デザインの好き嫌いは趣味の問題であってもその良し悪しは客観的に論じたい。
デザインなき評論はクルマの半分しか語っていないと、自称「クルマ馬鹿」の夢野忠則がその領域に踏み込む。
昔のクルマのほうが、今のクルマより“美しい”。欧州車のほうが、日本車より“カッコいい”。それはそうだ。昔より今のほうが、欧州車より日本車のほうが制約が多いのだから。しかし、だからと言って、美しくなくてよい、カッコ悪くても仕方ない、ということにはならない。制約をクリアしながら機能的に、美しく、カッコよく魅せるのがデザインのチカラだろう。制約を、つまらなさの言い訳にしてはいけない。
このクルマは美しい、あのクルマはカッコ悪いと言えば、それは主観であり感性の問題だとツッコミが入る。だからクルマのデザイン話は、いつもそこで終わる。だけど、そうではないはずだ。好きだ、嫌いだと言えば、それはその人の趣味の問題だが、デザインには必ず目的があり意図があって、その結果の良し悪しは客観的に論じられるべきものだと思う。
これからのクルマは、性能や機能での差別化が難しくなっていく。だからこそメーカーにとってもユーザーにとっても、デザイン性がさらに重要となる。RACCOとSAKURAの性能比較も大事だが、なぜ、それと同等にデザインの良し悪しを比較検討する論評は見当たらないのか。きっと日産のデザイナーさんは憤慨していらっしゃるに違いない。

この国の自動車評論では、スペックや性能、装備、乗り心地、使い勝手といったことは詳細に語られる。だがデザインについては、力強いスタイリングとか、アグレッシブなフロントマスクとか、躍動感のあるサイドビューとか、いかにもメーカーのプレスリリースに書かれているようなフレーズばかり。それは批評ではない。
そのクルマのデザインを好きか嫌いかは、ユーザーの好みでいい。しかし自動車評論家ならば、なぜ、そう感じるのかを言語化して伝えてもらいたい。例えば、ユーザーが「フロントグリルが大きいから嫌い」と感じるなら、それは「ボディ全体に対してフロントの視覚的重量が過剰で、キャビンとのバランスが崩れているからである」と解説してもらいたい。批評とは、そういうことだろう。それは批判ではないはずだ。
陳腐なデザインは、それを批評しない側にも問題があると思う。プレスリリースに「ワイルドさを表現しました」と書いてあるなら、「ワイルドと下品の境界はどこにあるのか」と問うてはどうか。批評があって進歩があるのだ。メーカーの言葉を別の言葉に置き換えるだけの仕事なら、もはやAIが肩代わりしてくれる。
欧州車からは、例えばイタリア車なら官能、ドイツ車なら機能美、英国車なら伝統といった風に一貫したデザイン思想を感じ取ることができる(できた、と言うべきか)。しかし日本車の場合は、思想よりも「こういうクルマが必要(=売れる)」という視点からデザインされるケースが多いようだ。「より広い車室空間をいかに実現するか」が目的になってしまえば、美しいディメンションは望めない。だから冒頭に、欧州車より日本車のほうが制約が多いと書いた。
とはいえ、日本車にも優れたデザインのクルマが増えつつある。目に留まるのは、例えばプリウス、クラウン、ホンダのフリード、マツダ3、そしてロードスター……
共通しているのは、デザインを盛り過ぎていないことだろうか。デザインに抑制が効いているから子供っぽさがない(=子供っぽいデザインのクルマが多すぎる)。自動車評論家ではない自分に語れるのはそれくらいだから、どなたか的確な批評をお願いします。
デザインを語らないクルマ論議は、クルマの半分しか語っていない。選ばれない理由をスペックでクリアしたとしても、選ばれる理由を満たすことにはならないのだから。軽自動車だろうとミニバンだろうと、デザインを語り合えるクルマであってもらいたいと願う。

BYD RACCO
*諸元値はBYD RACCO 3000Premium
全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,800
車両重量:1,230kg

ホンダ FREED
*諸元値はe:HEV AIR EX(FF/6人)
全長×全幅×全高(mm):4,310×1,695×1,755
車両重量:1,480kg

トヨタ プリウス
*諸元値はZ 2.0Lハイブリッド
全長×全幅×全高(mm):4,600×1,780×1,430
車両重量:1,420kg

マツダ MAZDA3
*諸元値はFASTBACK 25S/25L(2WD/6EC-AT)
全長×全幅×全高(㎜):4,460×1,795×1,440
車両重量:1,420kg

マツダ ROADSTER
*諸元値はS Special Package(6EC-AT)
全長×全幅×全高(mm):3,915×1,735×1,235
車両重量:1,070kg

トヨタ クラウン クロスオーバー
*諸元値はCROSSOVER Z
全長×全幅×全高(mm):4,930×1,840×1,540
車両重量:1,810kg

トヨタ クラウン スポーツ
*諸元値はSPORT Z 2.5L プラグインハイブリッド
全長×全幅×全高(mm):4,720×1,880×1,570
車両重量:2,020kg

トヨタ クラウン エステート
*諸元値はESTATE RS
全長×全幅×全高(mm):4,930×1,880×1,625
車両重量:2,080kg

トヨタ クラウン
*諸元値はZ 2.5Lハイブリッド
全長×全幅×全高(mm):5,030×1,890×1,475
車両重量:2,020kg

日産 SAKURA
*諸元値はG
全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,655
車両重量:1,090kg
夢野忠則/Tadanori Yumeno
