ステアリングを握りしめた私は、今まさに冒険への扉を開こうとしている。日常から解き放たれる清々しさ、まだ見ぬ世界へ飛び出す寸前の胸の昂りが、体中を駆け巡る。
表紙を手に取った瞬間に、そんな光景が広がっていくのを感じさせてくれたのは、『APIO JIMNY LIFE』という雑誌だ。神奈川県綾瀬市にショップを構え、コンプリートカーやパーツ製作からイベント開催まで、幅広いカーライフをサポートしているジムニー専門店のアピオが、この8月に新たに発行した雑誌である。
巻頭には、発行人でもある河野 仁社長が『APIO JIMNY LIFE』の創刊に込めた想いが綴られている。「カタログ以上、雑誌未満」がテーマだとの言葉に、なるほどと思った。通常、こうしたショップが発行しているカタログは、パーツの写真が並んでいてその性能や価格が紹介されている。著名なレーシングドライバーが、パーツを試した感想などがあったり、他社製品との性能比較があったりするが、どれもパーツそのものや装着するクルマに興味がなければ、読んでもとくに心を動かされることはない。でも『APIO JIMNY LIFE』には、そうしたページはひとつもなく、ジムニーで行く旅の様子や、ハンバーガー探検家による美味しそうなレポートなどが誌面を賑わしている。
私は今のところジムニーを買う予定はないのだが、ページをめくるたびにどんどん誌面に引き込まれていく。臨場感あふれる文章とともに、掲載されている写真がまた素晴らしく、「今度ここ行ってみよう」などと次の休日に思いを馳せはじめ、そのうちにちょっとジムニーが欲しくなりはじめてくるのだった。
そうしてふと気づいたのは、こんなにも引き込まれるのは「紙」だからかもしれないということだ。実はアピオの公式サイトにも、ジムニーライフというコーナーがある。そこで連載している方々が、『APIO JIMNY LIFE』にも寄稿しているのだが、明らかにウェブ画面で読むのと、雑誌で読むのとでは引き込まれ方が違っている。自分の手に雑誌の重みを感じ、指でページを開いたり閉じたり、角度を変えてみたり、紙ならではの手触りを感じたり。そこから何か熱いものが伝わってきている気がした。
河野社長とは、何度か林道ツーリングに同行させてもらったことがあるが、味のある革カバーのトラベラーズノートを持参して、行った場所や感じたことなどを万年筆で丁寧に記していたのが印象的だった。こんなにもジムニーとの時間を大切にし、心に深く刻んでいるのだと感動したものだ。そんな河野社長だからこそ、この時代にあえて「紙」にこだわり、商品情報で終わらない、ジムニーとともにある人生の魅力を伝えようとしているのだろう。次の『APIO JIMNY LIFE』は、私をどんな冒険に連れ出してくれるのか、楽しみでたまらない。
『APIO JIMNY LIFE』
アピオ楽天市場店、amazonで購入できます。