第1作の公開から実に38年。シリーズ最新作にして完結編「ランボー ラスト・ブラッド」が6月26日に日本公開される(予定)。
言わずと知れた、「ロッキー」と並ぶシルヴェスター・スタローン主演の長寿シリーズだ。あまりに凄惨だった前作「~最後の戦場」からも早12年。ランボーの苦悩と戦いにどう決着を付けるのか、ぜひ見届けたい。
とはいえ、この記事は申し訳ないが新作の紹介ではなく、それにかこつけてスタローンとクルマについて書き連ねてみようというものだ。スタローンにはあまりクルマのイメージはないかもしれないが、実は「ロッキー」で脚光を浴びる少し前、彼はレーサー役で一部マニアに知られる存在となっていた。B級映画の帝王ロジャー・コーマン製作のカルト作「デス・レース2000年」だ。近未来の独裁国家アメリカで行なわれる殺人すらありの大陸横断レースを描いた作品で、スタローンは主人公のライバル役を演じていた。正直、わずか1年後に大スターになるとは思えないオーラのなさだ。
全然ほめてないようだけど、実はスタローンの魅力は、弱さとか暗さとか情けなさとか、ネガティブな部分にあるように思う。実際、出世作「ロッキー」を始め、しがない男を演じた時のほうが印象深い。「ランボー」第1作もそうだ。主人公はまだ戦闘マシーンじみた戦士ではなく、祖国アメリカに見捨てられたベトナム帰還兵だった。だが生死の境をくぐり抜けた経験が男を闘いに駆り立てる。警察署から脱走したランボーが、目前にあるキー付きのパトカーには目もくれず、走ってきたヤマハXT400のライダーを叩き落とし、バイクが倒れる前に飛び乗って山へと向かう伝説の場面。クルマよりバイクを選ぶ状況判断と無駄も隙もない一連の動きに、彼の戦士としての凄みが見て取れた。無敵の肉体と傷ついた心のアンバランスが彼を共感できる主人公にしていたのだ。
最後は「オーバー・ザ・トップ」を。スタローンが演じるのは、訳あって富豪令嬢だった妻と息子を捨て、トラック運転手として生きるしがない男。重い病気を患う妻を見舞うため、主人公は10年ぶりに再会した息子とトラックでの旅に出る。粗野だが誠実な男をスタローンが好演し、トラックが親子の絆を取り戻すための重要な道具として使われているなど、名作とはいえないまでも、クルマ映画の佳作として嫌いになれない。そう、スタローンは好きというより、嫌いになれないスターなのだ。今でも彼は多くの主演作で自ら脚本を書く。実を申せば彼の脚本家としての腕には疑問が残るのだけど、売れるかわからない「ロッキー」の脚本を書いていた昔から、それだけ映画が好きなんだなあと思うと〝嫌いになれない〟のだ。70過ぎとは思えない鍛え上げた肉体すらも、ナイーブな心を隠すためと思えてくる、そこが長年彼がファンに愛され続けている理由なのだろう。
ランボー 最後の戦場
ブルーレイ:2,000円(税込)/DVD:1,143
(税込)
発売・販売元:ギャガ
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