岡崎五朗のクルマでいきたい Vol.197 モビリティショーで光った4台

文・岡崎五朗

東京モーターショーから「ジャパンモビリティショー(JMS)」へと名称とコンセプトを一新したのが2023年。

 今回2度目の開催となった「JMS2025」(10月30日〜11月9日)の入場者数は、東ホール工事や最終日の雨など不利な条件があったにもかかわらず目標の100万人を突破した。前回(2023年)の111万2000人には及ばなかったが、100万人突破は、オワコンと言われたモーターショーのコンセプトを、「モビリティ」へと転換した日本自動車工業会の戦略が一定の成功を収めた証である。

 実際、過去最多の522企業・団体が参加し、未来のモビリティを示唆する「Tokyo Future Tour 2035」には31万人、往年の名車やレーシングカーを展示する「Mobility Culture Program」には34万人超が来場したことは、モーターショーからモビリティショーへの脱皮が成功裏に進んだことを示している。

 実は世界の主要モーターショーも、大手メーカーの出展辞退や集客力低下に悩み、フランクフルト(IAA)はミュンヘンへ移り「IAA Mobility」へと変貌した。プロ向けと一般客向けを分離し、一般客向けは市内で無料開催という形式になっている。そういう意味で、JMSの「モビリティ」への転換は、世界の潮流と問題意識を共有する危機感から生まれた必然の戦略なのである。

 とはいえ、この種のイベントの主役は「クルマ」である。ロケットや航空機、カーボンニュートラル燃料への取り組み、様々な新モビリティなど、自動車メーカーは競い合うように未来への具体的な提案を打ち出していたが、人だかりができていたのはやはり新型車やコンセプトカーであり、モビリティショーと言いつつも、来場する人たちのお目当てはやはりクルマなのだと感じた。前回のJMSではモビリティに軸足を移しすぎた結果、「クルマ系展示」が弱かったという反省があったという。そこで各メーカーともにモーターショーの華であるコンセプトカーにも力を入れていた。質と量において際立っていたのはトヨタだったが、他メーカーもキラリと光るものを展示していた。ということで、本誌「ahead OVER50」では個人的に気になった4台を紹介している。

Goro Okazaki

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。

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