年末年始にお勧め ストリーミングで観たいクルマ・バイク映画 50～70年代編

映画のネット配信が当たり前になった今、もはやDVDを借りに行く手間さえなくなった。観たいと思った次の瞬間にはもう観られるのだ。

 「ぴあ」を片手に都内中の名画座を訪ねて回った時代が嘘のようだ。これは夢か。

 そこでここでは、配信サービスで観られる名作クルマ・バイク映画の一部を紹介したい。知ってはいても案外観てない映画ということで、今回は1970年代までの作品を取り上げる。

 50年代。マーロン・ブランドがバイカー集団のリーダー役を鮮烈に演じた「乱暴者（あばれもの）」。「ゴッド・ファーザー」の印象が強いブランドだが、若き日は〝怒れる若者〟のアイコンだったのだ。劇中のトライアンフや革ジャン姿は今もバイカーの聖典となっているほど。同じ流れで、永遠の青春スター、ジェームズ・ディーンの「理由なき反抗」も。断崖に向かってクルマを走らせるチキンレースの場面は伝説だ。言葉にならない若者の焦燥感を体現したディーンの表情一つ一つが輝かしい。それからご存じ「ローマの休日」。ベスパのイメージを決定付けた名作ロマンス。オードリー・ヘップバーン扮する王女が初めて経験する自由、その象徴がベスパなのだ。

 60年代に入ると、それまでのハリウッド的文法を否定した〝ニューシネマ〟が台頭する。実話を基に、クルマで逃避行を続ける犯罪者カップルの旅路を叙情的に描き、ハッピーエンドの欠片（かけら）もないラストで締めくくったロードムービーの傑作「俺たちに明日はない」。失われた理想のアメリカを求めて彷徨するヒッピーたちの姿を描いたバイク映画の名作「イージー・ライダー」もこの時代だ。

 映画が斜陽と言われていた70年代だが、映像に漂う独特の空気感はこの時代ならでは。アカデミー賞で作品賞など５部門に輝いた傑作「フレンチ・コネクション」は、主人公ポパイ刑事が鉄道高架下の道路を逆走しながら、列車に乗った犯罪者を猛追するカーチェイスがあまりに有名だ。撮影中に起きた衝突事故をそのまま使ったという、現在では不可能だろう場面の壮絶な迫力が見もの。一方「アメリカン・グラフィティ」は、古き良きアメリカの終焉を、若者たちのバカ騒ぎの一夜に重ねて綴った名作。クライマックスのドラッグレース場面をはじめ、クルマ好きで知られるジョージ・ルーカス監督のこだわりがあふれる。今もアメ車ファン、オールディーズファンを生み出している人気作だ。

 そんな同作の主要キャストで、後に巨匠となるロン・ハワードの初監督＆主演作「バニシング in TURBO」も佳作。親のロールスロイスで駆け落ちした政治家の娘と恋人が、賞金目当ての者たちと延々カーチェイスを繰り広げるだけの映画だが、奇妙な味がある。

 そう、クルマ映画のいいところは、とりあえずクルマが活躍すればOKな部分にもある。バート・レイノルズ主演のカーチェイスコメディ「トランザム7000」は好例で、主人公の駆るポンティアック・ファイアーバード・トランザムがアクセル全開でひた走る姿が実に痛快。名作や傑作ではないが、後々まで愛される作品になった。

 最後は「恐怖の報酬【オリジナル完全版】」。これは1953年のオリジナル版がまず名作なのだが、「フレンチ・コネクション」のウィリアム・フリードキン監督によるこのリメイク版も負けず劣らず。ジャングル奥地で起きた油田火災を消し止めるため、危険な消火用ニトログリセリンを積んだトラックを走らせる命知らずの男たち。日本では監督の意図しない短縮版で公開されたため長らく幻となっていたが、2018年にようやく本来の姿で公開された。欲望や裏切りの渦巻くドラマと緊迫感あふれるカーアクションを堪能したい。

 ネット配信は流動的で、これらの作品が必ず観られると保証はできないのだけど、気が向いたなら１つでも試してほしい。何十年も昔の映画だ。最近の映画とはテンポも違うし、古くさい部分もあるだろう。でも、クルマ好きなら知っているはずだ。古いクルマだけが持つ、性能では語れない魅力を。映画だって同じだ。その時代にしか作れない空気感、そしてCGなどない時代だからこそのカーアクションの迫力は今も色褪せない。過去の名車への憧れが現代のクルマ作りに活かされているように、過去の名作に触れることで、最新映画の中に隠されたオマージュや影響を感じ取ることもできる。映画やクルマを、現在という点だけではなく、歴史という線で観ることができるのだ。

ローマの休日

乱暴者（あばれもの）

俺たちに明日はない

イージー★ライダー

恐怖の報酬【オリジナル完全版】

アメリカン・グラフィティ

トランザム7000

バニシング IN TURBO