eスポーツとは端的に言うと、ビデオゲームでのバトル、つまり「電子競技」というジャンルだ。
今、世界中で4億人以上の視聴者がいるとされている。アマチュアから賞金1億円以上も稼げるプロまで様々なゲーマーがおり、2019年には、「リーグ・オブ・レジェンド」、「Dota 2」、「オーヴァーウォッチ」、「フォートナイト」などの人気eスポーツ競技は、何と1000億円以上の収益を達成すると予想されている。
さて、eスポーツの中のレーシングゲーム。その中でも大人気なのは、ポリフォニー・デジタル社が製作する「グランツーリスモ」、通称グランツだ。国際自動車連盟「FIA」が世界で初めて本物のモータースポーツとして認定し、レーシングゲームの中でも最も格が高い。昨年から始まった「FIA GT選手権」は、今、非常に人気だ。今年3月にパリで始まったシーズンは、ニュルブルクリンク、ニューヨーク、ザルツブルクに続き、10月末の東京モーターショーで行われる最終戦まで全5戦で構成される。そして11月の決勝はモナコ。グランツのこの大会は、最近話題のeスポーツの最も進化版、いや究極版だ。
このシリーズの凄いところは、リアルかバーチャルか、区別がつかないほど映像がきれいなことだ。各会場の大画面の前に設置された特設ステージの上にグランツのコンソール(ハンドル、シート、薄型テレビとペダルが付いたフレーム)が12人分置いてある。主役は、予選を勝ち抜いて全世界から集まった55人のゲーマー、いやドライバーたちだ。
さて、グランツのシリーズは2つある。1つは個人戦の「ネイションズ・カップ」で、もう1つはチーム戦「マニュファクチャラー・シリーズ」だ。まずは、24人が「ネイションズ・カップ」の4戦に挑む。彼らが走るバーチャルのサーキットは、ヨーロッパの代表的なサーキットで、マシンはコブラやカウンタックのようなクラシックカーからF1のフォーミュラカーまでさまざま。それを各選手がすべて「乗り」回す。本物のレース同様、各選手はレギュレーションに従って、燃料補給とタイヤ交換のタイミングを上手く計算して作戦を立てなければならない。
今年の「ネイションズ・カップ」は、昨年の王者でブラジル人のイゴール・フラガ選手が凄まじいバトルの末、再び優勝を手にした。僕がニュルブルクリンク大会を取材して感動したのは、グランツがクルマとコースだけでなく、エンジンサウンドを徹底的に再現することだ。と同時に、ほとんどの選手は18歳から27歳とまだ若いのに、プレッシャーを感じながらも非常に落ち着いていて、丁寧に全開でバトルできることだった。
グランツがFIAにモータースポーツとして認定されたということは、FIA GT選手権のチャンピオンは、F1王者のルイス・ハミルトン選手と同じステージでトロフィがもらえるということ。グランツの選手たちが走るコースはバーチャルでも、手にするトロフィはもちろん、本物だ。こんなにリアルワールドとの境目を越境する eスポーツはないだろう。
Peter Lyon