femme spacial issue インポーターで働く女性たち

文・若林葉子 写真・藤村のぞみ

日本の女性は強い。自分の人生をデザインできたらもっと素敵。

INTERVIEW_01

FCAジャパン マーケティング本部長
ティツィアナ・アランプレセさん

 ティツィアナ・アランプレセさんは、フィアット・クライスラー・オートモービルズ・ジャパン(FCA)のマーケティング本部長である。社長の右腕として、日本のマーケティング全体を束ねる重要なポストだ。当然ながら、その中には日本の女性に絶大な人気を誇るフィアット500も含まれる。彼女が日本にやってきた2005年当時、フィアット購入者における女性の割合はブランド全体で15%、今は60%にものぼるという。いったい何がそんなに女性たちを引き付けるのだろう。

 「言うまでもなくフィアットは女性のためだけのクルマではありませんが、女性に支持されるのはとても嬉しいですね。フィアットは今年120周年を迎えたのですが、ちょうどイタリア人に、もうちょっと前に進みたい、もうちょっとチェンジしたいという機運が高まったときに生まれたので、そもそも〝前向き〟なスピリットが詰まっているんです」とティツィアナさん。誰もが買えて、毎日楽しい生活ができること。小さい中にデザインの要素がぎゅーっと詰まっていて、コンパクトでシンプルで機能的。

  「そう、なんか冷蔵庫みたい!」 これには私も思わず笑みがこぼれた。もちろんティツィアナさんはフィアットのクルマがシロモノ家電みたいだと言ってるわけではない。目的がシンプルで、使い方にも複雑なものは何もなく、四角形の箱に整然と食べものが並んでいて、パッと開けたときなぜかワクワクする。こんな表現ができるなんて、ティツィアナさんはとても自由で楽しい人なのだ。

 そんなティツィアナさんが2018年に立ち上げたのが〝チャオドンナ〟だ。イタリア語のあいさつ「チャオ」と、イタリア語で女性を意味する「ドンナ」を合体させた言葉で、フィアットが日本のみならず世界の女性を応援するプロジェクトである。

 「フィアットが多くの女性に支持されればされるほど、私たちももっと女性に何かをフィードバックしないといけない、とそう考えたのです。やりたいことは本当にたくさんあるのですが、まずはオンライン・オフラインに関わらず、女性のミーティングポイントを作ろうとしています」 フィアットのホームページを覗いてみると、〝チャオドンナ〟のサイトには女性にフィーチャーした、いろいろなコンテンツが随時アップされている。また10月にはチャオドンナとして初めて、フィアットのオーナーやそうでない方も交えて、試乗を含めた女性限定のイベントも予定されている。

 でもここで大事なのはその目的が「フィアット車」を買ってもらうことではないということだ。チャオドンナより7年遡る2011年から、フィアットは「Share with FIAT」として社会貢献活動に取り組んできた。「私はつねづね女性のエンパワーメントが大事だと思ってきました。だから、若いうちから教育を受ける機会を与え、自国に戻って、国を変えることのできるような人材を育てる活動もサポートしてきました。〝チャオドンナ〟でも、フィアットのクルマを通じて、ヨーロッパの文化やヨーロッパの女性のあり方などを日本の女性にもっと紹介していきたいと思っています」

 さらに「女性には大きな責任があるのです」とティツィアナさんは続ける。今、社会は変わり目にある。それは多分、誰もが実感していることだ。女性も自立のために仕事をする。結婚して子供を産んでも仕事がしたい。その時、多くの場合、家の中のことをどうシェアするかという問題が起こる。それはどこの国のどのファミリーでも大きな闘いだ。私たち女性は国や企業や社会に変わってほしいと言う。でもまず自分が、自分の父親に、自分の夫に、自分の子供に働きかけて、彼らをチェンジさせないと決して社会は変わらない。自分の娘にどんな人生を送ってほしいか。それを考えれば、自分も努力しなければならないのだ、と。ティツィアナさんの言う責任とはそういうことだ。

 「でも日本の女性はイタリアの女性よりずっと強いわね。どんなタフな状況でも、どんなプレッシャーの中でも自分のことをしっかりやれる人が多い。あとは自分が何をやりたいか。そのためにはどうしたらいいか。自分の人生をデザインすることができたら、もっと素敵だと思う」

 ティツィアナさんは、女性がもっと本来のパワーを出せるような社会を目指して活動している。そして、人が自由な意思で力強く生きようとするとき、クルマはいつだって大きな力を与えてくれるのだ。

Tiziana Alamprese

伊・フィアットグループにおいて国際的な要職を歴任した後、2005年にフィアットカントリーマネージャーとして来日。現在はFCAジャパンのマーケティング本部長・ディレクターとして、フィアット、アバルト、アルファ ロメオ、ジープのブランド再構築を使命として業務に取り組んでいる。これまでに得られた様々な知識と地元文化に対する愛情とを創造的な手法で融合させることにより、独自のマーケティング哲学を築き上げている。

フィアットミーティング

日時:2019年10月12日(土)
午前の部10:00~12:00(定員9名)
午後の部14:00~16:00(定員9名)
会場:未定(東京都内)*当誌編集長の若林もゲストとして参加予定。
お申し込み等詳細は
www.fiat-auto.co.jp/ciao_cp/ciaodonna/

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