編集前記 Vol.16 老いたカリスマ

文・神尾 成

お気付きの方も多いだろうが、「僕たちは、これからクルマとどう向き合っていけばいいのか」というサブタイトルをつけた特集記事を昨年の秋から毎号掲載している。

 このタイトルは昨年10月号の特集記事のメインタイトルとして初めて登場した後に、ジャパンモビリティショーを特集した翌11月号から連載のシリーズタイトルとなった。OVER50を名乗る本誌にとって、このタイトルの持つ意味はひとつのテーマになるのではないかと考えたからだ。

 当初は数十年に渡ってクルマやバイクと共に生きてきた我々世代が、第二の自動車革命といわれる現代をどのように捉えて、今後クルマとどう向き合っていくべきなのかを読者も交えて一緒に考えていきたいという主旨のスタートだった。しかし回数を重ねていくうちに、自分たちがどうしたいのかということよりも、今の若い人たちに対して何をしていくべきかという方向にテーマが変わっていった。

 そうした流れの中で始まった「次世代ジャーナリスト」と題した連載や鼎談は、クルマ業界に携わる若手編集者や若手のモータージャーナリストにスポットをあて、彼らのクルマに対する想いや、彼らの活動を知ってもらいたいという気持ちで記事を作っている。そして今後、彼らがクルマを通して社会に意見を発信していくときに、何か手伝えることがないかと探しているところだ。しかしそれが自分たちの価値観の押し付けにならないように注意している。

 話は変わるが、映画『ゴジラ−0.1』がアカデミー賞の視覚効果賞を獲得した。日本のVFX技術が世界に認められたと賞賛されているが、それを実現させたのは技術力以上に、山崎 貴監督の人間力だと思っている。Z世代のクリエーターを積極的に使い、若手の意見を次々に受け入れて、彼らの強みを活かすために脚本まで書き直したという。同年齢の山崎監督のこの仕事の進め方に心底から感服した。老害という言葉は好きではないが、間違いなく自分たちもその枠に入ってきている。どれほどの偉人であっても、老いたカリスマほど裸の王様になりやすいことを忘れてはいけない。

神尾 成/Sei Kamio

2008年からaheadの、ほぼ全ての記事を企画している。2017年に編集長を退いたが、昨年より編集長に復帰。朝日新聞社のプレスライダー(IEC所属)、バイク用品店ライコランドの開発室主任、神戸ユニコーンのカスタムバイクの企画開発などに携わってきた二輪派。1964年生まれ59歳。

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