二輪と四輪のヘルメットの違い

 『アライ』のヘルメットは滑らかな球面フォルムで衝撃をかわし、吸収しなければならないエネルギーを最小限にする設計思想を貫く。2輪用、4輪用を問わず、衝撃を分散する突起物のない帽体形状と、衝撃吸収性能がヘルメットにとって優先すべき性能であることは間違いない。

 では2輪用のヘルメットを4輪で使用してもいいかというとそんなことはないし、その逆も避けるべきだ。それぞれ用途に合わせた重要な機能が盛り込まれているからだ。

 2輪用と4輪用を見比べてみると、開口部の面積が異なることに気付く。2輪用は広く、4輪用は狭い。2輪用は視野を確保するために開口部を広くとっている。ライダーは前傾姿勢をとるのが基本だが、姿勢は状況に応じて上下左右に慌ただしく動く。だから上下に加えて左右方向の視野を確保することも大切なのだ。一方、4輪のドライバーは姿勢の変化が少ない。だから開口部は狭くて構わないのかというと、理由は別にある。耐火性能の確保だ。4輪のアクシデントで一番怖いのは車両火災だ。ヘルメットは衝撃から頭部を守る装置としてだけではなく、頭部を火や熱から守る装置として機能する。開口部を必要最小限に留めているのはそのためだ。

アライ「GP-6S」の左右の下部には、HANS(ヘッドアンドネックサポート)を装着するために6ミリのターミナルが装備されている。(白い部分を外す)

アライ「GP-6S」は、衝撃を受けた際、シールド(バイザー)が勝手に開いてしまわないようにダブルロック機構が追加された。これも耐火対策である。

アライの場合、4輪用シールド(バイザー)の厚みは3ミリとなる。2輪用と同じ2ミリでも強度的には充分だが耐火性向上のために厚くされている。

4輪用と2輪用の最大の違いは内装の素材。写真は難燃性の高い素材で作られた4輪用。アライの4輪用は、あご紐がケブラーのため黄色になる。

アライ「GP-6S」の帽体(シェル)は、F1ドライバーが絶賛する「GP-6RC」と同形状。飛び石対策や耐火性向上のため開口部が極めて狭いのが特徴。

 そしてもうひとつ。飛び石などの衝撃に対処するためならシールドの厚みは1・5㎜でも充分だが、アライは2輪用に0・5㎜の余裕を加えて2㎜にしている。4輪用は3㎜厚だが、これは火や熱が侵入する時間を稼ぐためだ。最新モデルのシールドにはダブルロック機構が付いているが、これは衝撃を受けた際に弾みで開いて火や煙を入れ込まないようにするためだ。また環境に応じてシールドを素早く交換できるよう、2輪用は脱着性を重視した構造になっているが、4輪用はアルミのネジで締め付ける構造。これも火に対する意識の現れである。

 内装素材も異なる。4輪用は難燃材を使っているが、2輪用は通気性を重視した仕様になっている。ライディング中、激しく体を動かし発汗する2輪用の場合、ベンチレーションが欠かせない。4輪用もベンチレーションを装備するが、充実しているのは2輪用の方だ。空気を入れたり抜いたりするためには、専用パーツの取り付けが欠かせないが、衝撃を受けた際に外れるようにしてある。取り付けが強固だと衝撃をまともに受けてしまうのだ。

 4輪のレースでは首を保護するHANSの装着が普及している。4輪用ヘルメットはチタン製のアンカーを備えるが、2輪用にはない。

 これまでの説明で、2輪で走る場合は2輪用ヘルメットを、4輪では4輪用を被るべき理由がおわかりいただけるだろうか。

文・世良耕太 写真・長谷川徹

2輪用のアライ「RX-7RR5」の開口部は、視認性を優先し、4輪用と比べて広くとられている。極端な前傾姿勢でも視界を確保しているのが特徴。

アライ「RX-7RR5」の内装は取り外して洗濯することが可能。肌に触れる部分はベト付かない速乾性素材を採用し、内装自体にも通気性を持たせている。

アライの場合、2輪用のシールドの厚みは2ミリとしている。専用のホルダーを介して装着されるので脱着も容易。状況に合わせて即交換できる。

「RX-7RR5」の「エアロフィン」(半透明)は、高速でヘルメットのグラ付きを抑える。様々な形状の穴の部分は全てベンチレーションシステム。

「RX-7RR5」のマウス部のベンチレーションは、前傾姿勢に合わせた形状。シールドの内側に外気を吹き付け、(黒部分)曇りを除去する機能を持つ。

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