世界と闘い、俊足の4WDセダンとして数々の栄光を手にしてきたランサーエボリューションが、ファイナルエディションをもって終了すると報じられた。
ひとつの時代が幕をおろすようで、寂しさを感じた人は多かったと思う。でも、これでランエボの血が途絶えてしまうわけではない。以前から三菱のエンジニアたちを取材していると、「ランエボ譲り」というフレーズがよく出てくる。とくに印象深いのは、アウトランダーPHEVだ。どんなシステムなのか、燃費はどれぐらいなのか、メディアの興味はその辺りに集中しがちだったが、エンジニアたちはこれまで培った技術と新たな技術を最大限に活かして、世界でいちばん“走りのいい”SUVにしたかったと熱く語ってくれた。
今年4月「ランサーエボリューション」の最終特別仕様車ファイナルエディションの先行予約が受付開始された。通常モデルより最高出力を上げ、ビルシュタイン製のショックアブソーバーなどを標準装備とした。まさにランエボの集大成とも言えるモデルに仕上がっている。既に限定1,000台はほぼ完売状態となっており、発売は8月を予定している。
三菱のいう“走りのいい”とは、様々な走行状況に応じた走る歓びがあること。その歓びをもたらすには、高い安全性による確かな安心感が必要不可欠だとも言っている。それをクルマごとに最も適した内容で実現するのだが、いかに真面目に考えられているかがよく分かるのが、コンパクトカーや軽自動車だ。
例えば子育て世代をメインユーザーとするeKスペースでは、運転席の近くに後席を移動できるロングスライド機能や、エアコンの風を早く後席に送れるリヤサーキュレーター、通常のドリンクホルダーには入らないベビーマグを固定できるホルダーなど、便利で快適な装備が盛りだくさん。それはクルマの中でいつも子供が快適で安全であって欲しいという、子育て世代のいちばんの願いを叶えるものなのだと、子供を持つ身になって強く実感した。さらに、着座位置を高めにしたり視界を大きく確保したりといった、運転しやすさや安心感につながる機能が多いのは、運転が苦手な人にもリラックスして乗ってもらいたいからだとエンジニアが話してくれた。宣伝効果が見込める「低燃費トップ」を目指すこともできたが、運転時の安心感を優先してやめた、というのが三菱らしい。
車両本体価格:¥1,758,240(カスタムT・e-Assist/2WD・CVT、税込)
総排気量:659cc 最高出力:47kW(64ps)/6,000rpm
最大トルク:98Nm(10.0kgm)/3,000rpm
でも、そのままでは終わらないのもまた三菱。先日の一部改良で、eKスペースのNAモデルは、アイドリングストップのコースストップ領域(減速時にブレーキを踏んでいると一定速度でアイドリングをストップさせる)が9㎞/hから13㎞/hに拡大し、ターボモデルにも新たにアイドリングストップを採用して、燃費がアップし全車がエコカー減税対象となった。
ユーザーを想っての試行錯誤や常識を破るアイデア、コツコツと真面目なクルマ造りの精神。三菱のクルマは、そういったものまでも「技術」として、脈々と受け継いでいるのだと感じさせてくれる。