特集 頑張れ! ニッポンのクルマ 2018

 今から8年前の2012年12月号で「がんばれ! 日本のクルマ」を特集した。そのとき、日本カー・オブ・ザ・イヤー(2010-2011)を獲ったのはホンダ・CR-Zだったが、フォルクスワーゲン・ポロが次点についた。

 そこから、日本のクルマを見直してみようという問題意識が生まれ、特集のテーマになったのだった。その後、2013-2014年についにフォルクスワーゲン・ゴルフがカー・オブ・ザ・イヤーに輝き、今年(2017-2018)はボルボ・XC60がその座についた。日本のクルマはどこへ向かっているのだろうか。

研究者集団のミツビシ

文・竹岡 圭 / 写真・長谷川徹 

 「三菱のクルマは走りがイイ!」というと、速く走れるクルマ、スポーティなクルマのように誤解されることが多いのだけれど、私が言いたいのはそういうことではなく「三菱のクルマは思った通りに操れる性能が高い!」ということだったりする。そして、これがなかなかに難しいことなのだ。

 ハンドルを切ったら切った分だけ曲がる、アクセルを踏んだら踏んだ分だけ進む、ブレーキを踏んだら踏んだ分だけ減速する…。そんなの当たり前でしょ? という突っ込みが入りそうだが、これがどうして。当たり前にできないクルマが、意外とあったりする。

 さらに最近は、カメラやセンサーやレーダー等々のデバイスを使った最新鋭技術がテンコ盛りなのが当たり前になってきているので、これを統合制御するという新たな課題が加わった。また、PHEVだったりEVだったりと、動力装置もさまざまになってきたので、これにも対応する必要がある。そんな新しくて難しいことに、いち早く取り組んできた自動車メーカーのひとつが、実は三菱自動車なのだ。

 例えばEV。昨年三菱はEV50周年を迎えたのをご存知だろうか。そして何を隠そう、量産型EV「i-MiEV」を、2009年に初めて世に送り出したのも三菱自動車だ。EVというと、すぐさま航続距離が取り沙汰されがちだが、だからこそシティコミューターである軽自動車でリリースしたのは、非常に先見の明があったのだと思う。残念ながらフルモデルチェンジを迎えることなく、カタログモデルから消えてしまったけれど…。

 そう、誤解を恐れずに言ってしまうと、三菱自動車は少々時代の先を行き過ぎてしまう傾向があるのだ。今でこそ当たり前の直噴ガソリンエンジンの「GDI」もそうだったし、ミニバンの「シャリオ」や「シャリオグランディス」も、マルチワゴンの「ミニカトッポ」もそうだった。ようは、時代の方が後から追いついてくるパターンが多いのである。実に惜しいが、誰かが先陣を切らなければ進化はないのだ。

 でもタイミングよく、三菱が作り出したブームというのもある。そのひとつがパジェロによるRVブームだ。日本人が日本車で初めて、あの過酷なパリダカールラリーを制覇したことで火が付き、一大RVブームが巻き起こった。

 またその4WDシステムを違う方向にアレンジして生かし、ランサーエボリューションシリーズによる、スーパーパフォーマンスセダンというカテゴリーも作り上げた。曲がる4WD、速い4WDのパイオニア。そして、ゲリラ豪雨などが増えてきた昨今、4WDは安全性能のひとつにもなると私は思っている。こちらもまた残念ながら現在途絶えてしまっているが、心待ちにしているファンも多いことだろう。何を隠そう、私もそのひとりだ。

 そして最近、三菱が作り出した現在進行形のブームと言えば、アウトランダーPHEVだ。i-MiEVで作り上げたモーターを2個搭載するという、いい部品を作れば軽自動車のパーツをSUVに転用できるという発想が新しい。さらに、その制御がかなりお見事で、自分でエネルギーマネジメントをしながら走るという、新しい分野を開拓した。制御だけ見れば世界一賢いPHEVと断言してもいいだろう。

 また、この先フルモデルチェンジがウワサされているデリカも、スターワゴン、スペースギア、D:5と脈々と歴史と冠が受け継がれてきたモデルだが、これほどボディがガッチリして、悪路走破性に優れたミニバンは、他に見たことがない。ボックス型のSUVと言った方が正解なくらいの走破力なのだ。まさに唯一無二の宝庫である。

 動力装置が変わろうとも、最新鋭装備の助けがあろうとも、ドライバーが思った通りに操れるということが、最大の安全性能に他ならないというのは変わらない。だからこそ、クルマは楽しい乗り物なのだ。三菱自動車には、そのことをしっかりわかっている「新しいものを生み出す博士」がたくさんいるのである。


aheadアーカイブス vol.151(2015年6月号)
「歓びをもたらす三菱の安全技術」はこちらから。

MITSUBISHI OUTLANDER PHEV

車両本体価格:5,090,040円~(税込、S Edition)
エンジン:DOHC16バルブ・4気筒
総排気量:2,359cc
最高出力:94kW(128ps)/4,500rpm
最大トルク:199Nm(20.3kgm)/4,500rpm
【モーター】
最高出力(前/後):60kW(82ps)/70kW(95ps)
最大トルク(前/後):137Nm(14.0kgm)/195Nm(19.9kgm)
燃費:18.6km/ℓ(JC08モード)、16.4km/ℓ(WLTCモード)

「特集 頑張れ! ニッポンのクルマ 2018」の続きは本誌で

マツダの内燃機関へのこだわり 岡崎五朗

スバリストの未来 今尾直樹

研究者集団のミツビシ 竹岡 圭

クール=レクサス 岡崎宏司


定期購読はFujisanで