モタスポ見聞録 vol.19 モータースポーツとYouTube

文・山下敦史
出典:『SUPER GT Official Channel』2018 AUTOBACS SUPER GT Round 2 FUJI GT 500km RACE/YouTube

バブル期にF1ブームの洗礼を受け、BSで中継していたロードレース世界選手権、現MotoGPにハマって現在に至るという、四半世紀を過ぎてもニワカのモタスポファンからすると、現在の状況はちょっと寂しい限りだ。

 昔は良かった、とまでは言わないが、少なくとも無料放送のTVでモータースポーツに接する機会は随分減ったなあ、とは思わざるを得ない。コアなファンにとっては、月にコーヒー2、3杯分くらいの料金で以前より遙かに充実した有料放送の中継を楽しめるのだから、むしろいい時代とも言えるのだが、じゃあ今興味の無い人はどうやってファンになればいいんだ?

 そこでやっと本題、YouTubeだ。MotoGPはもちろん、F1もWRCも、国内レースだってSUPER GTに全日本ロードレース選手権などが公式チャンネルを開設している。基本的にはレースそのものを楽しんでもらうため、有料放送なり映像配信サービスなりに誘導するという役割がメインなのだろうが、だからこそいちげんさんだって気楽にのぞけるのだ。MotoGPのページであれば、各ラウンドのダイジェストは当然として、主力選手のインタビューやメーカー別のハイライト、過去の名場面や観戦に現われた著名人たちの姿などの映像がずらりと並ぶ。そのほとんどは5分にも満たない短いものだが、つまみ食いにはそのほうがありがたい。それぐらいなら英語がよく分らなくても楽しめる。

 勝手に流れるTVと違って、意図してリンクを踏まなければ映像を見られないという点はあるものの、好きな時に好きな映像を見られるメリットはそれを補ってあまりある。

 例えば本誌8月号、51歳にして全日本ロード第5戦筑波大会出場に挑んだ元WGPライダー坂田和人氏への取材記事。あれを読んで、彼が実際どんな走りを見せたのか興味を持ったのなら、すぐにスマホを取り出してYouTubeの全日本ロードレース選手権(MFJ SUPERBIKE)公式チャンネルに行けばいい。さわりでよければJ-GP3クラスのハイライトで、全編見たければMFJ Liveチャンネルでゼッケン99、白のマシンの力走を見ることができる。記事と映像の相乗効果でどちらにも興味を持ってもらえれば最高だ。

 モータースポーツが気にはなっても、パラボラ設置して視聴契約して……となると億劫だったり、そこまでガチでもないし……と躊躇する人も多いだろう。その意味では、PCやスマホで気楽に見られるYouTubeはファンの裾野を広げるために大いに役立つはずだ。基本無料、アイテム課金のスマホゲームに慣れた世代なら、好きなサーキットやチャンピオンシップのかかったレースだけ課金して生中継で観戦する、なんてスタイルのほうが月額契約よりしっくりくるかもしれない。アーカイブが充実すれば、伝説の名勝負や名選手の走りに触れて、もっと深くレースを楽しめるようになるかもしれない。モータースポーツ冬の時代と呼ばれる今だけど、スマホが普及した今こそが、新たなファンを獲得する好機だとも思えるのだ。

Atsushi Yamashita

フリーライター。1967年生まれ、長崎県出身。PR誌の編集員を経てフリーに。以後、映画や書籍の評論及びレビューを中心に、ビデオゲーム等の映像エンターテインメントやIT、サイエンス関連の記事などを執筆。著書に『プレイステーション 大ヒットの真実』(日本能率協会マネジメントセンター)、『「ネタになる」名作文学33』(プレジデント社)など。

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