femme FEATURE1 ブリティッシュスタイルとロッカーズ

「アメリカン乗りですか?」と、良く聞かれるのだが、そんな時は大抵革ジャンを着ている。

 確かに、革ジャンにデニムにブーツといったスタイルは、映画『The Wild One(邦題・乱暴者)』のマーロン・ブランドが流行らせたものだし、アメリカのライダー集団をイメージさせるので、そう言われても仕方がないと思っている。でも、『The Wild One』でマーロン・ブランド演じるジョニーが駆っていたのはアメ車じゃなくて、英国車のトライアンフ。そう、私が革ジャンを着ているのは、アメリカンではなく、ブリティッシュスタイルがイメージなのだ。

 そもそも私がバイクに乗り始めたのは、この時代のファッションがきっかけでもあり、50年代後半から60年代に、カフェレーサーで暴れ回っていたロッカーズの影響が強い。もちろんロッカーズも、マーロン・ブランドや、伝統や秩序にとらわれないアメリカのロックシーンがお手本なので、元を辿ったら同じなのだが…。それでも国境を越えてそのスタイルは変化している。

 一番の違いはシルエットで、革ジャンもデニムも革パンも、アメリカンよりもタイト。アメリカのショットとイギリスのルイス・レザーを比べると、その違いは一目瞭然。伝統にとらわれないとしながらも、シルエットにこだわる英国人らしさを忘れていないところがなんとも“らしい”。さらに缶バッチやスタッズで個性を出しながらもスカーフを巻いて、ロングブーツにボトムをインしているのもロッカーズスタイル。私はこんなイギリスのテーラード文化が生んだ、きっちりと身体に収まるきれいなラインでありながらも尖ったスタイルが好み、ということなのだ。

 子どもの頃から誰かと同じというのが、大嫌いだった私は、いじめられていたなんて経験もある。でも、気にせずにそのままの自分を貫いていたら、いじめは自然になくなっていた。そんな経験があったからか、オトナになるにつれ保守的になってしまっていた自分に衝撃を与えたのが、ロッカーズという存在でもあった。社会に憤りを感じた労働階級の若者たち。アンチヒーローな“ロッカーズ”という生き方。社会からのはみ出し者といわれようが、自分のスタイルを貫いていた当時の彼らに、ファッションだけでなく、自分らしさを見いだして惹かれていったのかもしれない。私はきっとおばぁちゃんになっても、革ジャンを脱ぐことはできないんだろうな、と思っている。

文・サトウマキ 写真・長谷川徹(店内写真)

第三京浜港北ICからすぐの「ビッグフォー」ではベルスタッフ、エースカフェロンドン、トライアンフオリジナルなどブリテュッシュ・ライダースウェアを一堂に見ることができる。

ビッグフォー
住所:神奈川県横浜市都筑区折本町456-1
電話:045(470)3988
営業時間:10:00~19:00
定休日:水曜日・第2火曜日


定期購読はFujisanで