1968年にデビューした初代デリカは、エンジンの上にキャビンを載せたキャブオーバー型のトラックだった。ときは高度経済成長時代。日本中で小型トラックが活躍していた。
車種の拡大を図っていた三菱自動車は、そこに目を付けたのである。デリカの車名は、荷物の運搬を意味する「デリバリー」と、クルマを意味する「カー」を組み合わせた造語だ。
小型トラックを開発するにあたり、三菱は自社の強みを存分に生かした。それは、米ウイリスと契約し、’53年から生産を始めたジープの生産で培った技術力だった。これを商用車に求められる耐久性と信頼性の確保に生かしたのである。初代デリカはコルト1100の1.1ℓ直4エンジンを流用し、ラダーフレームに載せた。競合車の最大積載量は500㎏だったが、デリカはクラス最大の600㎏を誇った。また、クラス唯一となる前席3名掛けのキャビンも大きなセールスポイントになった。
三菱はデリカのセールス拡大を狙って、’69年4月に3列シート9人乗り乗用ワゴンのデリカ「コーチ」を発売。レジャーユースの強い味方として成長を遂げるデリカの原点である。レジャー志向の高まりに合わせ、’72年7月にはポップアップ式ルーフを備えたデリカキャンピングバンを発売した。
’79年6月に発売された2代目デリカは、初代よりも150㎜ワイドな、5ナンバー枠を目一杯使ったボディを採用。拡大したボディを生かし、優れた居住性と広い荷室を確保した。’81年9月にはAT仕様を追加。さらに、パワーステアリングや反転対座シート、マルチサウンドコンポを採用するなど、快適性を一気に高めた。
Fデリカ トラック(1968年~)
デリカ コーチ(1969年~)
デリカ キャンピングバン(1972年~)
2代目デリカ スターワゴン(1979年~)
’82年10月にはパジェロのコンポーネントを流用した4WD仕様を追加した。本格オフロード走行が可能な走行性能と乗用車の快適性を兼ね備えたのがパジェロなら、デリカはその多人数多用途ワゴン的な位置づけである。’85年2月に行った内外装の変更ではグリルガードが装着され、力強いイメージを演出するのにひと役買った。
2代目から「スターワゴン」を名乗ったワゴンシリーズは、’86年に発売された3代目にも受け継がれた。大きな変更点は、ラダーフレーム構造からモノコックボディに切り換えたことだ。サスペンションやステアリング形式の変更もあり、乗心地と操縦安定性が大幅に向上したのもポイントだった。
仕様面では、後席ルーフ左右をガラス張りとしたクリスタルライトルーフの設定が際立った。ワンボックスボディの長いルーフに採用されただけに、効果は抜群。明るく開放的な居住空間を演出した。
’94年5月に発売された4代目のデリカには、道具(ギア)感覚で愛着を持って接してもらえるようにと、「スペースギア」のネームが与えられた。4代目はエンジンの搭載位置変更により、それまでのワンボックススタイルから、短いボンネットを持つミニバンスタイルに改めたのが特徴だ。
パジェロ譲りの4WDステムは、パートタイム式とフルタイム式の長所を合わせ持つスーパーセレクト4WDに進化。キャビンは前席足元からラゲッジルーム後端までフラットフロアとし、ウォークスルーを実現。多彩なシートアレンジに磨きを掛け、アウトドア志向の高まりに応えた。
デリカの5代目となる「D:5」は’07年1月に発売された。アウトドア志向の強かったそれまでの流れから一転、都会的なテイストが与えられた。4WDシステムはセンターデフを用いた後輪駆動ベースから、電子制御カップリングを用いた前輪駆動ベースの新世代システムに変更している。
’19年2月にはダイナミックシールドのフロントデザインが与えられ、モダンな顔立ちになった。また、4WDにはヨーレートフィードバック制御が追加され、思いどおりに走る機能が強化された。多人数乗車かつ多目的の用途に、走りの魅力が加わった格好だ。
2代目デリカ スターワゴン(1982年~)
3代目デリカ スターワゴン(1986年~)
4代目デリカ スペースギア(1994年~)
5代目デリカ D:5(2007年~)
MITSUBISHI DELICA D:5 アーバンギア
エンジン:コモンレール式DI-Dインタークーラー
ターボチャージャー付DOHC 16バルブ・4気筒
総排気量:2,267cc
最高出力:107kW(145ps)/3,500rpm
最大トルク:380Nm(38.7kgm)/2,000rpm