ちまたには数々のキャラクター商品が溢れているが、大人が所有したり身に付けたりするのに耐えうる商品がどのくらいあるか、となると大変心許ないのが現状だ。
ここで紹介する「A MAN of ULTRA」はウルトラマンというキャラクターを核としながらも、そういったいわゆるライセンス事業とは一線を画し、立ち上げからわずか1年半で次々とヒット商品を生み出している。
この事業を立ち上げから手がけている佐藤佳世子さん(フィールズ株式会社)に、「A MAN of ULTRA」誕生の経緯を聞いた。
「2016年はウルトラマンシリーズ放送開始からちょうど50年に当たります。円谷プロはその間、時代に合わせてたくさんのウルトラマンをプロデュースしてきました。それは架空の世界のヒーローですが、時代を遡ってみると、歴史上にはリアルなヒーローや偉人と言われる人たちが存在しますよね。戦国武将だったり、ナポレオンだったり。ということは私たちの日常の世界にだって、ヒーローはいてもいいよね、と。簡単に言えばそれが出発点でした」
ウルトラマンを見て育った40代、50代はまさに今、社会の一線で活躍する世代だ。誰もが知らぬうちに、ウルトラマンに何らかの影響を受けているはず。
「私自身、アニメもドラマも大して見てはいないのに、ウルトラマンだけはなぜか染み付いているんです。ウルトラ兄弟も分かるし、怪獣の名前も言えたりする。ウルトラセブンを見て技術者になった、という友人もいます。私たち世代には心の中にウルトラマンという永遠のヒーローがいる。ならば今度はあなた自身がヒーローになろうよ、日常の中にだってヒーローは生まれるはずだよねって。ウルトラを生み出した円谷が、そう発信することも必要だ、と考えたんです」
そして佐藤さんのすごいところはここからだ。ウルトラを愛する人たちに勇気を与えるもの、その人の気持ちを後押ししてくれるものをかっこよく表現したい。そのためにあえて制約を設けた。即ち《ウルトラマンや怪獣をリアルに表現してはいけない》
「それを許してしまうと、どうしてもキャラクター商品になってしまう。あくまでも〝ウルトラな男を作り出す〟というコンセプトを形にしてください。これはコンセプチュアル・ライセンスという、これまで日本にはなかった全く新しい考え方なんですよ、と皆さんにお伝えしました」
果たして、佐藤さんの狙い通り、作り手はプレッシャーを感じつつも、かえってチャレンジ精神を刺激され、大人の男が持つにふさわしい商品が次々と生まれてきた。
http://aman-u.jp/
そして、いよいよクルマの登場である。「私たちの世代はクルマを持つことが憧れでした。かっこいいクルマに乗りたい、それを目標にして頑張ってきたと思うんです」
同世代の人たちにも意見を求め、ベースのクルマは「TOYOTA 86」に決まった。〝日常の世界にウルトラな男を創り出す〟 そのコンセプトに共感してくれた人たちと共にウルトラな男のための「TOYOTA 86×A MAN of ULTRA」プロジェクトは急ピッチで進んでいる。
話はどんどん盛り上がって、せっかくだからと東京オートサロンと大阪オートメッセでお披露目することになった。日常生活の中で普通に乗って欲しいから、ショーのためだけに着飾ったクルマにはしません、とのこと。
さて、東京オートサロンでは、どんなウルトラな「86」にお目にかかれるだろうか。
佐藤佳世子