FEATURE01 COTYを獲得したスバル インプレッサスポーツ/G4

文・桂 伸一

 日本カー・オブ・ザ・イヤーは、選考委員が選んだ5台の中から最も優れていると評価できるクルマに持ち点の25点から10点を配点するシステム。筆者はその10点をインプレッサに与えた。

 筆者の選考基準のひとつは自分で買う気持ちになれるか、ヒトに薦められるかどうかである。

 まず、クルマにとって最も重要な要素にカタチ、スタイリングがある。インプレッサは“もの凄くカッコいい”というほど飛び抜けた存在ではないが、癖が無く、「賛」はあっても「否」は少ないと思えるクリーンな佇まい。従来の“ちょっと可愛い”から、線も面も引き締まり少し大人になった。そこが欧州車系のデザインを感じさせ、落ち着いた雰囲気につながっている。頑固一徹のスバルは真面目な青年になっていたのだ。

 次に、個人的にもっとも気になるのが操縦安定性だ。と言うとジャーナリスト兼レーサーという職業柄から、コーナーを果敢に攻めたり、超高速走行での評価と誤解されやすいがそれは違う。

 実はこれがインプレッサ最大の変化と進化で、今後のスバル車がすべてこの方向に向く先陣なのだから重要な1台だといえる。試乗すれば誰もが、癖の無い自然で滑らかな乗り味と操縦感覚を感じとれるはずだ。

 このクルマは操作したことに対する動きが自然で忠実に走りに反映されている。その理由は、リアサスペンションをWウイッシュボーンに変更した点を含めた新世代のシャシー、SGP(スバルグローバルプラットフォーム)を採用したことに尽きる。

 「走る」「曲がる」「止まる」という一連の動きがアクセル、ステアリング、ギヤチェンジ、ブレーキのそれぞれの操作に対して忠実なのである。アクセルを強く踏んだときの急な飛び出し感もなく、ステアリングも過敏になりすぎていないなど、操作したことが正確かつ、流れるようにクルマの動きにつながっているのだ。

 そこが日本の自動車に欠けていた部分。スバルがインプレッサで示した新たな方向性はそういう意味でも高く評価できる。

 スバルといえば4WDと水平対向エンジンがお家芸だが、今回のインプレッサは前輪駆動だ。しかし4WDじゃなくても充分ではないかと思わせるほど、4輪で大地をしっかり捉えた安定性と安心感もあった。

 一方、エンジンは水平対向独特のドロドロしたエンジンサウンドが静かになったのは少し残念。実際5,000rpm付近でようやく水平対向かな、くらいのサウンドが聞き取れる程度。しかしどこのメーカーの直列4気筒だろうと思うほど滑らかに回るのは特筆もの。

 トランスミッションはベルト駆動のCVTだが変速ショックもなくフラットに高速まで導く、という点では二重丸だが、個人的には踏み込んだアクセルに車速が遅れて追従してくるCVTの応答の遅れが(空転感とも言うが)少し気になる。とは言え今年の日本車を代表するに相応しい1台だと思う。

日本カー・オブ・ザ・イヤーは︎日本のモータリゼーションの発展と最新モデル及び最新技術の周知を目的として、1980年に創設された。前年11月1日~当年10月31日までに日本国内において発表された乗用車が対象となり、60名を上限とした選考委員の投票によって決定される。2016-17年度は2位にトヨタ・プリウス、3位にアウディ・A4シリーズが選ばれた。

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