思い込みを捨ててみる。これまでのやり方を変えてみる。それがここ最近のaheadの大きなテーマである。
そうすることでクルマやバイクの魅力を再発見できると信じているからだ。
ふんだんにお金を掛けなくても、若い頃のような体力がなくても、自分の目をちょっといつもとは違う方向に向けてみるともう一度”ハマる”ことは、きっとできるはず。
世界で一番小さなモータースポーツ
幼少の頃に始めたモータースポーツをいまだに続けている!!…幼少? 半世紀になる。そう、初めて手にしたのは幼稚園児、選んだのはホンダS600だった。
これ、正式名称はスロットカーと言う。スロット=溝を使って走行するクルマの模型である。いまのミニ4駆世代に相通じるところがあるかも知れない。決められたコース上で、他車と競う、レースをするという意味では同じ。違うのは、スロットカーは自分がコントローラーのトリガー(レバー)を「握り」加速する。離す(戻す)と「ブレーキ」だ。
トリガーを全開で握り締めた直線から、トリガーを戻して減速して、コーナーを曲がり切れる速度に落とし、コースアウトしない限界ギリギリの速度にトリガーの握り具合を調整しながらコーナーを立ち上がる。それを操縦するのはコントローラーを握るドライバー本人だ。
スロットカーの発祥はイギリス。鉄道模型からクルマに発展して、家庭で楽しむホームコースが人気に。それが、アメリカに飛ぶや、広大な土地柄故、1周数十メートルの専用のサーキット場を造った。〝遊びの天才〟は家庭でチマチマなどしていなかった。
同時に8台が走行可能な8レーンで隣りのクルマと競い合う。これが爆発的ブームになり、模型メーカーはこぞって走るクルマのモデルを開発。当然日本にも上陸するや、サラリーマンの会社帰りの楽しみに発展した。JRの各駅に必ず一店舗は見つけられる時代もあったほど。1周90-100m級の超度級サーキットも出現したが、日本人は熱しやすく冷めやすい。その後は人気と下降を繰り返しながら、現在は、昔やっていた、やりたかったユーザー層で、もう何度目かのブームが再燃なのである。
筆者は、その名のとおり〝モーター〟レーシングそのもののナスカーオーバルレースのバトルが楽しくてやめられない。
オーバルだからインコースは最も走行距離が短く、逆にアウトコースは長い。そのままではインコースが有利だ。だがイン側はコーナーのアールが小さい。つまり減速をアウト側よりも多く、早くしなければ曲がれない。
一方アウト側はアールが大きい故、減速もそこそこにハイスピードのまま曲がる。結果、1ヒート5分間の周回数を競うレースは、8レーン8台全てのマシンが大バトルを展開する。それも5分間延々。相手の強いところ、弱いところを見極め、スキを突く。これぞ正にモータースポーツで、筆者は実車のレースに辿り着くまでに、このスタート時のドキドキハラハラと、レース中の駆け引きを嫌というほど味わってきた。それゆえ実車のレースにたどり着いてからもスタートは平静そのもの。駆け引きも、一歩引いて相手の弱みを探るなど、新人らしからぬ妙に冷めた目でレースを展開することができた。
おかげで上位カテゴリのレースへもステップアップできた。
オーバースピードでコースアウトしても怪我しない。雨でもレインタイヤの必要はない。仕事帰り、夜にレースが楽しめる。というワケで、一時休止もあったが、その気になれば体力の問題などなくいつでも復帰できる手軽さもいいのであーる。
編集部でも体験させていただいて分かったことは、「入り口は簡単」ということ。まっすぐ走らせるだけでも難しいラジコンに比べると、とっかかりの早さは雲泥の差だ。溝が切られているので、ちゃんと走ってくれる。操作はトリガーを握る(アクセルを開ける)・離す(ブレーキを掛ける)、これだけ。だから、初めて走らせてもとにかく楽しい! 子どもでも大丈夫だ。
とはいえ、奥は深いのだなと思うのは、左端の写真のように、常連さんはみんな自分の工具箱を持っていて、走行の合間にマシンの調整をしたり、セッティングを変えたりしている。一人で、ドライバー、エンジニア、メカニックの三役を担うのだ。実車よりはるかにリーズナブルだけれど、レースとなれば実車と変わらず真剣勝負の白熱した闘いが繰り広げられる。
バンプロジェクトは往年のレーサーたちも集ったことのある由緒あるサーキット。メインコースは2週間ごとにサーキットとオーバルが入れ替わる。オーバルは8レーン×62m(IN)、8レーン×33m(OUT)。
住所:神奈川県横浜市港北区新羽町412-2
Tel:045(834)7673 営業時間:14:00~23:00
定休日:毎週月曜日(祝日の場合は次の日が代休)
www.banproject.com
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