編集前記 Vol.15 年相応の崩壊

文・神尾 成

以前といっても20代後半のときの話だから30年ほど昔のことだ。

 それまでにない規模の大型二輪用品店を作るプロジェクトに参画した。その頃はクルマが何十台も駐められる二輪用品をあつかう大型店舗はなかったので、有名百貨店から数人の専門家に出向してもらい、一緒に新店舗の開発をおこなうことになった。

 現在は通用するか分からないが、売価還元法をはじめ、圧縮陳列法、統一伝票の作製、総研会社のセミナーに参加するなど、大型店舗の運営を学びながら開店準備を進めていた。その中で、ひとつだけ忘れずに覚えていることがある。歳相応というのは時代によって変化していくということだ。

 今の百貨店の婦人服売り場は幅広い年齢層に向けて商品展開をしているようだが、当時はミセスと呼ばれる中年層がメインターゲットで、その中核をなす40代女性が大きな変革期を迎えていた。団塊の世代が40代の中心になるタイミングにきていたのだ。この頃の婦人服売り場の多くは年齢に見合った落ち着いた色の服を前面に出し、派手な色合いを避ける傾向にあった。しかし団塊の世代の女性たちは10代の頃にビートルズに熱狂して、ヒッピー文化にも影響を受け、20代で『an・an』や『non-no』から新しいファッションを積極的に取り入れてきた年代だ。歳相応だけを意識した既存の婦人服売り場では立ち行かなくなったのである。考えれば分かりそうなものだが、それまで実績があった売り場を大きく変えるのは理屈より勇気が必要だ。大型店舗を運営していくには世代の個性や時代の変化を読み解きながら、時に思い切った決断をしなければならない。

 翻ってみると10代の頃に自分が還暦を迎える年になってもバイクに乗っていることは想像できなかった。しかし今は、バイク人口が一番多いのは50代となっている。皆、若い頃の延長線上のまま生きているのだ。そう考えると現代は歳相応という概念が失われつつあるのだろう。さらに団塊ジュニアと呼ばれる世代が50代の中盤に差し掛かってきた。彼らは親たちと同じで、それまでの常識を覆すチカラを持っている。

神尾 成/Sei Kamio

2008年からaheadの、ほぼ全ての記事を企画している。2017年に編集長を退いたが、昨年より編集長に復帰。朝日新聞社のプレスライダー(IEC所属)、バイク用品店ライコランドの開発室主任、神戸ユニコーンのカスタムバイクの企画開発などに携わってきた二輪派。1964年生まれ59歳。

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