日本自動車工業会が2021年度に実施した乗用車市場動向調査によると、クルマを買い替えた人が前のクルマに乗っていた期間は平均7.1年、24％は10年以上乗っているとのことで、クルマの保有年数は年々、長くなっている。
クルマを数年で乗り換えるならともかく、長期間にわたって、しかも気持ちよく乗り続けるためにはそれなりのメンテナンスが欠かせない。aheadの読者であれば、洗車やワックスがけ、タイヤや空気圧のチェック、定期的なオイル交換などはきっと当然のようにやっているだろう。
一方、車内は掃除機をかけたり、インパネ周りを拭いたり、エアコンのクリーナーを交換したりはしていても、ファブリックシートは放ったらかしということはないだろうか。長年使っていれば、ものすごく汚れているだろうと分かってはいても、つい後回しになってしまう。まさに私のことだ。
クルマの布製シートクリーナーはたくさん市販されているから、試したことがないわけではない。ただ私は昔から肌が弱く、洗剤選びに関しては慎重だ。洗剤の成分には界面活性剤が不可欠だが、その割合が高いとちょっと使っただけでもすぐに手ががさがさになる。高い洗浄力を謳った食器用洗剤はその成分を調べてみると、多いものでは3割以上を界面活性剤が占めている。私が普段使いしている食器用洗剤は9％だ。
界面活性剤には「浸透作用」「乳化作用」「分散作用」という3つの作用があり、それらが総合的に働いてさまざまな汚れを落とす。ざっくり簡単に言ってしまうと、本来混じり合わない水と油を馴染ませる役割を担っているのだが、界面活性剤の割合が高くなれば、洗浄力が高まる反面、肌荒れの原因にもなるというわけだ。
クルマの布製シートクリーナーは肌へのダメージが少ない非イオン系の界面活性剤が使われているものが多いので、それほど神経質になる必要はないと思うが、私の場合は大事をとってこれまで積極的に使ってこなかった。
そんな私がこれならいいかもと思ったのが、アメリカのChemDry（ケムドライ）というメーカーのファブリック用洗剤「Stain Extinguisher（ステイン・エクスティングイッシャー）」だ。
ケムドライはオフィスや住宅のカーペットクリーニングのフランチャイズを展開するアメリカの大手企業。彼らの使用している洗剤はザ・ナチュラル™という洗浄液を核としている。ザ・ナチュラル™は重曹（炭酸ナトリウム）をベースとした洗浄液で、界面活性剤はいっさい含まれていない。そして界面活性剤の代わりをするのは「泡（炭酸）」だ。泡の力で汚れを浮かし、粒子を分解して汚れを取り除く。
1970年代初頭にユタ州の大学院に通いながら小さなカーペットのクリーニング会社で働いていた若者、ロバート・ハリス氏がのちのケムドライの創業者である。ある時、飛行機の中でサラダドレッシングをこぼしてしまったハリス氏のネクタイを、客室乗務員が炭酸水を使って、その汚れを落としてくれたことがインスピレーションになったという。
100％無毒であるゆえ、小さな子供が直接触れても、ペットが舐めるようなことがあっても大丈夫という安全性と安心感は大きい。メリットは他にもあって、従来の洗剤を使ったスチームクリーナーでは大量の洗剤を使った分だけ、大量の水で洗剤を取り除く必要があるが、ケムドライでは水の使用量は従来の8割減で済むという。それは汚水の量が減ることでもあり、環境への負荷も少ない。おまけに乾燥までの時間も短くなり、なかなかいいことづくめなのである。
ちなみに近年は消費者のグリーンウォッシングに対する目も厳しいが、ザ・ナチュラル™はアメリカのFDAのGRAS認証（＊）を取得した成分のみで作られている。
説明が長くなったが、ケムドライのカーペットクリーニングは日本でもすでに展開されており、最近、新規事業としてクルマのファブリッククリーニングへの展開も始まった。今後、施工店が増えれば、専用の機械を用いたクリーニングを施工店にお願いすることも可能になる。
またザ・ナチュラル™をベースとした「ステイン・エクスティングイッシャー」（こちらには0.4％の界面活性剤が含まれている）を購入して、自分でシートクリーニングするのもいいだろう。シートに直接吹き付けて、拭き取るだけで、簡単に、そしてびっくりするくらい汚れが取れる。安全なうえに自宅のソファなど繊維製品なら何にでも使える経済性もこの製品のいいところだ。
ケムドライ
営業時間：平日9:30～17:00（祝日年末年始を除く）
