バケットリストとは、生きているうちにやってみたいと思ったことを書き出すリストのこと。
それは、やらなければならないことではなく、あくまでも自分がやりたいことだけを記すもの。2008年に日本公開された映画『最高の人生の見つけ方』で有名になったバケットリストは、「kick the bucket(首を吊る踏み台のバケツを蹴る)」というスラングを語源としているが、最後まで人生を楽しもうという意味が込められている。
バケットリストを作ると自分が見えてくる
文・山下敦史 写真・長谷川徹
「大型二輪免許を取る」「バイクで一人旅をする」……。
せめて50歳までにはかなえたいと思っていたことの一部だ。本誌読者からすればまあ他愛もない願望だろうけど。それでも、30代半ばくらいだったかな、貧乏ライターの僕にとっては、これくらいならなんとか実現できるかなと思えるもので、“バケットリスト”を作るなら筆頭に記される項目だったのだ。
それが50歳どころか60歳のほうが近くなってるんだから時が経つのは早い。まあ完全に言い訳だけど、40歳少し前に子供を授かって以来、めまぐるしく日々が過ぎ去っていった。それ自体はまったく後悔はないんだけど、やりたいことの多くは、いつかやろう、そのうちやろうと、どんどん頭の片隅に追いやられていった。よくある話だ。
人生も後半戦に入って初めて、“いつか”も“そのうち”も自分で作らなくては来ないと知る。これもよくある話。ここでやっとバケットリストが現実味を帯びる。子育ても終わりが近づいて、お金はないけど、何かを始めることくらいはできるかもしれない。
そこでふと思うのだ。あれ? 俺って何をやりたかったんだっけ? と。
リストに書き出すという行為は、自分に向き合うことでもある。やりたいことリストとはいうけれど、別にそれは、どこかに出掛けたり、何かをすること自体が目的ではなくて、それらを通じて、自分は何者か知るためのものなのだと僕は思う。大事なのは、“やりたい”であって、“やらなきゃいけない”にならないこと。リストに追われて、やり切るまでは死ねない! となったらそれはもう呪いだ。極端なことを言えば、1つでも2つでも達成できればもうけもの、くらいでいいのだ。まあさすがにそれは寂しいから、優先順位とか難易度とかを考えてモチベーションを維持したほうがいいとは思うけど。「バイクで日本一周!」が大目標なら、そこに至る中小の“やりたいこと”を設定して、手始めに1泊でも日帰りでも行ってみる、といった具合だ。自分の限界を知った上で改めて挑むもよし、「バイクで全県制覇」ぐらいにするのもよし、ここまででいいや、でも構わない。少なくとも、やりたいことをやろうとしたのだ。誰に言われるでなく、追われるでもなく、自分から追って捕まえたのだ。これは大きな成果だ。
子供の頃、時間があんなに長く感じられたのは、やらなきゃいけないことより、やりたいことのほうが遙かに多かったからじゃないだろうか。明日は何をして遊ぼう、学校の帰りに知らない道を通ってみよう。そんなことばかり考えていた。それがいつしか、やらなきゃいけないことが増えていき、やりたいことは埃を被っていった。
僕らの世代こそが、もう一度それを逆転できるいい時期にいるのだと思う。バケットリストを作ることは、やりたいことの埃を払ってくれる。自分がどんな人間でいたいのかを思い出させてくれるのだ。最初から100も項目がなくていい。思いつくだけ書いて、できそうなものに手を出しているうち、きっと新しい“やりたいこと”が生まれてくるはず。たとえ辿り着かなくたって、夢だか目標だかに近づいていける人間だと証明してやるのだ。
SUZUKI GSX-8S(写真は2024年モデル)
装備重量:202kg 最高出力:59kW(80ps)/8,500rpm
最大トルク:76Nm(7.7kgm)/6,800rpm
燃料消費率(WMTCモード):23.4㎞/L(クラス3、サブクラス3-2)1名乗車時
Atsushi Yamashita
「バケットリストと向き合ってみる」の続きは本誌で
バケットリストを作ると自分が見えてくる 山下敦史
やりたいことは公開するべき 山下 剛
最期まで未完成のバケットリスト~Two Star 柴﨑美奈子さん 若林葉子