高市総理が打って出た「未来投資解散」。
この原稿を書いている時点で選挙結果は不明だが、高市政権が継続することを前提に論を進めたい。現在、マーケットでは長期金利の上昇が続いている。メディアはこれを「放漫財政への警戒」と断じ、将来的なインフレ再燃を懸念するが、その見方は本質を捉え違えている。
食料品の消費税ゼロを、同様の主張をしている野党に対する選挙戦略(争点潰し)として除外すれば、全体として高市政権の経済政策は決してバラマキではない。戦略17分野への計21.3兆円(うち国費17.7兆円)に及ぶ戦略投資は、「救済資金」ではなく、未来への「戦略投資」だ。政府が用意するのはスターターモーターを回すための電力であって、実際にエンジンを組み上げ、アクセルを踏み込むのは民間企業の役割という建て付けである。
戦略17分野に「自動車」が入っていないことを不安視する関係者もいるが、国による支援がなくとも日本経済を牽引する能力があると信頼されているからこそ、リストから外れていると考えるべきだ。実際、自工会は解散前の1月22日に「新7つの課題」を掲げ、「マルチパスウェイの社会実装」や「重要資源・部品の安全保障」「自動運転を前提とした交通システム確立」などを、佐藤新会長の下で力強く推進していく。
いま日本に求められているのは、この流れを全産業で共有することだ。もし民間が呼応せず、エンジンがかからなければ賭けは失敗に終わり、投下された国費は成長の果実を生むことなく、インフレの燃料として燃え尽きる。債券市場が動揺しているのは、この失敗シナリオへの恐怖そのものだ。つまり高市政策は「日本の民間にはまだ成長する力が残っている」という一点に国運をベットした巨大な「賭け」なのである。未来投資政策が民間の努力とセットでなければ機能しない以上、問われているのは政府の呼び水をどう原動力に変え、いかに実践的な投資プロジェクトとして定義、実行できるかだ。これから始まる険しいレースの勝敗を左右するのは政治家ではなく、ハンドルを切り、アクセルを踏む民間だということを、なぜ誰も言わない?

Goro Okazaki
