オンナにとってクルマとは vol.53 眠れる感性

 年明け恒例の大イベント、幕張メッセで開催された「東京オートサロン」は、またしても過去最大規模の展示数と来場者数更新の記録を残して幕を閉じた。

 未来のクルマや技術を披露する「東京モーターショー」は、ちょっと子供や女性には親しみにくいところがあるのに対して、東京オートサロンが扱うカスタムカーというのは、パッと見ただけで面白さや楽しさが伝わるから、いつもファミリーや女性の姿が多いのが特徴だ。屋外会場でのアトラクションも、ドリフトを目の前で見られたりと、ド派手なビジュアルが大人気。今年もカップルや女性グループなどが、テーマパーク感覚で楽しんでいる姿に嬉しくなった。

 そしてすべての展示車両を見て回って感じたのは、カスタムの世界にますます女性の感性が活かされてきているなぁということ。例えば今年は、若い女性から主婦層までを夢中にしている「スイーツデコ」を取り入れた展示車両が目を惹いた。とくに、ゴツいイメージのカスタムになりがちなジープが、ドアミラーに盛りだくさんのスイーツデコをあしらっていたり、自動車学校の学生が造った展示車両は、なんとクルマのボディ全体がいろいろなスイーツデコで覆われている。指導した先生に話を聞くと、最初は何名かの女子生徒が作業をしていたところ、とても手が足りないので男子生徒に手伝ってもらううちに、男子たちもその面白さにハマり、最後には生徒たちの父兄までが手伝うようになっていたという。女子生徒主導で1台のカスタムカーが出来上がっていったなんて、ちょっと微笑ましいエピソードだ。

 また、インテリアでは着物のような和柄のパーツがたくさんあった。シート生地はもちろん、ドアの内張りを和柄に変えるような本格的なものから、ステアリングの一部を和の花柄にできたり、ヘッドレストに取り付けて首を支える枕など、手軽に取り入れられる小物もいろいろあって、女性たちが雑貨屋さんで買い物をするような感覚で手に取っていた。

 今やカスタムの定番となったスワロフスキーのデコなど、女性の感性はクルマ業界に新しい風を送ってくれる貴重なものだ。まだまだ、世に出ていない感性が眠っていて、どこかで開花の時を待っているかもしれない。そう思うと、もっともっと女性とクルマが出会う場を増やして、もっともっとクルマを好きになってもらいたい。そんな意欲が湧いてきたのだった。

文・まるも亜希子

Akiko Marumo

自動車雑誌編集者を経て、現在はカーライフジャーナリストとして、雑誌やトークショーなどで活躍する。2013年3月には、女性の力を結集し、自動車業界に新しい風を吹き込むべく、自ら発起人となり、「PINK WHEEL PROJECT」を立ち上げた。

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