先ごろ群馬県の嬬恋で開催されたスズキVストローム250SXの試乗会に参加しました。
私はオフロードがあまり得意ではないのですが、今年の夏にヒマラヤ山脈をツーリングする「モトヒマラヤ」で久しぶりにダート走行を味わったことや、以前試乗したスズキ ジクサーSF250のエンジンフィーリングが気に入っていたので、「ジクサー系エンジンのアドベンチャーバイク」と聞いて興味が湧いたのです。
これまでアドベンチャーバイクというと大きくて重いイメージがあり、自分には関係のないジャンルだと敬遠していました。しかしVストローム250SXは、メインフレームもジクサー250と共通で装備重量が164㎏しかないと知り、私でも乗れるのではないかと期待したのです。
実際にVストローム250SXに跨ってみると、シートが少し高く、166㎝の私では片足のつま先が地面に触れるくらいしか着きません。今回は、立ちゴケの不安を減らすため、通常より25㎜低いオプションのローシートに変更してもらって試乗することにしました。
いざ走り出すと、ジクサーSF250よりも全体的にトルクが太くなっており、250㏄ということを忘れるくらいパワフルです。これはエアクリーナーのインテークカバーを廃止した効果らしく、ジクサーSF250ほど高回転でのドラマ性はないのですが、右手と後輪が直結したような感覚を楽しめます。峠道では、フロントが19インチのせいか、80年代初期のロードスポーツに近いハンドリングで、オフロードバイクに多い21インチの癖もなく、17インチほど神経質にならずにブラインドコーナーに入っていけます。これについては、秀逸なサスペンションが貢献しているところも大きく、バンク中の荒れた路面のいなし方が絶妙でした。
そして未舗装路では、車体が軽量なので不安を抱かずに走行することができます。もちろんオフロードに特化したモデルと比べて軽いとはいえませんが、むしろその適度な重さが安定性に結びついているように感じました。スピードを求めずに、ラフロードを淡々と走破して確実に旅を続けていく、それがアドベンチャーバイクの乗り方なのかもしれません。
さらに装備の面をみると、キャストホイールを採用していることや、アルミ製のキャリアが標準装備だということに好感を持ちました。多くのオフロードバイクが使用するスポークホイールは、基本的にチューブ入りですが、キャストホイールは、パンク修理が容易なチューブレスなので、旅先でのパンクに対するストレスを軽減します。キャリアについては、リアシートの座面と段差がないので、大きな荷物が積みやすく、専用のアダプタープレートを取り付ければ、簡単に脱着がおこなえる鍵付きのトップケースを装着することもできます。他にも景観を阻害しない形状のウインドスクリーンや、万一の際にレバーを保護するバーエンドまで回り込んだナックルガードに「リアルなバイク旅を分かっているな」と嬉しくなったのです。
20代の頃の私は、毎年夏になるとテントで寝泊りしながら全国を走り回っていました。最初はオンロードバイクにキャンプ道具を積み込み、長距離を走ることで満足していたのですが、何度か同じ場所を訪ねているうちに、『ツーリングマップル』に載っているダートや林道を走ってみたくなってオフロードバイクに乗り換えたのです。
今では考えられませんが、富士山の中腹までバイクで登ったり、50キロ以上続く北海道のスーパー林道にも入っていきました。火山灰とガレ場の先に広がっていた雲海を観たことや、日本で最後に発見された湖として有名な「シュンクシタカラ湖」へ続くダートを走れたことは、忘れられない思い出です。私にとってツーリングは、オンであれオフであれ、未知の世界へ飛び込んでいく冒険だったのです。Vストローム250SXは、「もう一度ロングに出たい!」と、仕舞い込んでいた冒険心を刺激してくるバイクでした。
スズキ Vストローム250SX
エンジン:油冷4サイクル単気筒SOHC 4バルブ
排気量:249㎤ 装備重量:164kg
最高出力:19kW(26ps) / 9,300rpm
最大トルク:22N・m (2.2kgm) / 7,300rpm
ローシート 25,520円(税込)
トップケースアダプタープレート 5,170円(税込)
トップケース27L 19,800円(税込)
Kakuko Kamio