6月26日のホンダの株主総会は荒れた。
EVシフトの失敗で2.5兆円規模の損失を出し、上場以来初の最終赤字。社長解任動議まで飛び出した。当然だろう。ところが三部敏宏社長は90.08%の賛成を得て続投が決まった。なぜか。
カギは議決権行使助言会社という存在だ。ISSやグラスルイスといった会社が「この役員に賛成」「この役員に反対」と推奨を出し、何千もの銘柄を抱える機関投資家の多くはその通りに投票する。自分で調べなくても「正しい手続きを踏んだ」という言い訳が立つからだ。問題は彼らの採点表がビジネスの実態とは無関係な領域に偏っていることである。彼らが重視するのは社外取締役の比率や議長の属性といった形式ばかり。ホンダは総会前に取締役を11人に減らし、社外を過半数とし、議長も社外にした。助言会社的には満点の答案だ。
僕は会見で三部氏に問うた。自動車ビジネスに詳しくない社外取締役が過半数を占める経営体制では数字だけの経営に陥るのではないか。答えは「いえ、これが教科書通りのガバナンスです」 そして示された再建策も、ハイブリッドを増やすという方針だけ。そのハイブリッドでどんなクルマを作り、ユーザーを喜ばせるのか、三部社長は最後まで語らなかった。
助言会社の欠陥はほかにもある。ISSには過去5期平均のROEが5%未満なら社長に反対、という基準がある。ところが投資の失敗は減損するまで数字に表れない。5年かけてEV損失の種をまいた三部氏は基準をクリアしてしまうのだ。一方、就任わずか1年ちょっとの日産エスピノーサ社長にも5年基準を適用し反対を推奨した。彼は就任以来、自分の言葉でクルマを語リ続け、スカイラインやGT-Rの再投入も約束している。しかし非推奨。勘のいい人なら大きな矛盾に気付くだろう。そう、人を見ず決算の数字だけで判断する会社が人に○×を付けている。これはもうどう考えてもポンコツ採点機である。
取材中、あるホンダ幹部が漏らした。「ホンダは死んだ」90.08%は三部社長を救ったかもしれないが、ホンダは救わない。救えるのは自腹を切ってクルマを購入するユーザーの支持だけである。

Goro Okazaki
