クラスレス感が魅力の孤高の存在

 「390 DUKE(デューク)」が納車されて8ヵ月ほどたった。僕にとって人生初めてのバイクだ。待ちに待って手に入れたこのバイクを僕はかなり気に入っている。付き合い始めて分かったことだが、このDUKEの一番の強みは「軽さ」という点だ。

 半乾燥重量139㎏は400ccクラスとしては圧倒的に軽い。いざサーキットで走りだすとその軽さが武器になる。僕のような初心者でも扱いやすく、自分がうまく乗れているかのように思わせてくれる楽しいバイクなのだ。そんな中、「390 DUKE」の兄弟車とも言える「RC125」と「RC390」の試乗会に参加させていただいた。場所は筑波サーキットのコース1000だ。

 まず乗り慣れた390 DUKEから試乗した。慣れたバイクとはいえ、まわりはプロの方ばかり。超のつく初心者の僕は緊張しっぱなしだったが、適度なコースの狭さがちょうどよく、コーナーを曲がったらまたすぐ次のコーナーに入るという連続したリズム感のある走りを楽しむことができた。

 次は、いよいよ「RC390」だ。またがってみると普段のDUKEのポジションとあまり変わらない印象を受けた。以前、試乗させてもらったことのあるSS(スーパースポーツ)は、もっと前傾姿勢がきつく、タンクにお腹と胸がぴったり付くぐらいのポジションで戸惑った。でもこのバイクは、僕のような初心者や、ネイキッドしか乗ったことのないひとでも違和感なく走ることができるはずだ。

 走り出すと、「390 DUKE」よりもパワフルに感じられて、僕には十分すぎる。慣れてくると、マスの集中がはかられているからか、倒している時の安定感はDUKEよりも高いことに安心感を覚えた。それと、以前試乗したSSだと不安を感じたクリップオンハンドルが逆にサーキットではコーナーを曲がる時に肘が開かなくて済むことにも気付いた。さらにそれが自分とバイクの一体感を生み出しているということも学べたのだ。

 最後の走行は「RC125」になった。実は125ccという排気量の小さなバイクに乗るのは初めてだったので、走りだしてしばらくはシフトアップのタイミングが分からずにいた。しかし、高回転まで回せば良いことに気付き、リズムを掴みはじめると、常にスロットルを全開まで開けていく気持ちよさや、「さっきより倒しこんでみよう」とか「スピードを落とさずに頑張ってコーナーを抜けるぞ」といったような「チャレンジしてみよう」という気持ちが生まれてきたのだ。これが「RC390」との大きな違いだった。結果的に僕は、3車の中で「RC125」を一番夢中になって乗り回していた。

 「390 DUKE」 「RC390」、「RC125」どれが最高に気に入ったバイクなのかと聞かれたら、RCシリーズに試乗する前は間違いなく「390 DUKE」と答えていたはずだ。でも今は少しだけ揺らいでいる。気負わずに普段使いができるオールラウンダーいう点では、DUKEの魅力は捨て難い。でも以前からサーキットで走ることに憧れていた僕にとって、「RC390」は「もっと上手く乗れるようになりたい」というモチベーションを与えてくれたし、「RC125」は、初めてスポーツライディングに夢中になれたバイクになったからだ。将来的には街乗り用に「390 DUKE」 、サーキット用にRCシリーズのいずれかといった贅沢な二輪ライフを送れたらいいなと思う。

文・岡崎心太朗 写真・渕本智信
このところノリに乗っているKTMらしく、両車ともにアグレッシブなモデルだった。RC 390は、moto3をイメージさせる現代版シングルレーサーといった風で、クラス感が高く非力さを感じさせない。RC 125は、車体がオーバークオリティなので何をやっても破綻する気がしなかった。もしこれからサーキットデビューするならRC390/125を勧めたい。一年後にはリッターSSでデビューするよりも確実にライディングが上達しているはずだ。(神尾 成)

KTM RC 390
エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
総排気量:373.2cc
ボア×ストローク:89/60㎜
最高出力:32kW(44HP)/9,500rpm
最大トルク:35Nm/7,250rpm
車両本体価格:¥637,000(税込)

KTM RC 125
エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
総排気量:124.7cc
ボア×ストローク:58/47.2㎜
最高出力:11kW(15HP)/9,500rpm
最大トルク:12Nm/8,000rpm
車両本体価格:¥565,000(税込)

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