趣味の乗り物をひと通り嗜んだ年齢になると、クルマやバイク選びで迷子になることがある。
経験や趣向、使い方によって様々な選択肢があるハズだ。
世間体や建前があるのはわかる。しかし、自分の気持ちに正直に選べばこれからのクルマ・バイクライフに少し光が見えてくるのではないだろうか。
何でもイイは、何でも良くない!
「なあ小沢さ、なんかいいクルマないの?」
自動車ジャーナリストという職業がら、飲みに行くとたまに同級生から言われるこのセリフ。何度聞いたかわからないが、さほど本気じゃない。言葉は全然切羽詰まってない。「また今度飲みに行きますか」程度の切迫感。
既に自分なりのクルマ選びは出来てるのだと思う。同年代は普通にクルマ好きだし、年も経て自分なりの選び方はわかっているはず。国産車はもちろんBMWやメルセデスなど、輸入車に対する抵抗感もほとんどないだろう。
本音はきっとこうだ。50歳も過ぎて今まで自分が気に留めてなかった、灯台もと暗しみたいなクルマに乗りたいのだ。いい奥さんがいながら、タマに飲みに行ける若くてキレイな女性の飲み友達が欲しい! 程度の贅沢な願望。
そんな都合の良いクルマあるわけない! と冷や水を浴びせてやりたくもなるが、今回は勝手にそういうクルマ選びを考えてみた。
ただし、こちらからも条件を出したい。それは「自分のクルマ選びの条件を1つは外すこと」。俺は「国産しか乗らない」「ヤナセしかダメ」「ウチは駐車場が狭いから」みたいな決めごとを外さないと結局今までと同じ物を選んでしまう。私たちがスタイリストに服を選んでもらうようなものだ。プロである彼らは「今までの自分だったら選ばない」服を選んでくる。結果、違う世界がやってくるのだ。
第一候補は小沢が勝手に「大衆スーパーカー」と思っているマツダだ。既に選んでる人には申し訳ないが、おそらくトヨタやメルセデスに乗ってる人は未だ「マツダなんて」と思い込んでる人もいるはず。だが、ご存知、今のマツダはデザインと内装クオリティが凄い。
MAZDA CX-5
*諸元値はXD(2WD)
エンジン:水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ
総排気量:2,188cc
最高出力:147kW(200ps)/4,000rpm
最大トル ク:450Nm(45.9kgm)/2,000rpm
具体例では乗りやすい全長4.5mSUVのCX-5だ。ぶっちゃけ倍価格のドイツプレミアム並みの存在感がある。エッジ感と塊感のあるデザインも凄いし、独自の2.2ℓディーゼルのパワーも凄い。ガソリン車しか乗ったことの無い人ならば、毎日その力強さに驚くはずだ。こんなに楽しくて、運転楽なの? と。オマケに燃費が本当にいい。これはマツダではないが、先日某SUVでガソリンとディーゼルの乗り比べをしたら燃料代がほぼ半額で済んだ。ガソリンは1万円かかるところをディーゼル仕様は5,000円台で済むのだ。いろんな意味で、海外プレミアムの半額程度で済むのが国産プレミアムだと言える。
もう1台マツダではコンパクトハッチのマツダ3が白眉だ。このクルマは本当に大衆スーパーカーだと思う。オオゲサに言うと「4人乗れるフェラーリ」。それくらい美しいし、特にリアの曇りの無い富士山のような絶壁感は素晴らしい。マジメな話、私は街中でマツダ3を見る度に、カッコいいクルマだなぁ…と本気で思う。ついでに簡単なカスタムも似合う。先日見かけたマツダ3は黒ボディ、黒ホイールで、メッキ部分もブラックアウトしていた。相当ヤバいレベルでカッコよかった。
MAZDA 3
*諸元値は20S L Package(2WD)
エンジン:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量:1,997cc 最高出力:115kW(156ps)/6,000rpm
最大トルク:199Nm(20.3kgm)/4,000rpm
2つ目はフランス系のプジョー&シトロエン、具体例としてはこれまたコンパクトカーのプジョー208や2008なんていいと思う。今までこの全長4mちょいの欧州車はVWがオススメだった。ぶっちゃけVWポロや兄貴分ゴルフ。あるいはその派生SUVだ。
しかし今はプジョー&シトロエン系の方が全般的にクオリティが高い。具体的には内装と走りだ。まずインテリアは全然プジョーの方が上。全面的にソフトマテリアルが使われているし、部分的にはカーボン調パネルもあって、どちらもクオリティが高い。ついでにデザインもアーティスティックで面白い。フローティング系のデジタルメーターが見にくいという人もいるが私は気にならない。
最新プジョーは走りもいい。ドイツ車ほど固くなく、しっかりさの中にあるしなやかさが長距離乗ると本当に助かるし、癒される。
PEUGEOT 208
エンジン:ターボチャージャー付直列3気筒DOHC
総排気量:1,199cc
最高出力:74kW(100ps)/5,500rpm
最大トルク:205Nm/1,750rpm
燃料消費率:17.9㎞/ℓ(WLTCモード)
PEUGEOT 2008
エンジン:ターボチャージャー付直列3気筒DOHC
総排気量:1,199cc
最高出力:96kW(130ps)/5,500rpm
最大トルク:230Nm/1,750rpm
燃料消費率:17.1㎞/ℓ(WLTCモード)
それにシトロエンも面白い。これまた特にコンパクト系でSUVのC3エアクロスのキャラクター性は実に新しい。ある意味走るビバンダムみたいなテイストがあって、このキュートさとオシャレの融合は今までにないレベルなんじゃないだろうかと思う。内装も面白くて、板チョコのようなシートは他社には作れない。見てくれだけじゃなく、実際の座り心地もましゅまろテイストだから楽しい。
CITROËN C3 AIRCROSS SUV
エンジン:ターボチャージャー付直列3気筒DOHC
総排気量:1,199cc
最高出力:81kW(110ps)/5,500rpm
最大トルク:205Nm/1,750rpm
燃料消費率:14.7㎞/ℓ(WLTCモード)
3つ目はスバルである。具体的にはまず新型レヴォーグだが、コイツは基本的なプラットフォームの刷新からくる基本性能の高さ、いわゆる走る・曲がる・止まるの総合力にもビックリするが、それ以上に運転支援のアイサイトとアイサイトXにも驚かされる。
マジメな話、運転ヘタな伴侶を持つ人、もしくは週末平気で300キロぐらい黙って走る長距離ドライブが趣味の人は、何も言わずにレヴォーグを買うべきだと思う。本当にこのクルマは長距離がラクだ。ハンドルを握って前さえ向いていれば平気で数100キロ走れてしまい、長時間ドライブ特有の神経の疲れが減る。
SUBARU LEVORG
エンジン:水平対向4気筒 1.8L DOHC16バルブ デュアルAVCS 直噴ターボ”DIT”
総排気量:1,795cc 最高出力:130kW(177ps)/5,200-5,600rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1,600-3,600rpm
目が悪い人、年配で視界を含めて疲れやすい人にも絶対にオススメ。「これからは自動運転の時代」と騒ぐのもいいが、安全は自分の腕や足は使わなくとも、目で確認する時代が続く。というか逆にクルマの中で運転手が寝れるようになったとして、本当にそんなことしますか? 実は走る方向ぐらい肉眼で見ないと安心できないのでは? 特に昭和の生まれは。現時点でレヴォーグ&アイサイトの運転支援レベルはメルセデスを超えて世界イチレベルなので本当にいい。しかも全自動ができたとしても間違いなく1台1,000万円を越えるが、レヴォーグなら400万円で買える。ついでにいうとレヴォーグの拡大版である新型レガシィアウトバックも間違いなくいいので、サイズがOKならぜひ勧めたい。
SUBARU LEGACY OUTOBACK
エンジン:水平対向4気筒 1.8L DOHC16バルブ デュアルAVCS 直噴ターボ”DIT”
総排気量:1,795cc 最高出力:130kW(177ps)/5,200-5,600rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1,600-3,600rpm
4つ目、最後のオススメであり一般人にはなかなか買いづらい日本の名車がトヨタ・ハイエースだ。正直、業務用ムード全開で全然カッコよくはない。一部フロアで剛性を稼ぐキャブオーバーレイアウトで、床は高いし、エンジンも運転席下に来るので静粛性にも限界がある。ただ、乗用ワゴンのGLグレードならばかなりいいし、なにより絶対的に室内が広くて楽しい。本当にこれに釣りなどのアウトドア趣味の人が荷物満載、時にベッドを積んでアウトドアライフを送るには最高だ。
その気になればモトクロスバイクを積んで2人旅にもいけるし、自由度が広がる。小沢の場合、これのキャンピングカー仕様を本気で欲しいと思っているが、使いこなせれば人生が変わる。最新型なら追従オートクルーズ機能は無しとしても、被害軽減ブレーキぐらいは付く。オマケにセコイ話、ディーゼル仕様ならば3年乗ってもリセール7割という話があるくらい、絶対的に残存価値が高い。いろんな意味で価値あるクルマなのだ。
TOYOTA HIACE
*諸元値はスーパーGL ロング・ワイド/2WD/2700ガソリン
エンジン:直列4気筒 総排気量:2,693cc
最高出力:118kW(160ps)/5,200rpm
最大トルク:243Nm(24.8kgm)/4,000rpm
昔ほどではないが、クルマは人生であり、人生の快適性は変えられると私は思っている。ただし、同時に趣味や自分の生き方、価値観もチューニングしなければいけないと思う。いつまでも同じようなクルマに乗っていると、人生も同じように終わってしまうのではないだろうか。
「何でもイイは、何でも良くない!」の続きは本誌で
MT不要論 石井昌道
なぜ老舗ブランドに魅かれるのか 伊丹孝裕
何でもイイは、何でも良くない! 小沢コージ
EVシフトの真実 森口将之
写真・長谷川徹/渕本智信/山岡和正/神谷朋公