次世代ジャーナリストがいく 第7回 バンライフの夢を身近にするCarstay

文・華音 写真提供・Carstay株式会社(※)

旅好きな人にとってキャンピングカーは憧れ。

とはいえ実際に購入して走り出すにはハードルが高いことも事実。そのハードルを下げ、キャンピングカーのあるライフスタイルをより身近なものにしてくれるのがCarstayの展開するさまざまなサービスだ。

予約はアプリ、でも受け渡しはかならず有人

 爽やかな朝、波の音と共に目を覚まし、水平線から昇る太陽を眺めながら、1日の始まりに胸を躍らせる。そして、夜には満天の星空に包まれて眠りにつく。心地よい風が頬をなで、夜の静けさに身を委ねるーーそんな1日に憧れを抱いたことはないだろうか。

 これが自然の中でキャンピングカーを楽しむバンライフの魅力だ。そして、その夢を実現するためのツールが「Carstay(カーステイ)」である。

 Carstayは、キャンピングカーや車中泊スポットを借りたいときに誰でも借りられて、貸したいときに貸し出しができ、初心者からベテランまで誰でも簡単にバンライフを始めることができるサービスだ。

 通常、キャンピングカーを借りるとなると、特殊な免許が必要なのではないか、準備はどれだけ必要なのだろうか、と敷居の高さを感じるかもしれない。しかし、Carstayでは一部の車両を除いて普通免許で運転ができ、初期費用や月額費用も一切かからない。手ぶらでも借りられて、アプリひとつで簡単に手続きできるのが特徴だ。また、キャンピングカーを所有しているが、たまにしか使わないオーナーにとっても、Carstayは自分のクルマを人に貸し出すことで駐車場などの維持費を軽減し、使っていない間に有効活用できるというメリットがある。

 さらに、受け渡しを必ず有人で行う点も特徴だ。貸し借りを無人で行うカーシェアが多い中で、Carstayはオーナーから直接説明を受けられる点を重視している。これにより、運転のコツやキャンピングカーの楽しみ方、おすすめの観光スポットなどを教えてもらうことができ、初めての利用でも安心だ。まるでオーナーがコンシェルジュのようになるという。借りる方も貸す方も互いの顔が見えることで安心感が生まれ、オーナーによってはETCカードの貸し出しも行っており、初心者にとっては借りるハードルがさらに下がるのも嬉しい。

〝旅もオリジナル〟な時代へ

 借りられるキャンピングカーも多種多様で、軽自動車を改造して作られたものから、DJブースとミラーボールのついたハイエース、贅沢な貸切サウナ体験ができるサウナカーやサウナテントまで揃っている。海、山、湖などを水風呂として組み合わせてサウナを楽しむことができ、無限大の組み合わせで“ととのい”体験ができるのも魅力の1つだ。

 さらに、キャンピングカーの旅では、何かと入場制限されることが多いペットとの旅行でも、車内やキャンプ場で食事や宿泊が完結するため、大切なペットとずっと一緒に過ごすことができるのはなんてドッグフレンドリー! 遠出をするからワンちゃんを預ける、という心配もなくなる。安価な車両を含めた価格帯の広さもCarstayの特徴で、まさに万人の味方と言える。また、チェックインやチェックアウトの時間に縛られない自由度の高さや、ホテルとレンタカーを借りるよりも2~3割ほど安く、人数が多ければ多いほど経済的になるといったメリットも、多くの人々にキャンピングカーを選ばせる理由となっている。

 現在、Carstayは約500台のキャンピングカーが登録されている国内最大のプラットフォームだ。今年で4年目になるこのサービスは、日本で自由で豊かな旅をしてほしいという思いから生まれた。Carstayを運営するスタートアップ、Carstay株式会社の宮下晃樹氏は、「サービス開始当初は海外のお客様に日本の良さを知ってもらいたくて、キャンピングカーで日本全国を旅してもらおうという趣旨で始めたんです。でもコロナ禍が訪れたことで、まずは国内のお客様にフォーカスして展開することにしました。最近はインバウンドのお客様が復活して嬉しいですね」と語る。

 宮下氏によると、かつては渋谷や浅草など有名な観光地だけが旅の主流だったが、今では海外からの旅行者のニーズも多様化しており、旅行者は自分だけのオリジナルな旅を求めるようになっているという。そんな“オリジナルな旅”のニーズとキャンピングカーでの自由な移動と滞在が非常にマッチしていることから、国内外問わずリピート客が後を絶たない。キャンピングカーによる自由な旅のおかげで、日本全国の魅力的な場所が多くの旅行者に発見されているのだ。Carstayの提供する自由な旅のスタイルは、まさに新しい時代の旅の形を象徴している。

彼我の差がある日本と海外の休暇

 なんといっても驚くのは、欧米の人たち、特にフランスとオーストラリアのお客様が、キャンピングカーを長期間借りることだ。連続80日借りて日本1周したオーストラリア人がいるほど。そこでロンドンに3年住んだ私が思い出すのは、日本と世界の休暇に対する概念と会社の受け入れ体制の違いだ。日本では通常1~3泊ぐらいが一般的だが、海外では「バケーションといえばウッキウキの1ヵ月!」が基本だ。

 私がロンドンに住んでいた時に受けたカルチャーショックのひとつが、まさにこの長期休暇の概念。例えばスキー旅行だ。パッケージツアーも2週間が一般的で、どんなに短くても5日間。日本のように2泊3日のスキー旅行はヨーロッパではほとんど見られない。

 他国ではどうなのか。フランスでは年間5週間分の有給休暇が法律で保証されており、夏に1ヵ月近くのバケーションを取る人が多い。アメリカでは有給休暇の日数は企業ごとに異なり、2週間から始まる。イタリアには8週間もの有給休暇があり、消化できなかった休暇は翌年に持ち越せる制度がある。また、昼休みが2時間もあることは日本では考えられないほどの贅沢だ。さらに、海外では若者が大学進学や就職をする前に1年間休暇を取って世界を旅したり、ボランティア活動に従事するギャップイヤー制度も広く普及している。これは、私がヨーロッパを旅行していた頃に、ギャップイヤー制度を使ってオーロラを見に来た家族から教えてもらったことだ。その家族は犬を連れて1ヵ月の休暇をとってヨーロッパ1周もしていた。私が1年間留学していたニュージーランドでも、70歳で結婚した老夫婦のホストファミリーとイケメン犬メルトンを連れて、よく2週間の休暇をキャンピングカーで過ごした。海外では主流な「ボディボード」で遊んだり、ビーチや家のプールで日光浴、森で森林浴。そしてダイオウイカのホルマリン漬けを見に行ったり、遊んでいた海でサメが出てビーチが悲鳴で溢れたことは今でも記憶に新しい。海外ではお日様をたくさん浴びる遊びが好まれる。

 こうして海外では休暇はリフレッシュのために重要視されており、家族や友人との時間を大切にするのが当たり前。

 一方、日本は仕事優先の文化が強く、長期休暇を取ることが難しい傾向にある。こうした違いが、外国人と日本人のCarstayの利用スタイルにも影響を与えているのだろう。


宮下 晃樹/Koki Miyashita

1992年生まれ。ロシア出身。アメリカ留学・バックパック後、2014年 慶應義塾大学経済学部卒業。20歳で公認会計士試験合格。2014年 Deloitte Japanに入社し、IPO支援業務に従事。2016年 6月退職・独立し、NPO法人SAMURAI MEETUPSを創業、Airbnbに登録し、累計1200人の訪日外国人をガイドし、成田国際空港・小田急と提携しながら、地域のインバウンド誘致に取り組む。地域観光の課題は、2次交通の未整備・宿不足であると実感したことから、2018年6月にCarstay株式会社を起業した。

手軽でも妥協しない「SAny.」

 また同社にはもう1つ事業がある。それは、都心からもそう遠くないキャンピングカーの工場・店舗である「バンライフガレージ MobiLab」だ。ここではハイエースをキャンピングカーに改装し、オリジナルブランド「SAny.」を製造・販売している。「SAny.」の由来は、「Stay Anywhere, Anytime. 誰もが好きな時に、好きな場所で、好きな人と過ごせる世界を作る」の頭文字を取ったものだ。

 初めてのキャンピングカー選びは難しいものだ。最近では、新車の価格が1,000万円以上になり、納期も2~3年待ちが当たり前。しかし、「SAny.」ならば3~6ヵ月で納車され、価格帯も195万円からと手頃で、多くのモデルが500万円前後で購入可能だ。納期や価格の手頃さを維持しながらも、顧客の求める水準以上のデザインを提供し、夢のキャンピングカーを諦めずに手に入れてもらえるよう、丁寧に作り込んでいる。内装のギミックもアースカラーを中心としたバリエーションから選べ、シートの色も何十種類から選べる。

 宮下氏は次のように語る。「安い中古車を仕方なく買うのではなく、手頃さを保ちながらも、デザインやおしゃれさに妥協せず、特別なあなただけの1台を作ることをコンセプトにしています。もともとキャンピングカーをオーダーメードで作っていた技術が生かされていますね」

 SAny.のようなサービスが普及することで、日本人の旅行スタイルも変わりつつあるように思う。キャンピングカーを使えば、時間に縛られず自由な旅ができるため、長期間の旅行もより現実的になるだろう。さらに、リモートワークが増えたことにより、オンラインで仕事が完結する人にはもってこいだ。週末だけの小旅行から、連休を利用した1週間の旅、さらには1ヵ月以上の長期旅行まで、キャンピングカーを使ったバンライフの可能性は無限大だ。家族連れや友人同士の旅行だけでなく、一人旅でもキャンピングカーは非常に便利である。自由に移動できることで、予定に縛られず、自分だけのペースで旅を楽しめるのだ。

 爽やかな朝に始まり、満天の星空の下で終わる1日。自然の中で自由に過ごし、心からリラックスできる時間を提供する。その夢を実現するためにCarstayがある。日本は宝だ。その美しさや文化に触れる機会を多くの日本の人たちに、そして世界中の人たちに、もっと広がっていくことを願っている。

Carstay

日本全国でキャンピングカーのカーシェア、レンタル・RVパーク含む車中泊スポット・観光体験を簡単に予約できるサービスを展開するスタートアップ。
[キャンピングカーレンタル・カーシェア予約はCarstay]
https://carstay.jp/

[アプリ]


華音/Kanon

1993年生まれ。石川県出身。動画クリエイター。高校生の時にニュージーランドへ留学、高校卒業後アメリカの大学に進学。その後イギリスを拠点に海外情報や英語学習のノウハウを発信するYouTubeを開設。37万人近いチャンネル登録者数を誇る人気YouTuber。もともとクルマ好きであることから自動車のYouTubeチャンネルも併設し、自動車ジャーナリストを目指して活動中。
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