編集前記 Vol.40 タイムマシンにおねがい

文・神尾 成

かなり以前からのことだが、70年~90年代のクルマやバイクの人気は衰えないどころか「旧車」としてブランド化している。

 自分たちにとっては子供の頃からの憧れのクルマであったり、“青春時代”の思い出のバイクだったりするので、同世代の人たちが、その頃の乗り物に今も愛情があるのは理解できるが、ひと回り以上離れた若い世代や海外からも日本の古いクルマ文化が支持されているのはなぜなのか。

 理由として一番に挙げられるのは漫画やアニメ、ゲームの影響だ。日本のコンテンツ産業に登場して世界に発信された「旧車」は、どれも名車として持ち上げられ、信じられないようなプレミアム価格で取り引きされている。特にJDM(Japanese domestic market)と呼ばれる80年代から90年代にかけての日本のクルマは『ワイルドスピード』や『グランツーリスモ』の影響も手伝って、その人気は留まることがない状況だ。しかしこれはクルマやバイクに限った話ではなかった。

 最近の子供たちは昭和と令和のTVヒーローを同列で観ているらしいのだ。また昭和のヒットソングを好んで聴く若者や、自分たちの世代が中心だった音楽ライブに若い世代の参加も増えてきた。さらに海外では、松原みきの『真夜中のドア』や、竹内まりやの『プラスティック・ラブ』など、40年以上前の日本の「シティーポップ」がもてはやされているという。現代は過去のものと新しいものの境界線がなくなってきたのである。

 これらの現象は、いうまでもなくインターネットによって引き起こされた。YouTubeを始めとする映像配信やオンラインゲーム、音楽のサブスクで過去の作品を発掘した人たちがSNSを介して新たなファンを生み出しているのだ。様々な分野でタイムレスが当たり前になった現代は、“好きな時代に行けるタイムマシン”ができたと言えるかもしれない。そしてこれからはAIが未来への道筋を創っていく可能性もある。とはいえ自分たちは今、子供の頃に夢見た時代を生きているのだろうか。時おりデジタルによる世の中の変容の仕方に不安を覚える。

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神尾 成/Sei Kamio

2007年11月からaheadに参画、企画全般を担当している。2010年から7年間編集長を務め、後進に席を譲ったが、2023年1月号より編集長に復帰。朝日新聞社のプレスライダー、ライコランドの開発室主任、神戸ユニコーンのカスタムバイクの企画などに携わってきた。1964年生まれ61歳。

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