チームaheadの舞台裏

第27回メディア対抗ロードスター4時間耐久レース

 9月5日、第27回メディア対抗ロードスター4時間耐久レースが開催された。

 一口に27回とは言うが、27年続けるというのはなかなか大変なことであろうと想像する。主催するマツダには業績低迷の時期もあり、近年、記憶に残っているのは’08年のリーマンショックである。比較的早い時期から、今年のレース開催は難しいだろうという噂も流れ、実際、マツダ社内でもそういう議論があったと聞く。そのとき、「コストは自分たちで負担してもいいから、続けて欲しい」という参加媒体の強い声があがり、それがレースを続ける大きな力になった、とマツダのある役員の方から聞いた。

今年のドライバーは、社長の近藤正純ロバート、モータージャーナリストの岡崎五朗、二輪ジャーナリストの丸山浩、スーパーモタードライダーでもあり、現在ポルシェカップにも出場している佐野新世の4 名。当初、メンバー登録していた篠原祐二(ウィザムカーズ)は、8 月のモンゴルラリーでの怪我のため断念。それでも当日はピットクルーとして駆けつけた。写真は、保管場所から筑波サーキットまでレース車両を運ぶトレーラー。偶然、守谷パーキングで居合わせた。

 このレースは、30台近いレース車両の全てをマツダが用意する。レース前の準備、レース後のメンテナンスや車両の保管、管理も含め、マツダの負担は相当なものであるはずだ。それでも、マツダは絶やすことなく続けてきた。自動車メディアにとっても「このレースに出られることは名誉」と言われている。

 第1回目からずっと参加し続けているという老舗媒体がある一方、最近はJ-WAVEなど紙媒体以外からの参加も見られるようになっている。aheadはというと、今年で10回目。最初の頃のことを思えば成長したと思う。

 aheadという雑誌を立ち上げたのは元銀行マンの2人。単にクルマやバイクが好きというだけで、当時そこに集まった編集メンバーもレース経験など皆無だった。このレースに参戦しないかと声を掛けていただけるようになっても、レースのことは誰も分からない。だから、恥ずかしながら、最初は元銀行マンらしく、レースの知見のある関係者にお金を払ってチーム運営をお願いしていた。でも、何のためにこのレースに出るのかということを考えれば、そういうやり方ではダメだったのだ。

 「モータースポーツの楽しさを経験し、それを多くの人に伝えて欲しい。それが自動車業界全体を盛り上げていくことにつながる」マツダが苦しい時でもこのレースを続けてきた根本にはそういう願いがあったはず。

 aheadが考え方を変えたのは、ひとつには編集長が交代し、現編集長の神尾がオートバイレースの経験者であったことが大きい。彼はもともと、お金を払ってチーム運営を任せるようなやり方には基本的に反対だった。もうひとつは、社長である近藤が3年間ヴィッツレースを経験したこと。誰かに依存してレースを闘っても、それは真の意味での「経験」にはならない。そのことを知ったのだ。

 今、aheadはこのレースを関係者とともに、それぞれの得意分野を生かしながら役割分担をして、運営している。費用も割り勘だ。

 メンバーは完全固定していない。このレースを走りたいという人がいれば、新たにその人を加え、誰かにお休みしてもらう。今年はうまく走れなかったけど、リベンジしたいという人がいれば、もう一年やってもらう。一方、休んでもらった人に再び参加してもらうこともある。このレースがルーティンにならないように時には新しい風を入れ、時にはベテランに加わってもらいながら、毎年、aheadなりのテーマを持って続けている。

 レースはまたドライバーだけのものではない。車両の改造等は一切認められてはいないが、メカ担当も必要だし、ドライバーに周回を知らせるサインボード係も必要。2度の給油のためには給油担当もいるし、燃費レースでもあるので、計測係も重要だ。飲み物や食べ物を用意するホスピタリティも欠かせない。ありがたいことに、今ではそれらの裏方を買って出てくれる仲間もでてきた。黙っていても、それぞれが自分の役割を認識し、自ら動いてくれている。

 昨年は5位、今年は7位。ある程度上位に食い込めるようになったのも、人任せにせず自分たちでレースを組み立てられるようになってきたことの結果だろう。マツダがこのレースを続けている思いを汲みつつ、このレースに出ることをルーティンにせず、「自分たちらしいレースとはなんだろう」という問いかけを忘れないことが大事だと思う。

文・若林葉子 写真・長谷川徹


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