事の発端は昨年4月。ダイハツの海外向け車両で側面衝突実験の認証申請における不正が見つかった。
それを受けダイハツは第三者委員会を設置。過去に遡って90万件を調査したところ、国内で販売された車両を含む合計174件の不正が見つかった。認証制度とはクルマの性能や安全性が法規に適合していることを担保するもので、各メーカーが独自に試験を実施しデータを提出。それを受け国土交通省は型式認定というお墨付きを出す。ある意味、メーカーの善意に頼った制度だが、今回過去30年間以上にわたっての不適切な試験方法やデータの改ざんなどが見つかった。つまり、善意に頼った制度を利用したズルが行われていたということだ。過去、燃費偽装や完成車検査の不正などはあったが、衝突安全性というクルマの根本にかかわる部分を含む不正がこれだけの規模で見つかったことはない。当然、対象となる車種の生産はストップ。控えめに言っても最低最悪の自体と言うしかない。
なぜこのようなことが起こったのか。第三者委委員会によると、短期開発を重視するあまり試験の失敗は許されないというプレッシャーが認証部門にかかっていたということ。それを管理職や経営陣が正確に把握できていなかったことが原因だと報告している。上司に「無理です」と報告しても怒られたり無視されたりするなら、いっそのこと無駄な抵抗はやめて誤魔化してしまおう…という流れだ。しかし、こうしたことが30年以上にわたって繰り返されてきたことを考えると、問題はもっと根深いのではないかと僕は感じている。最初のきっかけは無理解な上司の心ない言葉だったかもしれない。が、それがいつしか常態化し、罪の意識が薄れ、当たり前のこととして行われていたのではないか。だとすればもはや管理職や経営陣だけの問題ではなく、企業文化そのものを根本から変える必要がある。経営陣も、管理職も、不正をした人も、見て見ぬ振りをしていた人も、さらに言えば知らなかった人たちを含め、全社一丸となって変わろうとしなければ企業文化は変わらない。一日も早く膿を出し切り、本当の意味での「安全と安心のダイハツ」に生まれ変わってほしい。
Goro Okazaki