昨年11月、ミラノショーが開催された会場で日本のメディアは2台のアンダー400に注目した。
それが399㏄の2気筒エンジンを持つドゥカティ・スクランブラーSixty2と313㏄単気筒エンジンのBMW・G310Rで、いわゆる普通2輪免許で乗れるモデルがイタリアとドイツの2大ブランドから発表されたからだ。もっともドゥカティがこの排気量に進出するのは初めてではなく、かつてはモンスターに400㏄版をラインアップ。事実上の日本専用モデルとして、そのシェア拡大に貢献した。
では今回の2台にもそうした狙いがあるのかと言えば、状況はかなり異なる。彼らがテーマに掲げているのはヨーロッパにおける新規ユーザーの開拓と東南アジアを筆頭とする新興国でのブランドイメージの構築と見るのが正しい。
というのも、これはヨーロッパのみならず日本でも同様だが、既存のマーケットを支えてきたライダーは着実に高齢化の道を辿っているため、今後は肉体的な衰えが理由で大型バイクに乗り続けることが難しくなってくる可能性が高い。その時にこうした排気量や車格に新しいニーズが生まれるのだ。無論、それだけでは新規ユーザーの本当の開拓とは言えない。そこでEU加盟国の免許区分のひとつであるA2免許所持者向けに企画された点も見逃せない。ちなみにA2免許で乗れるバイクの条件は下記の通りだ。41psのスクランブラーSixty2と34psのG310Rはここに該当するため、免許を取得した若い世代のライダーにその性能をアピールできるのである。
そしてもうひとつ、本当に狙っているのが東南アジアやインド、南米への本格的な進出だろう。現在、これらの地域は150㏄以下の実用車がメインストリームだが、富裕層の増加やモータースポーツブームの恩恵を受け、ユーザーがより大きな排気量へとステップアップする下地が出来上がりつつある。そういった層へ向けた、ある種のハイエンドモデルの役割をそこに与えようとしているのだ。
実際、G310Rの前身モデルはヨーロッパのショーに先駆けてブラジルで披露された他、インドの提携工場に製造を委託。また、スクランブラーSixty2の多くはタイで組み立てられるなど、その足掛かりになるインフラもすでに整備されているのだ。こうした手法に先鞭をつけたのがオーストリアのK™で、RC390Rや390DUKE(排気量とパワーはともに375㏄/44ps)を筆頭とする小中排気量モデルをインドで生産し、すでに成功を収めていることも無関係ではないだろう。
つまり、ヨーロッパでは若者や年配ライダーに向けた新しい選択肢として、一方の東南アジア等ではメーカーの象徴としてそれらをリリース。高いブランド性を維持したまま、販売台数を伸ばそうという巧みな戦略がそこに見えてくる。もちろん日本では最も取得人口の多い普通2輪免許所有層への訴求を強める格好の材料になるはずだ。2輪のシェア争いは今まさに新しい局面を迎えようとしているのである。
車両本体価格:899,000円(税込)
総排気量:399cc 最高出力:30.2kW(41ps)/8,750rpm
最大トルク:34.6Nm(3.5kgm)/8,000rpm
問い合わせ先:ドゥカティジャパンお客様窓口
0120(030)292
総排気量:313cc 最高出力:25kW(34ps)/9,500rpm
最大トルク:28Nm(2.8kgm)/7,500rpm
問い合わせ先:BMWカスタマー・インタラクション・センター
0120(269)437
*日本仕様、価格および発売時期は未定
EU加盟国における2輪免許区分
●AM免許
取得年齢:16歳以上 排気量:50cc以下
条件:最高速度45km/h以下
●A1免許
取得年齢:16歳以上 排気量:125cc以下
条件:最高出力11kw(15ps)以下
●A2免許
取得年齢:18歳以上 排気量:無制限
条件:最高出力35kw(47.6ps)以下
●A免許
取得年齢:20歳以上 排気量:無制限
条件:A2免許を取得してから2年経過後