オンナにとってクルマとは vol.43 レンタカーの選択肢

  ひとりで地方へ出張に行くと、空港や最寄り駅からレンタカーを借りることが多い。最終目的地までの移動手段として、私にとってはそれがいちばんラクだから、という理由もあるけれど、まだよく知らない土地を自分の運転で走ることが、いち早くその土地に馴染み、特色や雰囲気などをより濃く感じる手っ取り早い方法だと思うことも理由のひとつだ。

  車種はたいてい、ヴィッツなど1.0~1.3ℓのコンパクトクラスを指定する。その場になるまで何が出てくるかわからないから、山道がある時にスイフトに当たるとちょっと嬉しかったり、すでにマイナーチェンジをしたあとに旧モデルに乗れると、いい復習の時間になったりと、私にとっては楽しいシステム。

  でも一般の旅行者にとっては、あらかじめ車種まで指定できる方が本当は安心なのかもしれない。慣れているクルマがいい人もいれば、いつもと違うクルマに乗りたい人もいるし、行く前に調べておくこともできるから。

  そういえば、事前に障害保険を申し込んであるにもかかわらず、当日になってさらに手厚い内容の保険加入を勧めるのもおかしな話だ。「もし全損になっても、これに入れば自己負担が5万円で免責になります」などと言われたら、いくら運転に自信があっても断る勇気はない。

  しかも、そうやって不安感を煽るわりには、クルマの前でキーを渡されて、ろくに扱い方の説明もない場合が多い。一度、九州で借りた時は、ステアリングのロックが外れたままだったことがあったし、大阪ではサイドミラーが折り畳まれた状態で渡され、シートベルトを締めてからその操作が手動であるとわかり、不親切だなぁとガッカリしたこともあった。しっかり説明をしてくれる大手会社もあったけれど、いい加減なところが多いのは事実。クルマに不慣れな人は、かなり不安な気持ちのまま走り出すことになるはずだ。

  そうした数々の不満はあるものの、やっぱり景色のいいところをクルマで走るのは格別の思い出になる。女性はとくに、「レンタカーで乗って気に入ったのでデミオを買いました」というようなパターンをけっこう聞くくらい、特別な体験となるようだ。

  レンタカーは間違いなく、クルマ好きを増やすための重要な役割を担っている。もっともっと魅力的なモデルが、リーズナブルに借りられるようになってくれたら嬉しい。

文・まるも亜希子

Akiko Marumo

自動車雑誌編集者を経て、現在はカーライフジャーナリストとして、雑誌やトークショーなどで活躍する。2013年3月には、女性の力を結集し、自動車業界に新しい風を吹き込むべく、自ら発起人となり、「PINK WHEEL PROJECT」を立ち上げた。

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