これまでの暮らしとこれからのくらしを巡る旅-Vol.7 人と人のつながりをつくるまち~Up DATE Cityふくしま[ 後編 ]

文・瀬イオナ 構成・若林葉子 写真・長谷川徹
『Up DATE Cityふくしま伊達』において、“人と人とをつなぐ”重要な役割を担う交流館「U-プレイス伊達」。この交流館の存在は、日本のこれからの街づくりに大きな示唆を与えている。

前編(Vol.284/2026年7月号)では、都市機能と豊かな自然の調和する伊達市をドライブしながら、この地の歴史や、そこに暮らす人たちとの出会いを中心にお伝えした。

後編となる今号では、この「まち」に「人と人のつながり」を作り出そうとする人たちの姿と、実際にここに暮らす人のリアルな声を交えて、 “これからの暮らしや「まち」づくり”へのヒントを探る。

 前編では、福島県伊達市の魅力と、『Up DATE Cityふくしま』が掲げる〝暮らしを更新する「まち」〟というコンセプトや、〝「まち」の中に人と人が自然につながる〟仕組みをつくり出そうとしていることなどを紹介した。

 後編では、その取り組みの中心となる交流施設「U-プレイス伊達」を軸に、この「まち」でどんなコミュニティが生まれているのかを追っていく。

つながりが生まれる場所

 『Up DATE Cityふくしま』の中心に位置するのが、交流館「U-プレイス伊達」だ。「まち」びらきと共にオープンしたこの施設は、地域住民、移住検討者、子育て世代、高齢者、学生などさまざまな人が交わる場所として機能している。運営を担うのは(株)プレイスメイキングふくしま伊達である。同社は地元企業を中心に組織され、伊達市から「地域再生推進法人」に指定されている。

 この交流館は行政施設のような堅さもなければ、商業施設のようなあからさまな消費空間でもない。実際に交流館の中に入ってみると、ここが用事がなくても誰もが気軽に利用できるオープンな場所であることがすぐに分かる。

 施設内にはレストランのほか、ヘルスケアステーション、キッズスペース、テレワーク可能なフリースペースなどが整備されている。ヘルスケアステーションには血圧計や体組成計などが並び、薬剤師や介護士、ケアマネジャーによる健康相談も受けられる。また隣接する福祉施設には共有部や公園の花の手入れなどを委託することで連携し、「まち」とのつながりをつくっている。

01:手作り感が温かみを感じさせる街の中のリサイクルボックス。02: 住民は電気自動車カーシェアリングやシェアサイクルも利用できる。 03:いざという時のための防災井戸。04: 戸建て街区に家を建てるにあたっては地元の工務店も参加。統一感のある街並みを維持しつつ、建主が意匠を凝らした思い思いの個性的な家々が街の風景を彩っている。05: 街区の中には「健康器具・ストレッチエリア」が整備されている。

 交流館の周囲には、福島学院大学の学生がデザインしたコンテナスペース「TATAMI BOOX」やバスケットゴールも設置されている。「TATAMI BOOX」にはたくさんの絵本が収蔵されており、子どもたちの憩いの場になっていると聞く。また取材時、バスケットゴールの前には学校帰りの生徒たちが自然と集まり、地域に開かれた空気を感じさせた。

 〝人と人とのつながりを作り出す〟その象徴ともいえるのが「高子ハロハロマーケット」である。交流館完成前から始まったこのイベントは、現在まで53回開催され、この7月に5周年を迎えた。初めは数十人程度の参加者だったが、現在では1,000人規模にまで成長。マルシェ、キッチンカー、クラフト販売、音楽イベント、農業体験などなど。よくあるマルシェにも見えるが、本質は、物を売る場でなく。関係性をつくる場である。出店者同士、また地域住民と移住者がつながり、学生も運営に関わる。自然と次の企画が生まれ、その積み重ねによって新しいつながりが生まれていく。

 地方移住で多くの人が不安に感じるのは、地域に馴染めるか、地域の人たちに受け入れられるかどうかだろう。

 『Up DATE Cityふくしま』はその入口が非常に柔らかい。祭りやイベントを交流の装置として活用しながら、新旧住民の境界線を少しずつ薄くしていく。その仕掛けがうまく機能しているように見えた。

01・02・03:誰でも自由に利用できる、レストラン併設の交流施設「U-プレイス伊達」。移住を考える人向けの空家相談窓口もあり、様々な相談に乗ってくれる。 04:この7月で5周年を迎えた「高子ハロハロマーケット」。多くの“人と人”をつないでいる。

地域を支える人々

 印象的だった人物のひとりが、プレイスメイキングふくしま伊達で地域活性化や情報発信を担当する菊田瑠香さんだ。伊達市生まれ、伊達市育ち。実はここで働く前、すでに医療業界への就職が決まっていたという。しかし大学時代に「高子ハロハロマーケット」の立ち上げに学生として参加したことで、地域づくりの面白さに惹かれていった。イベント運営を通じ、地域に人が集まる場をつくる面白さを知ったという。

 そして卒業時に運営側から声をかけられ、そのままプレイスメイキングふくしま伊達で働くことを決めた。彼女の語り口からは、この仕事に対する確かな思いが伝わってくる。

 現在は移住定住や地域イベント、まちの魅力発信に関するSNS運営を担当し、自ら企画を提案しながらインスタグラムなどで情報発信を続けている。特に若い世代への発信に力を入れており、「だてがーる」という地域発信グループにも関わっている。

 興味深かったのは、移住者にもタイプがあるという話だった。「地域で何か新しいことを始めたい人もいれば、自然の中で静かに暮らしたい人もいる。でも、ここには後者の人が比較的多い気がしますね」。確かにここで出会う人たちはみな親切だけれど、押し付けがましくなく、控えめで優しい。移住者を歓迎しながらも必要以上に距離を詰めない。その余白が心地よいのかもしれない。

交流館の施設の一つであるコンテナ図書館「TATAMI BOOX」。小さな子どもたちが絵本を読んだり、読み聞かせをしたり、豊かな時間が流れる。

 一方で課題もある。高齢者だけではクルマなしの生活が難しいこと。公共交通機関の本数には限りがあることなど、地方ならではの現実もきちんと見つめている。それでも菊田さんは「若い世代が戻ってきたくなる街をつくりたい」と語る。県外へ進学や就職で出た若者たちが、結婚や子育てを機に再び戻って来られる場所。それが彼女の目指す伊達市の未来だ。

 また、U-プレイス伊達に併設されているレストラン「畑のみえるレストランEarth」も、ここを象徴する場所のひとつだ。オーナーシェフは木幡睦人さん。地元出身で、伊達鶏の会の会長も務めている。店名の〝Earth〟には、「伊達の自然と大地から生まれた食材を活かしたい」という思いが込められている。

 可能な限り地元農家から仕入れを行い、伊達鶏も積極的に活用している。派手な創作料理ではないが、〝この土地で採れたものを、この土地で食べる〟こと自体に価値がある。

年齢や職業、障がいの有無や性差に関係なく誰もが住みたくなる、「自分らしく暮らせるまちづくり」を目指し、まちや交流館などの運営を担う、地域再生推進法人プレイスメイキングふくしま伊達のマネージャー鹿股かのまた敏文さんと菊田瑠香さん。

「畑のみえるレストラン Earth」のオーナーシェフ、木幡こわた睦人さん。伊達市のブランド鶏である「伊達鶏」を広くPRしたいと「伊達鶏の会」を発足、会長を務めている。レストランでは地元産を中心とした野菜や伊達鶏のハンバーグなど地元の魅力が溢れるメニューを提供している。

 木幡さんの作る料理からはその思いがよく伝わってくる。大ぶりにカットされた野菜をごろごろのせたピザ。人参を丸ごと一本使ったロースト料理。調味料は極力抑えられ、素材そのものの味が前面に出てくる。「野菜って、本当はこんな味がするんですよ」と語る木幡さんの言葉にも、土地への愛情がにじんでいた。「どんな家に住むか」だけでなく「どんな食が日常にあるか」も暮らしの満足度を左右する。このレストランには、伊達市の日常がそのまま詰まっているように感じられた。

「家」と「まち」を選ぶ時代

 『Up DATE Cityふくしま』の戸建街区「ソラチエ」に暮らす沼 匠さん(31歳)にも話を聞いた。夫婦で公務員として働く中、転勤を機に4年前に伊達市へ移住。住宅購入を考え始めたのは、子どもが小学校に上がる前に生活の拠点を定めたいと思ったからだ。交通の利便性、実家との距離、子育て環境などを総合的に考え、この「まち」を選んだという。特に魅力だったのは、福島市まで短時間でアクセスできることと、インターが近く、高速道路へのアクセスが良いことだった。「地方だけど不便ではない」という言葉が印象に残った。

 家づくりでは、家族が自然と顔を合わせられる間取りを重視したという。子ども部屋へ行くには必ずリビングを通る設計にし、庭では家庭菜園を楽しみ、子どもの遊具を自作しているという。実際に暮らしてみると「想像以上に子育てしやすいですね」と話す。近所には同世代の子育て世帯も多く、子ども同士が庭で遊ぶうちに自然と親同士の交流も生まれていく。

沼 匠さん。忙しい毎日の中でも、1日の終わりに「まち」の中をランニングして、気分転換することが趣味のようになっていると言う。いずれはマラソンの大会などにも出場できたら、と話してくれた。

 また、高子ハロハロマーケットなどを通じて住民同士が顔見知りになれる点も大きいという。「家を買ったというより、この「まち」全体の環境を選んだ感覚だというその言葉に、この「まち」の本質が表れている気がした。
 そして移住検討者向けの宿泊体験施設「Nextプレイス」も興味深かった。1日1組限定で利用できる宿泊施設で、最大6名まで宿泊可能。隣接するU-プレイス伊達に常時スタッフがいるため、初めての滞在でも安心感がある。野菜収穫、農業体験、ピザ窯体験、BBQなどを楽しめるオプションも充実している。

 私も宿泊し、地元食材を使ったバーベキューも体験した。地域住民が自然に会話を交わす様子や、鳥のさえずり、カエルの鳴き声、夜の安心感など、〝泊まってみないとわからない空気〟を体感できた。移住後の暮らしを具体的に想像できる取り組みとして、完成度が高いのではないだろうか。実は、沼さんの両親もこの施設を利用したことで、「まち」の雰囲気を知り安心してくれたという。

伊達市は都市機能と自然が調和し、その暮らしやすさから首都圏からの移住者も増えているという。ここでは移住検討する人のために宿泊体験施設も運営されている。ぜひ、宿泊し、この地の良さを味わって欲しい。

気軽にBBQができる施設が年々少なくなる中、手ぶらでもBBQを楽しめる。地元野菜がたっぷりのったピザは生地から手作りで、驚くほどの美味しさ(BBQとは別料金)。レストランやBBQは一般の方も利用できる。

住宅街区「ソラチエ」の企画・整備を手がけた浜秋 翔さん。浜秋さんも「高子ハロハロマーケット」をきっかけに徐々にこの街に馴染んでいったそうだ。3年で東京に戻ったが、「人々の優しさ」が特に印象的だったとのこと。

住む+つながる「まち」

 今回の取材を通して強く感じたことがある。伊達市は単に「住民を増やそう・移住者を集めよう」としているわけではなく、人と人が自然につながれる環境を整えようとしているのだ。人が増えることは重要だが、その前提として、この「まち」を好きになってもらう、暮らしやすいと感じてもらう仕組みづくりに真摯に取り組んでいる。

 実際に自分がここで暮らしたらどうだろう、と想像してみた。朝、果樹畑の風景を眺めながらクルマを走らせる。鳥のさえずりを聞きながら在宅ワークをし、休日には霊山(ルビ:りょうぜん)へ向かってハイキングを楽しむ。高子ハロハロマーケットで顔見知りと会話し、バーベキューを囲みながら交流する。

 都市の便利さとは違う。しかし孤立感もない。「地方移住」というより、人との心地よい距離感を取り戻す暮らしに近いのかもしれない。
『Up DATE Cityふくしま』が推し進める挑戦は、これからの私たちの暮らしや地方都市のあり方を考える上で、大切なヒントがたくさん詰まっていると思う。

Up DATE City ふくしま

福島県伊達市で進められている大規模な「まち」づくりプロジェクト『Up Date Cityふくしま』 自治体や地元企業・団体が協力することで地域が抱える課題を解決し、住む人の毎日を充実させる新しい「まち」づくりがコンセプト。住宅建設や販売に地元工務店が参画できる体制を整え、地元の産業振興や地域経済の活性化に取り組んでいる。「ソラチエ」はこの街の戸建街区の名称。
[物件概要]所在地:福島県伊達市保原町高子岡28他 最寄駅:阿武隈急行線『高子』駅徒歩2分~5分 用途地域:第1種低層住居専用地域 開発区域面積:52,940.48㎡ 建ぺい率・容積率:60%/100%(地区計画による) 総区画数:214戸 地目:宅地現在も販売中。詳しくは物件HPヘ。



TOYOTA HARRIER Z

”Leather Package”
車両本体価格:5,410,900円(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,740×1,855×1,660
パワーユニット:2,487cc+モーター
駆動方式:E-four(電気式四輪駆動)
燃料消費率:21.7km/L(WLTCモード)

瀬イオナ/Iona Hayase

自動車メディアの編集部を経て2024年にフリーランスとして独立。モータージャーナリストを目指して「書くこと」「走ること」を勉強中。レーシングドライバーでありモータージャーナリストでもある中谷明彦氏に師事している。


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