ヘルメットの種類 第3回・二輪

文・伊丹孝裕

ヘルメットの種類を紹介する本企画。最終回はアライの二輪用ヘルメットについて詳しく解説する。アライの「安全に対する徹底したこだわり」の根底には、社長を筆頭に社員ひとりひとりが「自分たちもライダーである」という強い思いがある。

 アライニュースという名の企業広告がある。これはアライヘルメットが自社の様々な情報をニュースのようなスタイルで記事化し、メディアに掲載しているものだ。初めての掲載はおよそ40年前の’77年3月のこと。以来、それは絶え間なく今も続いている。

 このニュースが特徴的なのは、たとえ不利な情報でも事実なら隠さず情報を開示していることだ。例えば、『アライがレースを重要視するわけ』(’79年11月)というタイトルの記事では、絶対に曇らないという自信があったシールドにもかかわらず、星野一義選手に2周で突き返されたエピソードを率直に伝えるなど、決して自画自賛を目的にしていない。

 その一方で、『変形ヘルメットの流行について』(’83年11月)では安全よりもデザインを優先した海外製品に対して「バカな風潮」と断罪し、『すべての人に、喜びを。』(’17年4月)では、「すべてのライダーのために進化を追い続けます!」とまるで青年の主張のような理想を堂々と掲げていたりもする。

 要するに生真面目でまっすぐでピュアな会社なのだ。だから、国内外に多くの拠点を持ち、売上高72億円を超える(’15年)世界でも指折りのヘルメットメーカーにもかかわらず、シェア拡大のためのビジネス構想やブランドイメージ向上のための戦略といった生っぽい話を社員から聞いたことがない。その代わり、企業としての存在意義はユーザーの「安全」と「安心」であり、そのために必要なのは「熱意」と「誇り」だと大真面目に答えてくれる。

 そんなアライの根底にあるものは、「いい製品は必ず選ばれ、評価される」というごくシンプルな信念だ。実際にそれを示しているのが前号でも紹介した、F1ドライバーの多くが特別な契約がないにもかかわらずアライの製品を被っているという事実だろう。

 そうした愚直なモノ作りは、そもそも2輪用のヘルメットに端を発するもので、その象徴がRX-7シリーズに他ならない。その初代モデルはフルフェイスのフラッシグップモデルとして’67年に登場し、当時の大卒初任給に相当する2万5000円という高級品だったにもかかわらず、抜きん出た軽さと強さ、優れたフィット感を多くのライダーが高く評価。それから半世紀が経ってもその地位は揺らぐことなく、モデルチェンジを繰り返しながら現在のRX|7Xへと進化している。

 つまり、RX|7Xを手に取ればアライが誇る最新にして最良の技術のすべてを体感することができるというわけだ。その一例がVAS(ヴァス)システムと呼ばれる新しいシールドの構造で、これによって今までは困難と思われていた帽体の低い位置にその開閉機構を設けることが可能になった。具体的には従来モデル比で24㎜も下方へ移設され、シールドと帽体の段差が最小限に留められた結果、より滑らかな形状と低重心化を達成。転倒の際、ヘルメットが路面や障害物に引っ掛かるリスクがさらに減少したのである。

 衝撃から頭部を守ることはもちろん、アライはなによりもいかにその手前で「衝撃をかわす」かにこだわってきたメーカーだ。その意味でRX|7Xの開発によって、そのポリシーはより強固なものになったに違いない。また、4輪用ヘルメットのノウハウもフィードバックされ、衝撃を受けても容易にシールドが開閉しないVAS|Vロックシステムの採用も安全性の向上に貢献。もちろん各種ディフューザーやダクトの構造、内装の快適性も引き上げられている。

 こうした数々の性能は、より開放的なオープンフェイスのSZ|Ram4やクラシックMOD、オフロード走行を想定したV|クロス4やツアークロス3、ハイパーTプロといったモデルにも踏襲され、特に「かわす」性能へのこだわりはどんなモデルにも例外なく共通しているもの。そのため、アライは帽体の強度や構造が進歩した今も尖った形状や凹凸の多いヘルメットを認めず、他のどのメーカーよりも滑らかな表面であることを堅持。40年以上前に定められた国際規格も頑なに守っている。

 商品力やシェアのためではなく、すべてはライダーの安全のため。それこそがアライの誇りだからだ。



お問い合わせ先:アライヘルメット
TEL:048(641)3825
URL:www.arai.co.jp

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