岡崎五朗のクルマでいきたい vol.128 自動運転法規制で日本が世界に先駆ける!?

文・岡崎五朗

 前号では、日本が世界に先駆けて実用化する見込みの「自動運転レベル3」について書いた。レベル3とは、一定の条件を満たせばドライバーはスマホを見たり本を読んだりといった「セカンドタスク」を可能にする技術。

 クルマ側が手に負えないと判断したときはドライバーに運転を委ねてくるため即座に対応する準備をしておく必要はあるが(だから眠るのはNG)、それでも運転から解放されるのは大きな進化だ。ちなみに、日産のプロパイロット2.0はハンズオフ(手放し運転)はできるが、ドライバーは常に運転に意識を向けていなければならないため、高度に進化したレベル2という分類になる。

 レベル3だが、まだまだ誤解が多い。どこで仕入れたか知らないが、とあるワイドショーの有名なMCが「レベル3のクルマは全世界で普及が始まっているが、日本は国交省や警察庁、経産省の妨害工作でなかなか普及しない」と、とんでもないデマを発信していた。実際のところ、レベル3は世界中のどこの国もメーカーも実用化していない。また、日本は国家レベルでレベル3を強力に推進している。事実、世界初のレベル3は日本が実現する可能性が高い。

 レベル3の実現には法制度の整備が必須だが、日本の国会はそれをすでに承認し4月には改正保安基準が施行、7月には実証実験が行われる。それを受け、レベル3の市販化を目論んでいるのがホンダだ。開発陣はやる気満々。八郷社長も前向きなコメントを出していることから、おそらく新型レジェンドへの採用をかなり真剣に検討しているはずだ。とはいえ、一部の経営陣には依然としてレベル3に手を出すことのリスクを懸念する声もある模様。

 現時点でもっとも高度なレベル2を実用化している日産も会社としてはレベル3を積極的に推進する姿勢だが、開発の最前線からは時期尚早という声が漏れ伝わってくる。現在の技術では不測の事態に100%は対応できない。ならば欲張らずレベル2のさらなる高度化で事故を減らす方が現実的だ、という理由だ。果たしてホンダはどんな決断をしてくるのか。そして仮にレベル3が発売された場合、どれほどの実力をもっているのか。興味は尽きない。


VOLKSWAGEN T-CROSS
フォルクスワーゲン・T-Cross

大容量のVW最小SUV

 ポロのプラットフォームを使ってつくったフォルクスワーゲン最小のSUVがTクロスだ。兄貴分のティグアンとよく似たエクステリアデザインは、いかにもフォルクスワーゲンらしい硬質感と清潔感を強調したもの。座ると自然にスッと背筋が伸びるシートやスイッチ類の上質なタッチ、握り心地のいいステアリングホイールなど、インテリアの仕上げにもフォルクスワーゲンの長所がきっちりと表現されている。これでエントリーモデルが300万円を切っているのは魅力だ。

 全長4,115mm、全幅1,760mmというコンパクトなボディに広々した後席や広大なラゲッジスペースを備えているのもTクロスの持ち味だ。コンパクトなモデルにも豊かなユーティリティーを求めるユーザーが多い日本において、この部分は大きなアドバンテージになるだろう。実際、インポーターも日本車からの乗り換え組に期待を寄せている。

 ポロですでに高い評価を獲得している1ℓ3気筒ターボは、排気量やシリンダー数から想像するより遙かにスムースかつ力強い走りを演じてくれる。山道の上り勾配や高速道路、フル乗車&フル積載を含め、パワー不足を感じることはまずないだろう。7速DCTの小気味よい変速も気持ちがいい。

 ハンドリングはキビキビしている。ステアリングを切れば切っただけ遅れなくノーズが自在に動くため、曲がりくねったワインディングロードでの振る舞いにはスポーティーという表現が使えるほど。一方、乗り心地には問題ありと報告しておく。とくに18インチタイヤを履く上級グレードの場合、荒れた路面での突き上げはかなり強めに出るし、良路でも関節が突っ張ったような感触を伝えてくる。16インチタイヤだと突き上げは小さくなるが、それでも関節の固さ感は残る。スポーティー狙いなのはわかるが、日常での快適性はもっと引き上げて欲しい。この部分さえ改善されればTクロスはさらに魅力的な存在になる。

フォルクスワーゲン・T-Cross

車両本体価格:2,999,000円~(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,115×1,760×1,580
エンジン:直列3気筒DOHCインタークーラー付ターボ(4バルブ)
総排気量:999cc 乗車定員:5名
車両重量:1,270kg
最高出力:85kW(116ps)/5,000~5,500rpm
最大トルク:200Nm(20.4kgm)/2,000~3,500rpm
燃費:16.9㎞/ℓ(WLTCモード)
駆動方式:FF

BMW 2SERIES GRAN COUPE
BMW・2シリーズ グラン クーペ

2シリーズに4ドアクーペ登場

 BMWがまたしてもブランニューモデルを追加してきた。2シリーズグランクーペだ。

 2シリーズといえば、2列シートミニバンのアクティブツアラーと3列シートミニバンのグランツアラーという2種類のFFモデルに加え、FRプラットフォームを使ったクーペとその高性能モデルのM2、カブリオレがある。ファミリー然としたFF系とストイックなFR系というなかなか複雑かつ味わい深いラインアップである。

 そこに加わったグランクーペは中庸狙いのモデルとなる。デザインはご覧の通りなかなかスタイリッシュ。ルーフがもう少し低くてキャビンがペッタンコだともっとカッコいいのだが、そこは4ドアモデルとしてリアパッセンジャーにも気を配った結果だろう。少なくともアクティブツアラーよりは100倍カッコいいし、ボテッとした感じが否めない1シリーズよりもBMWらしいスポーティーで都会的なイメージに仕上がっている。大きくなった3シリーズの代わりとして悪くないなと思った人もいるはずだ。

 実際、そのアイディアはアリだと思う。プラットフォームは1シリーズと共通。つまりエンジン横置きのFFだが、ドライブフィールにはきちんとBMW味がする。主に試乗したのは高性能エンジンを積んだ4WDモデルのM235iだったが、小気味よいステアリングレスポンスといい、濃厚なステアリングインフォメーションといい、正確なライントレース性といいお見事のひと言。共通のプラットフォームを使うMINIクロスオーバーと比較して、快適かつトルクステアをほぼ感じさせないナチュラルなフィーリングも印象的だった。FF版の220dもなかなかよく走ったので、日本で販売される218iにも期待できそうだ。全長4,540mm、全幅1,800mmという手頃なサイズと相まって、かなりの人気が出そうな予感を漂わせるニューカマーである。

BMW・2シリーズ グラン クーペ

車両本体価格:3,690,000円~(税込)
*諸元値はM235i xDrive グラン クーペ
全長×全幅×全高(mm):4,540×1,800×1,430
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量:1,998cc 乗車定員:5名
最高出力:225kW(306ps)/5,000rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1,750~4,500rpm
駆動方式:四輪駆動

ALPINE A110S
アルピーヌ・A110S

A110の魅力を残した高性能バージョン

 2017年に彗星の如く現れ、多くのクルマファンのハートをガッチリ掴んだ新生アルピーヌA110に高性能バージョンのA110Sが加わった。最高出力は252psから292psへと40‌psアップ。サスペンションは前後ともスプリングレートを1.5倍に高め(硬く)、ダンパーやスタビライザーも専用強化タイプを採用。車高はわずかに低められ、タイヤ幅は前後とも10mm拡大した。

 ノーマルのA110でも十分に速く、十分にスポーティーだったことを考えると、これ以上のスピードは必要なの? と思わないわけでもないが、常に「もっと」を求めるのが人間の性である以上、スポーツカーにとって性能強化が避けて通れない道であるのも事実だ。問題は、速さの追求と引き換えに、A110がもっていた「絶妙のハンドリングと日常的に使える快適性の両立」というチャームポイントが失われていないか。結論から言うと、A110Sは依然としてA110の魅力をきっちり残していた。

 試乗前にはスプリングレート1.5倍と聞いて身構えていたが、走りはじめると乗り心地は思ったほど悪くない。たしかに路面からの突き上げは増しているが、それでもサスペンションは低速域からきちんとストロークするため、内臓が揺すられるような小刻みで不快な上下動がほとんどない。自由自在感を残しつつ、ソリッド感を増したハンドリングも最高だ。ワインディングロードが主体ならよりしなやかなA110のセッティングがベストだが、週末にサーキットに持ち込むような乗り方をするならA110Sを選ぶ価値は大いにある。そしてエンジン。A110ではときとして高回転域のもうひと伸びが欲しいケースがあったのだが、A110Sは5,000rpmを超えてからの伸びが断然気持ちいい。絶対的な速さもさることながら、回せば回すほど刺激が高まっていく味付けがこのクルマの魅力にさらに磨きをかけている。

アルピーヌ・A110S

車両本体価格:8,990,000円~(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,205×1,800×1,250
エンジン:ターボチャージャー付 筒内直接噴射 直列4気筒 DOHC16バルブ
総排気量:1,798cc 乗車定員:2名
車両重量:1,110kg~
最高出力:215kW(292ps)/6,420rpm
最大トルク:320Nm(32.6kgm)/2,000rpm
燃費:12.8㎞/ℓ(WLTCモード)
駆動方式:後輪駆動

JEEP GRAND CHEROKEE TRACKHAWK
ジープ・グランド チェロキー・トラックホーク

超弩級エンジンのアメリカンV8

 最高出力710ps、最大トルク868Nmというスペックは、マセラティ・レヴァンテ・トロフェオが積むフェラーリ製エンジンの590ps/734Nm、ポルシェ・カイエン・ターボの550ps/770Nm、ランボルギーニ・ウルスの650ps/850Nmをいずれも上回る。きら星の如きスーパーSUVを凌ぐ出力を誇るジープ・グランドチェロキー・トラックホーク。搭載するのは6.2ℓV8スーパーチャージャーだ。このエンジンはスーパーチャージャーを付けなくてもかなり強力で、低速から沸き上がる野太いトルクと豪快なサウンドにはファンも多い。そこにスーパーチャージャーを加えてしまうという力技には、強いこと、大きいことに憧れを抱くアメリカ人気質が色濃く反映していると感じる。

 超弩級エンジンを搭載しているわりに、外観は大人しめだ。大量の熱を処理する開口部の大きいフロントバンパーやイエローに塗ったブレンボ製キャリパーといった専用パーツを奢っているものの、うっかりするとノーマルと見間違えてしまう。しかし、何か感じるものがある。よくよく目を凝らすと4本のタイヤ、とくにリアに大きめのネガティブキャンバーがついていることに気付いた。まるでサーキットを走るためにチューニングしたモデルのよう。こんなSUVは始めて見た。「トラックホーク」のトラックとはレーシングトラック=サーキットのこと。内容もネーミングもそうとうな尖り具合だ。

 ワインディングロードで試せなかったのが残念だったが、トラックホークの加速性能は筆舌に尽くしがたい。2.5トンの物体がその重量感を保ったまま豪快に加速していく様はまさに迫力の塊。他のモデルでは決して味わえない世界が間違いなく存在する。それでいて普段はアメリカンV8ならではのゆったり感を味わえるのもいい。価格は張るが、マッチョ好き、それも特別な1台を求めている人は一考に値するモデルだ。(撮影協力:tvk)

ジープ・グランド チェロキー・トラックホーク

車両本体価格:13,560,000円(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,890×1,980×1,800
エンジン:V型8気筒 OHV
総排気量:6,165cc 乗車定員:5名
車両重量:2,470kg
最高出力:522kW(710ps)/6,200rpm
最大トルク:868Nm(88.5kgm)/4,700rpm
駆動方式:四輪駆動

Goro Okazaki

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。

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