オンナにとってクルマとは vol.49 コペンに見る夢

 「新しいコペンってどうですか?」

 近ごろ、あまりクルマに興味がない女性から、そうインプレッションを聞かれることが多くてビックリしている。

 それに、撮影などで街中をコペンで走っていると、カップルや子供連れの女性が「あ、あれコペンだよね」と話しているのが聞こえてきたりする。こんなに女性が注目してくれるクルマは、久しぶりだ。

 実際、発売直後のダイハツディーラーには、男女比はわからないものの通常の1.4倍の来客があり、販売は出足から月間目標を上回って好調のよう。これから発売を控える丸目デザインを待っている人もいるとのことで、コペン人気はまだまだ続きそうな気配だ。

 インプレッションを求めてきた女性には、なぜ気になるのかを逆に質問してみると、かわいいからとか、学生時代から好きだったとか、そういう理由が多いのはもちろんのこと。でもその中でなるほどと思ったのは、「コペンなら、私にも乗れそうかなと思って」という答えだった。つまり彼女たちにとって、オープンカーという括りで見た時に、ほかのクルマはちょっと運転が難しそう、もしくはボディや排気量が大きいから大変そう、という意味がまずひとつある。そしてもうひとつ、価格や維持費的にいちばん現実的な遊びグルマ、おしゃれグルマだと認識していることを意味している。

 ご夫婦で共働きだという30代女性は、都内に住んでいるとまったくクルマを持つ必要性は感じないけれど、コペンみたいに可愛くて楽しそうで、価格も手頃なクルマだったら、持ってみてもいいかなと思うのだと話してくれた。これは、今までの常識を覆す驚きのコメントだ。

 だって、女性はクルマを選ぶ時に、実用性やコストパフォーマンスを最優先するというのが、今までの常識だったはず。でも彼女たちはそうではなく、実用的なだけのクルマならいらない、どうせ持つなら、お金を払うなら、夢のあるコペンがいい。そう言っているのだから。

 「今の夫婦の合い言葉は、“いつかはコペン”なんです」と彼女は言う。そう思わせるパワーを持っているコペンは、クルマ業界の救世主かもしれない。もし将来、実際に購入を検討したらタントを買うことになったとしても、それでいいと思う。クルマに乗っている自分、クルマのある生活、それを女性たちが想像してくれることが、今はとても大事だ。

文・まるも亜希子

Akiko Marumo

自動車雑誌編集者を経て、現在はカーライフジャーナリストとして、雑誌やトークショーなどで活躍する。2013年3月には、女性の力を結集し、自動車業界に新しい風を吹き込むべく、自ら発起人となり、「PINK WHEEL PROJECT」を立ち上げた。

定期購読はFujisanで