編集前記 Vol.18 5年先のためのオフ会

文・神尾 成

先月のゴールデンウイークに音楽系YouTubeのオフ会に参加した。

 普段ならそういうミーティングの知らせを見ても、自分には関係のないものとして受け流していたのだが、今年の初めにコンサート会場でオフ会を主催するYouTubeの配信者と偶然出会い、その後メールで参加を促されたことから思い切ってみたのだ。

 とはいえSNSをはじめとしたインターネットのコミュニティに苦手意識があったので、参加を申し込んでからも何度かキャンセルすることを考えた。オフ会が開催される前日の夜まで興味よりも憂鬱が上回っていたのだ。しかし実際に参加してみると、同じ音楽を好んで聴いてきたひと達の集まりだけあって共通の話題も多く、大半が同世代だったこともありストレスを感じることはなかった。一度に多くの人と会ったことで気疲れこそしたが自分なりにオフ会を楽しむことができたのである。

 このようなオフ会と称したミーティングが、アニメやスポーツファン、クルマやバイクなど、あらゆる分野で世代を問わず盛んに行われていることは知っていたが、自分が参加したことで改めて気づいたのは、趣味をより深く楽しむには“同好の士”とのリアルなコミュニケーションが大切だということだった。現代はインターネットでほとんどの事柄をすぐに調べられるようになったが、オフ会で同じ趣味の人たちと話してみると、インターネットに載っていない情報や趣味に対しての具体的なアドバイスが得られた。さらにOVER50世代の参加者はSNSなどへ書き込む人が少ないので、思いもよらず若い頃の貴重な体験談を聞くこともできたのだ。

 しかし僕自身がそうだったように最初の一歩を踏み出すには勇気が必要だ。もちろん個人差はあるだろうが、それなりの年齢になると、いまさらそこまでしなくても、という気持ちになるし、そういうのはガラじゃないから、とカッコつけたくもなる。だがクルマやバイクに限らず、これまでやってきた思い入れの強い趣味があるのなら、“将来のために”少し開き直ってオフ会やミーティングに参加してみることをお勧めする。満足できるかは分からないが大きな後悔はしないはずだ。

神尾 成/Sei Kamio

2008年からaheadの、ほぼ全ての記事を企画している。2017年に編集長を退いたが、昨年より編集長に復帰。朝日新聞社のプレスライダー(IEC所属)、バイク用品店ライコランドの開発室主任、神戸ユニコーンのカスタムバイクの企画開発などに携わってきた二輪派。1964年生まれ59歳。

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