ、ホントに異様レベル。この変革期、色んな意味で日本車は勝負に出ている。それは電動化、知能化に実は価格高騰が付きまとうことも関係していて、電動化に積極的でないことは大衆価格を守ることにも繋がっている。今こそ固定観念を崩す時。マジで最新国産車、悪くないですって。

小沢コージ

1966年生まれ。『NAVI』編集部を経て独立。現在は『ベストカー』『webCG』『ENGINE』などに連載を持つ。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(木曜 17:50-18:00)が放送中。YouTubeチャンネル『Kozzi TV』も配信中。

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