バリューと聞くと、お値打ち価格、もしくは安物のことのように感じるが、バリューという言葉は、本来、価値や対価を意味している。
自分が本当に求めているモノが何かに気付ければ、これまでとクルマやバイクの選び方が変わってくる。
125スクーターこそ真のアドベンチャーバイクである
文/写真・山下 剛
2年前の秋にひざ関節を粉砕骨折したとき、松葉杖をついて歩く身体でも、125㏄スクーターなら乗れるからと購入を考えたことがある。結局買わないうちに松葉杖が要らなくなったが、先だってホンダXR250Rの修理を頼んだバイクショップが出してくれた代車のアドレスV125を走らせたら、やはりめっぽう便利な乗り物だった。
10年落ちだからエンジンも少々へばってはいるものの、50㏄級の車体は軽いからぶんぶんと振り回せるし、狭い隙間にもすっと入っていける。前カゴとリアボックスをつけたら最強のシティランナーだ。思わず店主に価格を聞いたものの、購入に至らなかった理由のひとつは、ほかのバイクやクルマに乗らなくなる不安からだった。
SUZUKI バーグマンストリート125EX
エンジン:強制空冷・4サイクル・単気筒/SOHC・2バルブ
排気量:124㎤
装備重量:112kg(燃料・潤滑油・バッテリー液を含む総重量)
最高出力:6.1kW(8.3PS)/6,500rpm
最大トルク:10.0Nm(1.0kgm)/5,500rpm
燃料消費率:56.0km/L(クラス1/1名乗車時/WMTCモード)
さりとて、さほど距離は延ばせないし、都内のお使いバイクの域を出ないとは思うが、私には「バイクの排気量は、所有者の心のゆとりと反比例する」という持論がある。たとえば、原付二種で東京から青森まで走るには、焦ることのないおおらかな気持ちと忍耐力、さらにバイクを愛でる心やのんびり旅を楽しむ余裕が欠かせない。
バイクという乗り物は、車体が大きく重く、スピードが出るほど、ふとしたとき咄嗟に止まれない。しばし見惚れたい景色が視界に入った、うまそうな定食屋を見つけた、おもしろそうな脇道を見つけた、そんなときに大排気量車は止まれない。これは物理的な問題だけではない。バイクのスピードは、乗り手の心にも作用し、そういうタイミングを見つけても「ああー、まあいっか」と思ってしまって止まれなくなるのだ。
SUZUKI アヴェニス125
エンジン:強制空冷・4サイクル・単気筒/SOHC・2バルブ
排気量:124㎤
装備重量:107kg(燃料・潤滑油・バッテリー液を含む総重量)
最高出力:6.4kW(8.7PS)/6,750rpm
最大トルク:10.0Nm(1.0kgm)/5,500rpm
燃料消費率:54.3㎞/L(クラス1/1名乗車時/WMTCモード)
しかし125㏄の車体と速度なら心に働く慣性も小さいから、「おっ!」と思ったときにさっと止まれる。おかげで道草が増えて目的地はさらに遠くなったりするが、それこそが旅の醍醐味でもある。
これも私の持論だが、旅の移動速度は遅いほどいい。だから最高なのは徒歩、次いで自転車だ。しかし悲しいかな、それを可能にする体力も気力もないから、私はバイクで旅をする。だったら50㏄のほうがいいという理屈になるが、50㏄は時速30キロ規制と、二段階右折の義務があるので避けたい。
私にとって、旅は非日常ではなく、日常の延長にあるものだ。だからこそ、使い勝手のいい125㏄スクーターならそれができる。コンビニへの買い物ついでにちょっくら遠出してくっか、なんてふうに旅に出られる。
SUZUKI アドレス125
エンジン:強制空冷・4サイクル・単気筒/SOHC・2バルブ
排気量:124㎤
装備重量:105kg(燃料・潤滑油・バッテリー液を含む総重量)
最高出力:6.4kW(8.7PS)/6,750rpm
最大トルク:10.0Nm(1.0kgm)/5,500rpm
燃料消費率:53.8㎞/L(クラス1/1名乗車時/WMTCモード)
アドベンチャーバイクブームが衰えない今だからこそ、あまのじゃくは125㏄スクーターで冒険旅行に出かけたくなる。多くのバイク乗りにとって、125㏄スクーターはセカンド、あるいはサードバイクだが、ファーストバイク足り得る魅力を持っている。
所詮は趣味性のない実用バイク、ただのコミューターと侮るなかれ。ひたすらに遠乗りするだけで冒険できる125㏄スクーターには、そんな可能性と
Takeshi Yamashita
「クルマとバリュー」の続きは本誌で
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