岡崎五朗のクルマでいきたい Vol.182 若手時代の大きな宝

文・岡崎五朗

本誌で「次世代ジャーナリストを探せ」、というテーマを毎号お届けしているのは、クルマという「語るに足る存在」の評論を次世代へと繋げていくことがわれわれ世代の責任だと考えているからだ。

 40代で若手と言われるような業界に未来はないわけで、そのためには20代、30代の人たちがどんどん入ってきてもらうことが必要だ。

 とはいえ、単にページを用意してなんでもいいから書いてねというわけにはいかない。なぜならメディアは読者あってのものであり、読者の方に支持されるコンテンツをつくるのが唯一にして最大の使命だからだ。とりわけOVER50を謳う本誌では、若い人の、若い人による、若い人のためのコンテンツばかりに誌面を割くわけにはいかない。そこで思いついたのが「対談のまとめをお願いする」という方法だった。

 僕は大学3年のときから7年間、小学館の『SAPIO』という雑誌の連載で、徳大寺有恒さんと父である岡崎宏司の対談の司会進行、構成、まとめをやっていた。1時間強の会話を文字起こしして、文章にまとめるのは頭から湯気が出るほど大変な作業だったけれど、クルマだけに偏らない豊富な知識と経験に裏打ちされた論旨、鋭い着眼点をいったん頭の中に入れ、文章としてアウトプットする作業は、その後の僕の執筆活動にとって大きな宝となった。そこで、同じ経験を若い人にも積んでもらうのはどうかと編集部に相談したところ、それでいきましょうということになり、連載が始まった次第である。

 対談の相手はスタートアップの社長、政治家、エネルギーの専門家と多岐にわたる。今回は慶応大学自動車部の現役部員の方々に登場してもらった。狙いは、試乗記だけがクルマ記事ではないということを彼らに知ってもらうこと。クルマは実用品であると同時に、趣味嗜好の対象であったり社会的存在であったりする。そういった様々な視点から眺めたクルマにまつわるあれこれを文章にまとめてもらうことで、彼らが今後書くであろう原稿にそのエッセンスが反映されれば、本誌に相応しいコンテンツと次世代ジャーナリスト育成が両立できるはずだ。

Goro Okazaki

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。

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