二十歳はたちの僕とクラシック~ベスパ スプリント 150

 「ベスパ」という名前を聞くと、何をイメージするだろうか。映画好きの方や年配の方などは真っ先に『ローマの休日』でしょ!と口を揃えて言うかもしれない。僕自身もそのうちの一人だった。とかっこつけて言ってはみたものの、今まで『ローマの休日』を観たことは一度もない。

 原稿を書く上でイメージが湧いてくるようにと観たその一回も、二十歳の僕にとっては「ベスパとこのストーリーの関係性ってなんだろう?」というお粗末な感想しか持てなかった。その後同年代の意見が気になり、「ベスパって知ってる?」と友人に聞いてみると「なにそれ? クルマ?」という答えが返ってきた。それぐらい僕達の年代と「名車」といわれるベスパは遠い存在であった。

 つい先日そんな僕がベスパの最新モデル「Vespa Sprint 150」に試乗することになった。ベスパの伝統ともいえるスチールモノコックボディーや片持ち式のフロントサスペンションはそのままに、155ccというパワフルなエンジンを搭載している。特徴的な角型ヘッドランプは、1963年発売のVespa GLに初めて装備された。それ以来Sシリーズや多くのスポーティモデルに反映され、それがこの「Vespa Sprint 150」に受け継がれているようだ。またがった瞬間は「あれ? 足がぎりぎりでしか着かないぞ!」と感じたのだがこれには訳がある。前後とも12インチのホイールを装備し、シート高が高くなることによってコーナリングや車線変更時のスムーズな体重移動が可能になる。その結果、自分がスクーターに乗っていることを忘れて、まるでバイクに乗っているかのような走りを楽しむことができるのだ。ひとたび走りはじめると本当に気持ちよくて、自宅までの道のりの中で「ベスパを置いたら絵になるだろうな~」と思う場所を探してみたり、クルマを運転している時には気づかなかった狭い路地や道をわざと選んで走ったりした。おかげで空いていれば1時間もかからない自宅への道のりが3時間近くかかってしまった。

 そんなベスパの一番の魅力は、手頃な価格で「クラシック」という誰もが憧れる存在を手に入れることができることだと思う。現在の「MINI」や、「チンクエチェント」などは代表的な「ネオクラシック」にあたる。「ネオクラシック」とは昔のスタイルを現代風にアレンジしたもので、正直に言うと僕自身も最近知った単語だった。それを踏まえても、僕たちの年代の人からすると到底手が出ない価格になってくる。しかし「Vespa Sprint 150」は40万円台と若い世代でも頑張れば手の届く「ネオクラシック」なのだ。

 そう考えると最初は遠くて縁のない「クラシック」も自分との距離がぐっと近づいた気がして、なんだか一つ大人の階段をのぼったような気がしてくる。この原稿を書き終わった後にもう一度「ローマの休日」を観たら、今度はどんな感想を持つのだろうか。少し楽しみになってくる。

文・ 岡崎心太朗 写真・山下 剛

スポーティさを強く表現しているSprint 150は「Primavera125」と共通のボディを使用。12インチのキャストホイールを初めて採用し運動性能を高めた。伝統の前輪片持ちサスペンションは健在で、赤いスプリングがイタリアらしいお洒落なアクセントになっている。メットインも備えられており、実用性も抜群だ。
Vespa Sprint 150
エンジン:4ストローク空冷単気筒SOHC 3バルブ
排気量:154.8cc 車両重量:130kg
最高出力:8.7kW(11.8ps)/7,500rpm
最大トルク:12Nm (1.2kgm)/5,000rpm
車両本体価格:¥454,000 (消費税込)
問い合わせ先:ピアッジオコール 050(3786)2635

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