トヨタが純正カーナビのみで展開していた情報を、一般向けサービスへと進化させた。それが、スマートフォン向けテレマティクスサービス「smart G-BOOK」だ。カーナビ機能に留まらないというこのアプリ、果たしてどんな実力を持っているのか。
クルマでの帰省や旅行を控えたこの時期、渋滞回避ルートから休憩スポット検索まで、何かと頼りになるのがカーナビ。だが、手持ちのカーナビが奇妙な動きを見せる際は、機能補完の目的でスマートフォンのアプリと抱き合わせて使う場合も。そのアプリも決して機能は充実していないが、比較する機会もなかったため「こんなものかな」と思っていた。
そんな中で登場したのが、トヨタのスマートフォン向けテレマティクスサービス「smart G-BOOK」。これまでトヨタ車の純正カーナビのみに提供していた情報を、他車のユーザーもアプリで利用できるという、ナビゲーション機能をメインとしたテレマティクスサービス(通信を使った情報サービス)だ。クルマメーカーであるトヨタが提供するこのアプリ、他のものと比べていったい何が違うのだろう。
カーナビとしての実力
一般的なカーナビは、高速道路や主要道路のみで収集されたデータに基づき道案内を行っている。一方「smart G-BOOK」の情報源は、約70万台以上もの通信型ナビを備えたトヨタ車およびレクサス車。全国津々浦々から道路走行状況が随時アップデートされるため、常に安定したボリュームの 〝使える〞情報が得られるという。このビッグデータ交通情報システム(「Tプローブ交通情報」と呼ばれるトヨタ独自の情報)を活用することで、他のナビアプリとはまた違う、最新情報によるきめ細かい案内が行えるというわけだ。
ただし、いくら情報量を活用できる強みはあるといえ、使い勝手が悪ければ受け入れてもらえない。しかもナビアプリは、目の肥えた若者や助手席の女性が使うケースが多い。
そこで開発の際には、見やすくて簡単に使えるインターフェースにこだわった。地図は細かく作り込みながらも分かりやすさを重視。右ページのように、主要ランドマークはリアルに再現、パッと見ただけで景色が呑み込めるようにした。また右左折する際は、「この先200m を右」ではなく「この先200m、○○交差点を右」と固有の交差点名称まで案内してくれる。
一方「地図そのものが苦手」と言う人向けに、情報量を最小限に絞った「ターンbyターンモード」も搭載。表示されるのは、矢印・距離・交差点名のみと至ってシンプルで、そのまま読み上げればルート案内ができてしまう。また、通信型ながら圏外でも引き続き案内してくれるので、山道や田舎道など「ここぞ」という時にも頼りになる。
「車載タイプに匹敵する、充実した案内を実現しました」(トヨタ自動車e-TOYOTA部テレマティクス事業室・八代 愛さん)という言葉の通り、これだけのクオリティを維持しながら、画面はサクサクと動くのでストレスもほとんどない。
さらにユニークなのは、有人の「オペレーターサービス」だ。電話で直接要望を伝えれば、検索から目的地の設定までをしてくれた上で、アプリのナビ上に転送してくれるというもの。高級車で採用されるようなサービスまで利用できてしまう。
トヨタ独自の情報を生かした「ナビゲーション」
災害時や緊急時のサポートも
ここで浮かんだ疑問が、メーカーであるトヨタがなぜこのようなサービスを提供するのか、ということ。「これまで弊社のクルマに留まっていたビッグデータの恩恵を、より多くの人が享受できる仕組みを作ることで、誰でも体験できるものにしたかったんです」(同室第一企画グループ長・松岡秀治さん)。
実際、東日本大震災の際には、トヨタが収集・蓄積していたビッグデータが通行実績として役立ったという経緯がある。「smart G-BOOK」はナビ機能以外に、タップするだけで避難所までの安全なルートを検索できるといった「災害対策サービス機能」が無料で備わる。
クルマ・徒歩での移動サポートから緊急時の避難まで、移動に関わることに幅広く活用できるこのサービス。運転手も助手席に乗る人も、ぜひ手に入れておきたい。
文・村上智子