結局のところ、刺さる世代が多く駆けつけているのだと思う。2018年10月に鈴鹿サーキットで開催されたF1日本GPでは、かつて日本GPをにぎわせたF1マシンのデモ走行が行われた。
ロータス100TやベネトンB189、マクラーレンMP6/6など10台が集結。中嶋 悟やジャン・アレジ、フェリペ・マッサらがステアリングを握った。
個人的なハイライトは、ミカ・ハッキネンがマクラーレンMP4-13を走らせたことである。MP4-13を駆るハッキネンは1998年の日本GPを制し、M・シューマッハとの争いを制して初めてワールドチャンピオンになった。「あれからもう20年か」「いま見るとMP4-13てずいぶん小さくみえるなぁ」「タバコのスポンサーがなつかしい」などといった、さまざまな記憶が呼び起こされる。往年のF1マシンを見た人がそれぞれ、人の数だけその人なりの記憶を呼び起こしたことだろう。サーキットにこだまする懐かしい音に引き寄せられるようにして、チームウェアを着たメカニックやエンジニアがピットウォールに足を運んでいた。
11月17日~18日には、その鈴鹿サーキットでヒストリックF1のレースが開催された。1985年までの3ℓノンターボF1マシンによるチャンピオンシップで、F1と同様、FIAの公式シリーズである。2017年はデモレースが行われたが、2018年は公式戦に昇格した。JPSカラーのロータス71や79、マクラーレンM23にウイリアムズFW07Bといった往年のF1マシンがサーキットを流して走るのではなく、真剣にレースを行うのだ。迫力が違う。
ヒストリックF1のレースは、鈴鹿サウンド・オブ・エンジンというイベントの会場で行われた。2015年から始まった同イベントはレジェンド級のF1に加え、グループCカーや1960年代のプロトタイプが集結し、デモ走行やデモレースを行う。目と耳で歴史を体感するのが主旨で、回を重ねるごとに注目度が増している。
11月25日には富士スピードウェイでトヨタ・ガズー・レーシング・フェスティバルが開催された。その翌週、12月2日にはやはり富士スピードウェイでニスモ・フェスティバルが開催。12月9日にはツインリンクもてぎでホンダ・レーシング・サンクス・デーが行われた。自動車メーカー系3社のイベントはいずれも、スーパーGTやスーパーフォーミュラなど、その年のシリーズ戦を応援してくれたファンに対し、感謝の意を表すのが主旨だ。だが、どのイベントにも必ず、ヒストリックカーが展示されたり、走行したりする。それも、かなりの台数。少なからず、ヒストリックカーを目当てに会場を訪れる層がいる。
昔聴いた曲を久しぶりに聴くと、その頃のときに甘酸っぱい思い出が瞬時に呼び起こされるように、往年のレーシングカーを目にすると、当時熱くなった記憶が呼び起こされ、胸の奥底にボッと炎がともる。そういう体験を求める声が大きくなっているのだろう。ヒストリックカーにまつわるイベントは今後ますます盛んになりそうだ。
Kota Sera