ハーレーのスポーツスターがフルモデルチェンジした。
スポーツ スターの年を超える歴史において、フレームやエンジンの変更はこれまでも幾度となくおこなわれてきたが、今回は変わらず踏襲してきた空冷度Vツインとついに決別。新開発の水冷60度Vツインへとパワーユニットを丸ごと交換してシャシーも新作した。我々ファンにとっても、ハーレーダビッドソン社にとっても、これは世紀の大変身と言っていいだろう。将来、振り返ったときに、これはハーレーにとって大きなターニングポイントだったと言えるはずだ。例える ならポルシェが水冷化したとき、いや、エンジンが剥き出しでブランドの象徴ともなってきたVツインの大変革であるから、それ以上の出来事だと思う。スポーツスターは今、大きな転換期、岐路に立っている。
「ハーレー乗りではなく、スポーツスター乗りです」オーナーたちを取材すると、よく耳にする言葉だ。ハーレーダビッドソンでありながら、スポーツスターはひとつのブランドとして確立されている。 スポーツスターが誕生したのは1957年。レースや市場を席巻 していた英国車勢に対抗するため、当時最新式であったOHV方式の高出力エンジンを積み、その名の通りスポーティなモデルとして発売された。大陸の真っ直ぐに続く道をゆったりと走れる重厚なハーレーらしいビッグツインシリーズがある一方で、軽快感や旋回力を持つスポーツスターは、明確なキャラクター分けがされ、互いに価値 を高め合ってきた。
長らく883ccと1200ccの 2本立てでラインアップを組み、ビッグツインへステップアップする前のエントリーモデルとしての役割を担いつつも、先述の通り、スポーツスターにしか興味がないという熱烈なファンを世界中に生み出した。
新型は、「スポーツスターS」と名付けられ、心の準備がされないまま出現した。しかし、多くのファンは新型の登場よりも、空冷スポーツスターの継続を強く望んでいた。
空冷モデルの人気は高くなり、入手困難なことから高年式車の中古車価格が新車のプライスを上回る事態にも発展している。他社の ロングセラーたちが生産終了となっていく中で、我々の愛するスポーツスターも同じ運命をたどるのかとファンは懸念している。元来の車体構成が現行車とは思えぬほどにオーソドックスなため、存在感が際立つ。カラーグラフィックも70年代のものを再現するなど、これまで正真正銘のクラシックが 新車で購入できた。
「来年も空冷スポーツスターは買えるのか?」
いまも動向は明言されておらず、ここ数年はそんな話題で持ちきりだ。替えがきかない、圧倒的な人気を誇るシリーズであることが改めてわかる。
そこにきて、既存のユーザーらが戸惑うほどの強烈なインパクトで「スポーツスターS」がデビューした。まったく新しい顔、フォルムだが、誰が見てもハーレーの新型とわかるデザインだ。アップマフラーや短いシートカウルはフラットトラックレーサーX R750のイメージを踏襲し、太いタイヤはフォーティーエイトやファットボーイを感じさせる。オーバルデザインのヘッドライトはファットボブ譲りだ。
ハーレーダビッドソン スポーツスターS
エンジン:水冷DOHC4バルブ60°V型2気筒
総排気量:1,252cc
最高出力:未発表 最大トルク:125Nm/6,000rpm
車両重量:228kg
そしていま、初ライド。低い操舵軸から車体がすんなりと寝て、驚くほどにハンドリングが軽快。エンジンは全域で力強く、日欧のライバルらにも負けないトルクフルさ。加速が強烈で、小回りが効くイージーな操作性は従来のスポーツスターに通ずる。
昔ながらの空冷エンジンがいいに決まっていると、既存モデルにこだわるのももちろん悪くない。しかし、新型に魅了された新規ファンがすでに多く存在しているし、こうして接する機会が増えるたびに新たな支持者を獲得していくのは間違いないだろう。
ふと気付いた。初代のデビュー当時も、スポーティなハーレーにきっとファンは戸惑ったはずだ。時代は繰り返されている。スポーツスターのコンセプトは継承されていたのだ。挑戦し続けるハーレーダビッドソンを讃えたい。
初代1957年/XL SPORTSTER
1200カスタム/XL1200C
アイアン883/XL883N
アイアン1200/XL1200NS
スーパーロー/XL883L
フォーティーエイト/XL1200X
フォーティーエイトスペシャル/XL1200XS
ロードスター/XL1200CX
Takao Aoki